『HiGH&LOW THE MOVIE 2』評論家座談会【後編】「国境を超えたら、状況が一気に変わる可能性もある」

『HiGH&LOW』評論家座談会【後編】

加藤「ジョージ・ルーカスから手紙がくるかもしれない」

西森:最近、GENERATIONSが「SUMMER SONIC SHANGHAI 2017」に参加したり、登坂さんも上海でファンミーティングしているみたいですけど、『HiGH&LOW』は海外に向けてはどうなんでしょうね。もちろん、台湾、韓国上映なんかはしてきているわけですが。

成馬:『HiGH&LOW』を観ていて気になったのは、かかる音楽やファッションはヒップホップで、アメリカの方を観ているけれど、出てくる人間はアジア圏の人たちで、物語自体も不良たちの抗争をテーマにしていて、アメリカの方を向いていない。その構造って、もしかしたらハリウッドに行く前に、まずはアジアに打って出ようというLDHの姿勢と重なっているのかなと思いました。

加藤:仮に『HiGH&LOW』が海外展開に向けた実験所だとすると、すでに最終段階に入っている印象です。少なくともアクション的には、香港とかに行っても通用するレベル。思えば、2010年にAKIRAさんが香港・中国合作映画『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』に出演していたのは、アジア進出への布石だったのかもしれません。そして、AKIRAさんはひょっとしたら、実際に現場に行って「HIROさん、ちょっとまだ香港は厳しいです」って報告をしたのかもしれない。それで、もっと鍛えなければダメだって、さらに身体能力の高い仲間を全国から集めて、メンバー同士で切磋琢磨して、またアジアに挑戦しようとしているのでは? まあ、全部妄想ですけれど。

西森:2011年にはEXILEのATSUSHIさんが台湾のトップアーティストのジェイ・チョウの曲をカバーしたり、逆にジェイ・チョウがEXILEの東京ドームでのライブに登場したりもしてるし、その後も2014年にEXILEが、2015年にGENERATIONSが香港観光親善大使をやっているんですよね。当時から、ずっと進出の準備はしていたと思います。

成馬:今の日本の芸能に関わってる人って、国境を超えることにどれくらい意識的なんでしょうね? 高齢化社会になって若者向けの国内市場がこれからシュリンクしていくことを考えるとそろそろ、K-POPみたいに海外展開を視野に入れて活動することを考えてもいいと思うんですよね。『HiGH&LOW』シリーズは、キャラクターものとしてファン層を拡大することには成功したけれど、純粋にアクション大作を観ようと思って映画館を訪れている観客は、まだ少ないと思います。でも、国境を超えたら状況は一気に変わると思っていて。彼らのキャラクターを知らない人々にとっては、まったく新しい日本産のエンタメ大作に映る可能性がありますよね。

西森:LDHのボーカルオーディションでも、けっこう中国語圏の人が残っていたりしますしね。最近のLDHの人たちを観ていても、アジアでウケそうなタイプだなと思います。頭が小さくて優しそうな雰囲気があって漫画から出てきたような華のある男の子が中国では受けていると思います。この映画にはまだ出演していないけれど、GENERATIONSの片寄涼太くんとか、すごく中国ウケするんじゃないかと思います。それと同時に、グローバルアーティストを育てるという名目でやっているTARO PROJECTとか、パフォーマンスのレベルも本当に高くて、常にこれまでを超えたものを生み出そうとしているんだなって思います。

加藤:HIROさんが若い頃にやりたくて、でも出来なかったことを今、若い子たちにどんどん託してる感がすごくありますね。

成馬:しかも、それが可視化されているのがすごいですよね。次世代コンピューターみたいな感じ。3世代目まできたら、こうなるだろうなって。

加藤:それが『HiGH&LOW』であるかどうかは分からないですけれど、このレベルのアクション映画を作り続けていたら、いつか必ず世界的なマーケットに引っかかると思うんです。というのは、『マッハ!』というタイの映画はリュック・ベッソンがみつけて、「これヤバいぞ」って紹介したことから、世界的にブレイクしたんです。最近だと『ザ・レイド』っていう、こっちもそんなにお金がかかっていない映画なんですが、アクションがすごいからって理由で世界中でヒットして、気が付いたら主役の2人は『スター・ウォーズ』の片隅に出演していました。

成馬:つまり、AKIRAさんや小林直己さんが『スター・ウォーズ』の最新作に出演する可能性だってゼロではない、と。

加藤:なにかのきっかけで『HiGH&LOW』をクエンティン・タランティーノとかが観たら、これはヤバいって思うんじゃないかなと。小林さんなんかは雰囲気もあるし、英語も堪能だし、きっと呼ばれますよ。ひょっとしたら、ジョージ・ルーカスから手紙がくるかもしれない。

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