新相棒・冠城亘(反町隆史)を迎えた『相棒 14』、その成功の鍵はどこにあるか?

 自分が『相棒』のスタジオ撮影やロケ撮影の現場に入って取材をするようになったのは、season7最終話に初登場した及川光博が正式に二代目相棒を襲名したseason 8の撮影が始まった頃だから、もう7年以上前になる。その後、2本の劇場版と1本のスピンオフでは劇場版パンフレットやチラシなどでオフィシャル・ライターも務めさせていただいた。現在放送中の『相棒』はseason 14だから、気がつけばその歴史の半分を「時々インサイダー」として過ごしてきたことになる。

 「時々インサイダー」の立場からいつも思うのは、女性週刊誌やネットのゴシップ・メディアを中心に流布されている「『相棒』の噂」の99%が根も葉もない嘘やでっち上げだということ。そういう記事によく出てくる「関係者」に対しては、「お前、誰だよ」と毎回失笑を覚えずにはいられない(あ、だからといって自分のところには取材に来ないでくださいね。何も喋りませんよ)。

 そして、そんな「『相棒』の噂」が一番盛り上がるのは、これまで寺脇康文→及川光博→成宮寛貴→反町隆史と変遷してきた「相棒交代」のタイミングだ。「土曜ワイド劇場」時代から数えると15年以上にも及ぶ長寿番組となった『相棒』。制作側としても、シリーズ全体のマンネリ化を避けるために絶対不可欠なカンフル剤として、そして巷で話題になることによるプロモーション効果も見据えて、これまで「相棒交代」を最大限に利用してきた。

 四代目相棒(作中ではまだ「相棒」という言葉は否定されていて、「同居人」と呼ばれている)に冠城亘=反町隆史を迎えて、現時点で4話目までの放送を終えたseason 14。個々のエピソードによって作品や物語の出来にバラつきはあるものの(それはいつものことだ)、新相棒・反町隆史は想像以上に『相棒』ワールドにハマっていると言っていいだろう。相棒のキャステイングに関しては、役柄のキャラクターだとか、役者としての演技力だとかよりも、この「『相棒』ワールド」にハマっているかどうかというのが何よりも重要なのだ。それは杉下右京(水谷豊)と並んで立った時のビジュアルのキマり具合であり、レギュラー・キャストたちとのカラみっぷりであり、『相棒』の作品世界への愛着と理解度を意味する。

 これまで何度も撮影現場を見てきた、そして多くのスタッフに取材をしてきた実感から言わせてもらうなら、『相棒』における役のキャラクター設定というのは、プロデューサーや脚本家や演出家が作るものというよりも、エピソードを重ねるごとに役者自身が共演者との関係の中で作っていくものだ。毎年、第1話、正月スペシャル、最終話といった2時間〜2時間半の特別編を含めて20本近い作品が作られる(それに映画が加わる年もある)以上、仕方がないことだが、実際に現場に入ってみると「え? 本当に大丈夫なんですか?」というパツパツの脚本や撮影のスケジュールが組まれている『相棒』。つまり、脚本家が脚本を書く際に、演出家が演出の構想を練る際に、最も参考にするのは今まさに放送されている回の『相棒』だったりするのだ。役者たちはテレビの画面を通して脚本家や演出家にメッセージを送り、脚本家や演出家は次の自分の当番回にそのメッセージを投げ返す。そうやって、あの『相棒』でしかありえないグルーヴ感は形作られてきた。だから、急に早口になったり下手な英語で喋ったりという挙動不審さを見せる冠城亘(反町隆史)も、今のところは大目に見ておいていい。いつか、彼の様々な奇行を誰かが上手く回収してくれるはずだから(そうであってくれ)。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる