アメリカ刑務所を生き抜いた日本人・Mr.KEIが語る、『ブラッド・スローン』のリアリティ

アメリカ刑務所を生き抜いた日本人・Mr.KEIが語る、『ブラッド・スローン』のリアリティ

 「些細なことから人生は変わってしまう」

――ちなみに、本作の主人公は、だんだんと倫理観が崩れて行って、最終的にある結論を下します。あの状況で、彼は一体どうするべきだったと、KEIさんは思われますか? 彼の選択は、ある程度しょうがないことなのでしょうか?

KEI:いや、しょうがないといった話ではなく、やはり彼には彼の選択があったんだと思います。ある程度、状況的なものもあったとはいえ、やはり彼は自分でそれを選んだわけですから。だから、あれしか道がなかったというわけではないと思います。

――確かに主人公自身、罪の重さに耐えきれないというか、後悔や自責の念があったようにも見えました。

KEI:ただ、事件に対する罪の意識や後悔の念でギャングに入るっていうのも、ちょっとおかしな話ですよね。むしろ彼は、どこか自暴自棄になっていたというか、開き直ってしまったところがあったのかもしれない。

――それでは最後の質問です。この映画から何か我々が学ぶことがあるとするならば、それはどんなことだとKEIさんは思いますか?

KEI:この映画は、最初交通事故から始まっています。そういう些細なことから人生というのは変わってしまうんだということを学ぶべきですね。交通事故というのは、車に乗る人ならば誰でも可能性のある話で、それが最終的に犯罪集団のボスになってしまう可能性があるわけです。たとえば、交通事故を起こして日本の刑務所に入ったとき、たまたま同じ部屋にどこかの組の親分がいたとします。日本は7人部屋だから、そういう人につかれると、結構きついんですよ。そこで子分みたいになってしまう人もいるかもしれない。そしたら出てきたときは、もうヤクザですよ。だから、たとえどんなに最悪な状況であっても、自分が選ぶ道というのは、やはり慎重に決めたほうがいいですよね。

――なるほど。

KEI:自分の場合も、アメリカの刑務所に入って、すぐチカーノのグループに入ったわけではないですから。そこに至るまでのあいだにいろいろなことがあって、相当な年月が経ってから入っているんです。普通、日本人が彼らの中になんて入れないですから。そこで、もし選択を間違っていたら、刑が終わる前に、中で殺されていたかもしれない。入ってすぐに、誰かにつかれてしまったら、それはそれですごく怖いし、どんなことをしてでも生きたいという気持ちは、やっぱり人間だから誰しもあるわけです。でも、だからと言って、すぐにそこに飛び込んでしまったら、それはそれでもっとひどい目に遭うかもしれないし、もっとひどい人生になってしまうかもしれない。だからやっぱり、ただただ流されるように生きるのではなく、たとえそれがどんな結果になろうと、ひとつひとつの選択に自分で責任を持つことですよね。そういう態度が、やはり大事になってくると思うし、この映画を観たあと、そういうことについて考えてみるのもいいかもしれないですよね。

(取材・文=麦倉正樹)

■公開情報
『ブラッド・スローン』
9月30日(土)より新宿シネマカリテにて公開
※初日10時の回上映前にMr,KEI氏のトークイベント決定。詳細はこちら→http://qualite.musashino-k.jp/news/2756/
監督・脚本:リック・ローマン・ウォー
出演:ニコライ・コスター=ワルドー、オマリ・ハードウィック、ジョン・バーンサル、ジェフリー・ドノヴァン
2016年/アメリカ/121分/PG12
(c)2015 Shot Caller Films, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:bloodthrone.jp

KEI著/東京キララ社刊/1500円+税
『チカーノKEI〜米国極悪刑務所を生き抜いた日本人〜』 原作:KEI 漫画:マサシ 別冊ヤングチャンピオンにて連載中

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