bmr編集長・丸屋九兵衛、N.W.A.ドキュメンタリーの魅力語る「日陰者の証言で真実が明らかに」

bmr編集長、N.W.Aドキュメンタリーを語る

 ギャングスタ・ラップの草分け的存在として知られる米西海岸のヒッブホップ・グループN.W.A.の活動を記録したドキュメンタリー『N.W.A & EAZY-E:キングス・オブ・コンプトン』の公開に合わせ、本作の字幕監修も担当している『bmr』編集長の丸屋九兵衛氏を迎えたトークイベントが、4月2日にヒューマントラストシネマ渋谷にて開催された。

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『bmr』編集長の丸屋九兵衛氏

 N.W.A.の元メンバーであるアラビアン・プリンスや、マネージャーのジェリー・ヘラー、イージー・Eとドクター・ドレーをつないだ日系人のスティーヴ・ヤノらの証言によって、N.W.A.やイージー・Eの真の姿に迫る本作。音楽伝記映画として歴代1位の興行収入を記録した『ストレイト・アウタ・コンプトン』(以下、『SOC』)では描かれなかったN.W.A.の側面が明らかになる。

 登壇した丸屋氏は、本作で証言を行う人々を『ストレイト・アウタ・コンプトン』における“日陰者”と表現。同作では悪者として描かれた人物と、触れられなかった人物が中心となっていることを解説する。「まずはロンゾ・ウィリアムス。『SOC』だとクラブのオーナーくらいにしか見えなかったけれど、実は、西海岸のヒップホップを聴いていた人にとっては常識のグループ『ワールド・クラス・レッキン・クルー』を率いていたリーダーで、DJ・プロデューサーとしても活躍するアーティスト。本作ではいろんな証言をしている」と、ロンゾの証言の重要性を指摘し、さらにN.W.A.のマネージャーを担当していたジェリー・ヘラーの意外な善人ぶりや、デス・ロウ・レコードを率いるシュグナイトの極悪ぶりにも触れる。「『SOC』ではあまりわからないけれど、スヌープ・ドッグの住所をバラしたり、ドレーのアルバムリリースを妨害したり、ドレーがデス・ロウを抜けてからのシュグナイトの暴走ぶりは素晴らしいので、その片鱗が少しでも伝われば」

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本作ではプライベートでのイージー・Eの人柄にも迫っている

 また、触れられなかった人物として、アラビアン・プリンスやスティーヴ・ヤノについて言及。「映画には“ア”の字も出て来ないけれど、アルバム『ストレイト・アウタ・コンプトン』のジャケットには、ちゃんとアラビアン・プリンスの姿もある。同アルバムの後半には、唐突に『サムシング・トゥ・ダンス・トゥ』というダンサブルなエレクトロが入っているが、それを手がけていたのが彼。少し前の時代の音楽性だったから、N.W.A.では不必要になってしまったのかもしれない。でも、証言映像ではかなり若々しく溌剌としていて、恨みがましいことも言わず、ニュートラルな証言をしてくれている」と、その人格者ぶりを評する。一方、スティーヴ・ヤノについては、「日系アメリカ人の彼は、“南カルフォルニアで最も危険なレコード屋”の店主で、なにが危険かというと、まだリリースされていないはずのレコードまで売っていた。レコード屋といっても、フリーマーケットに出しているブースなんだけれど、このブースを通じてドレーとイージー・Eは出会ったそう。諸説があるけれど、どうやらイージー・Eはドラッグディーラーから足を洗って、ヤノさんを見習ってレコード屋になりたかったらしい。(中略)ヤノさんはすでに亡くなっているが、本作では元気な姿を観ることができる」と紹介した。

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