ゴールデングローブ賞に大きな変化? 『ラ・ラ・ランド』主要部門を席捲、黒人ノミネーション増加
文字数の関係で予想は行わないが、他の部門を見渡してみると、やはり多様性、それも黒人への門戸開放がかなり意識されていることが伺える。昨年は男優賞(ドラマ部門)にウィル・スミス、助演男優賞にイドリス・エルバがノミネートされただけ(結果的には両名とも落選)だったが、今年は助演女優賞候補に、『Fences(原題)』のヴィオラ・デイヴィス、 『ムーンライト』のナオミ・ハリス、『Hidden Figures(原題)』のオクタヴィア・スペンサーがノミネート。また、ファレル・ウィリアムスが『Hidden Figures(原題)』で作曲賞に、バリー・ジェンキンズが『ムーンライト 』で監督賞に、マハーシャラ・アリが『ムーンライト』で助演男優賞にノミネートされ、黒人に対するノミネーション数は8となった。この大幅なノミネーション増加の背景にあるものは、何なのか? これについては、昨年の結果はもちろん、第88回アカデミー賞に向けられた批判が関係しているように思える。
昨年2月に発表された同アカデミー賞では、黒人の監督や俳優が1人もノミネートされることがなかった。その結果、#oscarsowhiteという批判がツイッター上に溢れかえり、名作や名優が華やかに授賞式を彩ったにもかかわらず、アカデミー賞のイメージは大幅に悪化。同賞を最高権威とするハリウッドは、白人中心的であるというネガティブなイメージを、さらに色濃くしてしまった。これを払しょくするには、アカデミー賞の前哨戦という位置づけにあるゴールデングローブ賞で、ノミネーションを増やすのが手っ取り早い。今回のノミネーション増加の背景には、こういったからくりがある(言うまでもなく、選出されてるのは優れた作品ばかりだが)。
とは言え、ノミネーションはノミネーションに過ぎない。受賞者が白人ばかりなら、「ノミネーションを増やして誤魔化しただけか」という声を生むこととなり、これまで以上の批判を浴びることになってしまうはずだ。そういった意味で、今回のゴールデングローブ賞は、今後のハリウッドのパブリックイメージを左右しかねないのである。果たして、真の意味で多様性は拡大されるのだろうか…? その結果は神のみぞ知るところだが、一映画ファンとしては、映画界が良い意味で盛り上がることを祈るばかりだ。
■岸豊
映画を中心としたエンタメ全般についてゆる~く書いているフリーライターです。1991年4月9日生まれ。カーラ・デルヴィーニュとセス・ローゲンに会いたい。連絡はsabochiyasodayo(アットマーク)gmail.comかブログまで。
第74回ゴールデングローブ賞ノミネーション(映画の部)
ドラマ部門 作品賞
『Hacksaw Ridge(原題)』
『最後の追跡』
『LION/ライオン ~25年目のただいま~』
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
『ムーンライト』
ドラマ部門 女優賞
エイミー・アダムス 『メッセージ』
ジェシカ・チャステイン 『Miss Sloane(原題)』
イザベル・ユペール 『Elle(原題)』
ルース・ネッガ 『ラビング 愛という名前のふたり』
ナタリー・ポートマン 『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』
ドラマ部門 男優賞
ケイシー・アフレック 「マンチェスター・バイ・ザ・シー』
ジョエル・エドガートン 「ラビング 愛という名前のふたり』
アンドリュー・ガーフィールド 『Hacksaw Ridge(原題)』
ヴィゴ・モーテンセン 『はじまりへの旅』
デンゼル・ワシントン 『Fences(原題)』
ミュージカル・コメディ部門 作品賞
『20th Century Women(原題)』
『デッドプール』
『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』
『ラ・ラ・ランド』
『シング・ストリート 未来へのうた』
ミュージカル・コメディ部門 女優賞
アネット・ベニング 『20th Century Women』
リリー・コリンズ 『Rules Don’t Apply(原題)』
ヘイリー・スタインフェルド 『The Edge of Seventeen(原題)』
エマ・ストーン 『ラ・ラ・ランド』
メリル・ストリープ 『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』
ミュージカル・コメディ部門 男優賞
コリン・ファレル 『ロブスター』
ライアン・ゴズリング 『ラ・ラ・ランド』
ヒュー・グラント 『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』
ジョナ・ヒル 『War Dogs(原題)』
ライアン・レイノルズ 『デッドプール』
助演女優賞
ヴィオラ・デイヴィス 『Fences(原題)』
ナオミ・ハリス 『ムーンライト』
ニコール・キッドマン 『LION/ライオン ~25年目のただいま~』
オクタヴィア・スペンサー 『Hidden Figures(原題)』
ミシェル・ウィリアムズ 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
助演男優賞
マハーシャラ・アリ 『ムーンライト』
ジェフ・ブリッジス 『最後の追跡』
サイモン・ヘルバーグ 『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』
デヴ・パテル 『LION/ライオン ~25年目のただいま~』
アーロン・テイラー=ジョンソン 『Nocturnal Animals(原題)』
アニメ作品賞
『Kubo and the Two Strings(原題)』
『モアナと伝説の海』
『My Life as a Zucchini(原題)』
『SING/シング』
『ズートピア』
外国語映画賞
『ディヴァイン』(フランス)
『Elle(原題)』(フランス)
『Neruda(原題)』(チリ)
『The Salesman(原題)』(イラン/フランス)
『Toni Erdmann(原題)』(ドイツ)
監督賞
デイミアン・チャゼル 『ラ・ラ・ランド』
トム・フォード 『Nocturnal Animals(原題)』
メル・ギブソン 『Hacksaw Ridge(原題)』
バリー・ジェンキンズ 『ムーンライト』
ケネス・ロナーガン 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
脚本賞
デイミアン・チャゼル 『ラ・ラ・ランド』
トム・フォード 『Nocturnal Animals(原題)』
バリー・ジェンキンズ 『ムーンライト』
ケネス・ロナーガン 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
テイラー・シェリダン 『最後の追跡』
作曲賞
ニコラス・ブリテル 『ムーンライト』
ジャスティン・ハーウィッツ 『ラ・ラ・ランド』
ヨハン・ヨハンソン 『メッセージ』
ダスティン・オハロラン、ハウシュカ 『LION/ライオン ~25年目のただいま~』
ハンス・ジマー、ファレル・ウィリアムス、ベンジャミン・ウォルフィッシュ 『Hidden Figures(原題)』
主題歌賞
「Can't Stop the Feeling!」 『Trolls(原題)』
「City of Stars」 『ラ・ラ・ランド』
「Faith」 『SING/シング』
「Gold」 『Gold(原題)』
「How Far I'll Go」 『モアナと伝説の海』
■公開情報
『ラ・ラ・ランド』
2月24日(金)TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー
監督・脚本:デイミアン・チャゼル
出演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、J・K・シモンズ
提供:ポニーキャニオン/ギャガ
配給:ギャガ/ポニーキャニオン
Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND. Photo courtesy of Lionsgate. (c)2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:http://gaga.ne.jp/lalaland/