16年目の『相棒』は大波乱の予感! 『相棒15』の見方とツッコミどころ指南
で、実は再キャスティングといえば、先述した警察嫌い男のサイバー捜査官を演じている浅利陽介も当てはまるのだ。最初に登場したのは『相棒6』の正月スペシャル「寝台特急カシオペア殺人事件!」の回。そこで、殺人事件のきっかけとなったドラッグ好きのバカ息子を演じていた(真犯人はその父親)。数えきれないほど再放送もされている有名なエピソードなので思い出した人も多いのではないか。ドラッグ好きのバカ息子から、前シーズンでは別人の警察嫌いのバカ息子として復活、そして今シーズンで警視庁入りしてレギュラーとなったわけだ。
16年もやっていれば、こうしてキャスティングにバグが発生することも避けられないのだろう。実際、過去にも何度か同じことはあった。しかし、いずれもレギュラーとして再登板というのは、これまでになかったケース。過去の『相棒』には染谷将太、吉田羊、桐谷健太、斎藤工といった人気俳優も無名時代にゲスト出演しているので、今後も油断はできない。
『相棒』が終わるのが先か、日本の役者をキャスティングし尽くすのが先か、もはやそんなチキンレースと化した感もある長寿シリーズ『相棒』。来年2月には『相棒-劇場版Ⅳ-』の公開も控えているが、テレビシリーズ放送中に劇場版が公開されるのは2010年の『劇場版Ⅱ』以来のこと。その時はメインキャストの小野田官房長官が殺されるという衝撃的な結末が待ち受けていただけに、今回もテレビシリーズを巻き込んでの驚きの展開が用意されているかもしれない。今、『相棒』の作品世界は、ここ数年間で最も見逃せない局面に突入している。
■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)。Twitter
■番組情報
『相棒15』
毎週水曜よる9時〜
制作局:テレビ朝日
出演:水谷豊、反町隆史、仲間由紀恵、石坂浩二、大杉漣、鈴木杏樹、浅利陽介ほか
監督:橋本一、兼﨑涼介ほか
脚本:輿水泰弘、真野勝成ほか
公式サイト:http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/