MAGiC BOYZ主演『イカれてイル?』が描き出す、ネット動画時代の自意識と暴力

MAGiC BOYZ『イカれてイル?』評

 MAGiCBOYZ(フウト、トーマ、リュウト、ユウト、マヒロ)は、ももいろクローバーZや私立恵比寿中学が所属するスターダストプロモーションの男性アイドルグループ・EBiDAN39&KiDSの選抜ユニットとして「ラップで世界進出」を目標とするラップグループだ。『イカれてイル?』は、そんなMAGiC BOYZの5人が主演を務めるフェイクドキュメンタリーである。

 中学二年生の少年・松村楓万(フウト、トーマ、リュウト、ユウト)は、自分が魔法を使えると思い込んで、様々な奇行を繰り返し、その姿を撮影してYouTubeにアップロードしていた。そんな楓万に興味を持った依田彩香(北山詩織)は映画学校の卒業制作として楓万のドキュメンタリーを撮影するようになる。次々と奇行を繰り返す楓万の中二病的な振る舞いを最初は面白がっていた彩香だが、取材をするうちに楓万の振る舞いに痛々しさと、そんな彼を取材対象として撮影することに罪悪感を抱くようになっていく。
やがて、楓万は無許可でドローンを飛ばしたことで警察に逮捕されてしまう。しかし、その様子を撮影した映像はネットで火が付き、楓万はカリスマ的人気を獲得。楓万の行動に触発された若者たちは次々と自分の動画をYouTubeに上げるようになっていく。

 本作では、様々な人々が撮影した動画を元に、松村楓万の物語が語られる。楓万の言動は虚実が入り混じっており、当初は、妄想に憑りつかれた楓万を、病んだ少年として撮影するドキュメンタリー調の映画かと思わせるのだが、途中から楓万の妄想が現実を追い抜き、物語はどんどんスケールアップしていく。

ikareteill-2th.jpg

 

 監督は竹内道宏。神聖かまってちゃんや、うみのてといったロックバンドのライブ動画をYouTubeにアップすることで知られるようになった映像作家だ。劇場映画は今回で三本目。うみのての楽曲をモチーフに3.11以降の東京に漂う不穏な空気をとらえた『新しい戦争を始めよう』や、アイドル・いずこねこの楽曲をモチーフに「アイドルの卒業」を描いたSF映画『世界の終りのいずこねこ』など、竹内の手掛ける作品は、純粋な劇映画というよりは、実在するロックバンドやアイドルを主人公とした、虚実の入り混じった物語となっている。そのため、どの映画もキャラクターグッズのような形で企画はスタートしている。この『イカれてイル?』も基本的には、MAGiC BOYZのファンに向けて作られた映画だ。

 ファンムービーとして本作を見た時、何より魅力的なのは、MAGiC BOYZの5人が見せる、少年であることのかわいさと切なさだろう。竹内監督自ら撮影した映像は実にフェティッシュで、今の彼らが持つ少年の色気が滲み出ている。複数の映像で構成されているという設定のため、物語は一見わかりにくいかもしれないが、少年たちの姿をPV的に眺めているだけでも充分楽しめる。その前提のうえで、物語の背後にヒップホップやインターネットの文脈を盛り込むことで、現代的な青春映画に仕上げている。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる