ドラマヒロイン、求められる資質は“スルースキル”? 波瑠、沢尻エリカらのプロ意識に迫る

 春クールのドラマもいよいよ佳境。エンディングに向けて物語が加速するタイミングに入ってきた。

 今期放映中のドラマを俯瞰して見ると、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBSテレビ)のように独り勝ちするヒット作や、『東京タラレバ娘』(日本テレビ)のように人気原作のドラマ化といった話題作がない分、各作品が拮抗している印象。視聴率で見れば『緊急取調室』(テレビ朝日)、『小さな巨人』(TBSテレビ)、『警視庁 捜査一課長~ヒラから成り上がった最強の刑事!』(テレビ朝日)、『警視庁捜査一課9係 Season12』(テレビ朝日)、『CRISIS~公安機動捜査隊特捜班~』(フジテレビ系)と、なんと上位5位までを刑事ドラマが独占する異例の事態には驚くが、一方で『あなたのことはそれほど』(TBSテレビ)や『母になる』(日本テレビ)などドラマ重視で見せる作品も後半になるにつれ勢いを増してきている。このほか、幅広い世代が楽しめる作りの『貴族探偵』(フジテレビ系)や『人は見た目が100パーセント』(フジテレビ系)『ボク、運命の人です。』(日本テレビ)のラブコメ勢、丁寧な映像表現が高評価の『ツバキ文具店~鎌倉代書屋物語~』(NHK)と、大ヒットには至らないまでも、キラリと光る個性を兼ね備えた作品が充実し、概ね当たりクールだったのではないかと思う。

 今期のドラマを俯瞰してみるとある一点に気づく。それはストーリーやジャンル以上に、作品の個性を決定づけているのがヒロインたちの存在だということ。朝ドラで大ブレイクした波瑠が不倫妻を演じたり、沢尻エリカが初の母親役に挑んだり。はたまた桐谷美玲は非モテ理系女子に扮し、木村文乃はコミカルな演技で堅物なキャラクターに親しみやすさをプラスした。このように彼女たちの役柄そのものが、ドラマの鍵になっている面がある。「この女優がこんな役に!」という意外性は制作サイドにとっていい宣伝材料になることに違いないが、今期の女優陣の並びから見て取れるのはそれだけではない。

 特定のイメージにとらわれず、幅広い役柄を演じられるというのは俳優にとってメリットのひとつ。実際に、一度当たり役ができてしまうと、制作側のみならず本人たちでさえ、そのイメージに固執してしまうこともあるからだ。特に画面を通してのみで接する視聴者には顕著で、役柄をパーソナリティと同一視してしまうことも少なくない。清楚な役を演じたならおしとやかで健気な人、逆に快活な役ではポジティブで明るい人、という風に俳優本人にそのイメージを押し付けてしまいがちだ。

 しかしそうなることで、知らず知らずのうちに演じる役やジャンルが固定化されてしまうこともありうる。何かの役で人気が出すぎてしまうと、これまでの支持層から「イメージと違う」と切り捨てられてしまったり、過剰なアンチを生んだり。それは作品にとっても俳優にとっても非常に不幸せなことだ。

 そこへきて極端な色付けがされていない役者ならどうだろう。どの役柄を与えられてもその場で染まる柔軟さは、キャラクターを輝かせる。固定イメージを持たない分、大胆に攻めの姿勢に転じることもできるだろう。また観る側にとってもその方がニュートラルに感情移入しやすいようにも思う。

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