東出昌大、嫉妬に駆られた“狂犬”にーー『あなたのことはそれほど』で怪演

『あなたのことはそれほど』第1話を終えて

 火曜夜10時のドラマ『あなたのことはそれほど』(TBS系)の第1話がオンエアされた。いきなりW不倫がスタートする原作とは異なり、初回では主人公・美都(波瑠)の人となり、結婚に至った経緯、そして初恋の相手との再会までが丁寧に描かれた。

 結婚式場で見かけたカップルの駆け落ちに、胸をときめかせる美都からは、いつか王子様が自分の運命を切り拓いてくれるという“ヒロイン願望”がチラ見えし、「ちょっとずついろんな味を食べられる幕の内弁当が好きだよね」と職場の上司に言われ、“決断力のなさ”が伺える。そして、スナック勤めの母・悦子(麻生祐未)が、裕福な男性と交際していた姿を見て育った、“結婚=生活力”という刷り込みが垣間見えた。

 そして、陰鬱な思春期に、四つ葉のクローバーを一緒に探した初恋の相手・有島(鈴木伸之)を忘れられずにいたが、占い師の「2番目に好きな人と結婚すれば幸せになれる」という言葉に背中を押されて涼太(東出昌大)と結婚を決意する……第1話では、美都がいかに夢見がちな少女か、そして四つ葉のクローバーに象徴されるように美都にとって幸せはどこかに落ちているもので、自分が育み、築いていくものではないと考えていることが見えてきた。

 涼太の印象も、周りの反応を受けて乱高下を繰り返す。初対面は同僚の瑠美(黒川智花)に「手がキレイだけど、もったいない」という言葉に感化され、いまいちときめかない。だが、デートに飛び入り参加した友人の香子(大政絢)を完璧にもてなし、「いい人じゃん」と褒められると、「今のところ1番好き」と株が急上昇。しかし、結婚後に独身の女友だちから「やさしそう」「見た目安心系」と言われると、再び物足りなさを感じる。あくまで、幸せを受け身として捉えているのだ。誰かが自分を幸せにしてくれる、そんな勘違いを抱いたまま結婚をする。“柴犬のような”涼太ならきっと自分を噛むことはもちろん、吠えることもないと。そして、いつも自分に都合のいい幸せを見つけてきてくれる、ここ掘れワンワンな人なら安心だ、と。

 だが、涼太は美都の「有島くん」という寝言をきっかけに、周囲を嗅ぎ回り始める。美都が寝てる間にスマホのアドレス帳をチェックするのだ。“有島”の名前が登録される日がいつか来る、そんな予感を抱きながら、その行為は夜な夜な続くのだろう。そして美都が仕事中にも関わらず携帯メッセージを送り続ける。内容は、「幸せ?」「嬉しいでしょ?」という幸せの押し付け。一見、好青年で「お天道様は見ている」という言葉を好む涼太は、地道な努力をして幸せを手に入れてきたかのように思える。だが、ものもらいをわざと悪化させて、眼科に勤める美都に会いに行く。そうした行為を努力と思っているのだとしたら、もはやサイコだ。美都に固執する涼太の狂気じみた行動は、今後エスカレートしていくだろう。その原動力は愛か、エゴか。このドラマのキーパーソンは、間違いなく涼太を演じる東出だ。

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