佐津川愛美こそ2016年のホラークイーンだ! 『貞子vs伽椰子』『ヒメアノ〜ル』で見せた戦慄
ついに公開された映画『貞子vs伽椰子』。20世紀末に登場したJホラーを代表する二大シリーズ『リング』と『呪怨』それぞれのヴィラン(悪役)が激突するという話題性ばかり注目されているが、そのキャスティングにも注目しておきたい。(メイン写真:左、佐津川愛美。右、玉城ティナ)
メインヒロインにはCanCam専属モデルで、『桐島、部活やめるってよ』で映画ファンにその存在が知られることになった山本美月。そして、ViViの専属モデルで今後女優としての活躍に期待できる玉城ティナ。この二人の華々しさは、ホラー映画の「恐ろしさ」を引き立てる役割を見事に果たしているが、やはりその両方を一人で体現できてこそ、“ホラークイーン”と呼ぶに相応しい。
『貞子vs伽椰子』において、その“ホラークイーン”は誰かと問われれば、その選択肢は貞子か伽椰子かの二択になりかねないところだが、もう一人大事なキャストを忘れてはならない。山本美月演じる主人公・有里の親友役で、「呪いのビデオ」を見てしまう女子大生・夏美を演じる佐津川愛美だ。
両親の結婚記念日のためにVHSのダビングを有里に頼む夏美。言ってしまえば、この行動が今回の「呪いのビデオ」を蘇らせるきっかけとなる。そして奇しくも「呪いのビデオ」の映像を見てしまい、その呪いから逃れるために、オカルト現象に詳しい教授(甲本雅裕)に相談し、ダビングされた映像をネット上に流してしまう。もっぱら映画のストーリーを左右する大きな役目を担っているのが彼女なのである。
現在27歳、中学卒業と同時に芸能活動をスタートさせた佐津川のホラークイーンとしての素質はデビュー作から発揮される。2004年9月に放送された『ほんとにあった怖い話』の「ひとりぼっちの少女」では、夜のプールのロッカールームで恐怖体験をする女子中学生を演じている。怪しい噂のあるロッカーから伸びてきた手に腕を掴まれ、暗闇の中で何とか逃げ出そうとする短い芝居を、表情と動作だけで演じるのだ。
また、2006年に公開された映画『海と夕陽と彼女の涙 ストロベリーフィールズ』では、今回の『貞子vs伽椰子』と同じ“夏美”という役名(もちろんキャラクターは違うけれど)で主演を張っていた。ホラー映画ではなく、青春ファンタジー映画ではあるが、不慮の事故で死んでしまった友人たちと限られた時間を過ごすということは、死者と対峙する役どころという点で共通している。もっとも、こちらではポジティブに死者と向き合うという違いはあるけれど。
そして、2007年から何度か出演している『トリハダ』シリーズでは、生きた人間に対してのホラーにも挑戦している。幽霊描写を排除して、生きている人間によってもたらされる生死の境を味わうという恐怖体験の演技は、現在公開中の『ヒメアノ〜ル』でも活かされている。V6の森田剛演じるシリアルキラー・森田くんに狙われるカフェ店員のユカを体当たりで演じ、これまで彼女が積み上げてきたキャリアで最高の芝居を見せてくれた。