ビル・マーレイ、アフガンでロックを叫ぶ!? 異色コメディ『ロック・ザ・カスバ!』の挑戦

異色コメディ『ロック・ザ・カスバ!』の魅力

ロックの名曲に乗せて世界を揺らせ!

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バリー・レヴィンソン監督とビル・マーレイ

 そもそも映画『ロック・ザ・カスバ!』のアイディアは、一人の女性が命がけでTV番組『アフガン・スター』に出演し歌声を響かせた実際の出来事に着想を得たものなのだとか。

 さらに、この映画のタイトルがザ・クラッシュの名曲の引用であることはファンならずともお気づきだろう。版権の都合上、作中で楽曲そのものは使用されていないが、おそらく作り手の中では『アフガン・スター』の一件とクラッシュの名曲にほとばしるスピリットとが電流を帯びたみたいにしっかりと手を結んだのだ。だからこそ本作には文化や宗教の違いを乗り越えて世界をロックしようという思いが満ちている。

 と同時に、これは一人の男が自分の人生を奮い立たせようとする物語でもある。もう自分は終わった、過去の人間であると薄々気がついている人間が、世界の果てにて、もう一度だけ魂を熱くかき鳴らす。それはややもすると自己満足かもしれないし、アフガンの人々からすれば迷惑なことかもしれない。

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 それでも映画は突き進む。正解など誰にもわからない。一つだけ言えるとすれば、それをビル・マーレイが演じているということ、ただそれだけだ。「WILD WORLD」や「KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR」などの名曲に乗せて彼がこの地にのらりくらりと佇んでいるだけで、僕らは苦笑いしながら、その姿をじっと最後まで見守ってしまう。

マーレイという人間はやっぱりそういう男。世界のどこででも、あくまで自分のペースで魂を揺らす、愛すべきロックな男。そんな彼に出会いたければ『ロック・ザ・カスバ!』に身を投じてみると良いだろう。

『ロック・ザ・カスバ!』予告編

■牛津厚信
映画ライター。明治大学政治経済学部を卒業後、某映画放送専門局の勤務を経てフリーランスに転身。現在、「映画.com」、「EYESCREAM」、「パーフェクトムービーガイド」など、さまざまな媒体で映画レビュー執筆やインタビュー記事を手掛ける。また、劇場用パンフレットへの寄稿も行っている。Twitter

■公開情報
『ロック・ザ・カスバ!』
新宿シネマカリテ(東京)7月20日(水)〜公開
シネ・リーブル梅田(大阪)8月7日(日)〜公開
中川コロナシネマワールド(愛知)8月9日(火)〜公開
シネマポイント(長野)2016年秋公開
監督:バリー・レヴィンソン
脚本:ミッチ・グレイザー
音楽:マーセロ・ザーヴォス
撮影:ショーン・ボビット
出演:ビル・マーレイ、ブルース・ウィリス、ケイト・ハドソン、ズーイー・デシャネル、テイラー・キニー
配給:クロックワークス
原題:「ROCK THE KASBAH」/2015年/アメリカ/106分/カラー/シネマスコープ/英語
(c)2015 Kasbah, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

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