藤ヶ谷太輔は『櫻子さん』で成長する! 視聴者とドラマを繋ぐ「心の声」の演技

 4月23日に初回放送を迎えた『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』(フジテレビ系)。原作の太田紫織による同名のミステリー小説は、累計部数は100万部突破という人気シリーズ。漫画化、アニメ化もされており、今回待望の実写ドラマ化となった。とはいえ、本作は登場人物の年齢や、物語の舞台となる場所が北海道から東京へと、設定が大きく異なっている。観月ありさ演じる主人公・櫻子が、“骨好きで人付き合いが苦手な変わり者”という、骨子のみを抽出したオリジナルドラマとして楽しめそうだ。

 また、そのオリジナル要素として好評なのが、Kis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔の存在感。藤ヶ谷が演じるのは、原作では本当の少年だが、本作では26歳なのに櫻子から「少年」と呼ばれてしまう不器用で真面目な青年・館脇正太郎。初のドM男子の役に挑戦するということで、放送開始前から注目を集めていたが、想像以上のコミカルさ。冒頭から、職場に「行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない……」と、脳内の“心の声”がダダ漏れ。また、櫻子のアトリエに訪れた際には、骨のコレクションにビビりまくり。ひょんなことから白骨遺体を見つけてしまうのだが、そのときも直視することができない。

 わかりやす過ぎる正太郎のキャラクターは、ドラマにおいては欠かせない存在だ。なぜなら、骨と甘いものを前にしたときだけしか笑みをこぼさない櫻子は、高嶋政宏演じる山路刑事からも「何を考えている」と怒鳴られるように共感性が薄い。劇中の人間関係でも腫れもの扱いされるほどだ。だからこそ、藤ヶ谷の心の声や、コミカルな表情や動きによって、視聴者とドラマを繋ぐ役目を果たしているのだろう。感情的で、喜怒哀楽が全面に出てしまう姿は、これまで藤ヶ谷が持つクールでスマートな印象とは真逆のもの。ファンは今までとのギャップを、そしてこのドラマを通じて藤ヶ谷を知る人は、その素直さをカワイイと感じ、いずれにしても応援したくなるはずだ。

 ドラマは、人の死がまつわる事件が起こるものの、どこか生への希望を抱かせる明るさを放つ。「先入観は見たいものしか見せなくさせる」など、社会にうまく溶け込めない櫻子が発するセリフには一種の説得力があり、考えさせられる要素も。対して、思い込みや願望なのだと言われても目に見えない人の優しさを信じる正太郎の真っ直ぐさは、見習いたい部分でもある。徹底した現実主義の櫻子と、青臭さの残る正太郎。冷静と情熱、静と動、死と生。ふたりの性格は、一見相対するものだが、おそらく本質的には表裏一体のもの。うまくバランスを取ることができれば、人としてさらに大きく成長できるのではないか。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる