『最高の花婿』監督が語る、フランスの異人種間結婚をコメディで描いた理由

『最高の花婿』監督インタビュー

「表現規制の傾向とは闘っていきたい」

20160313-hanamuko-sub3.jpg
(c)2013 LES FILMS DU 24 - TF1 DROITS AUDIOVISUELS - TF1 FILMS PRODUCTION

ーーこの作品は会話劇でもあると思うんですが、細かいセリフまで脚本に書かれていたのでしょうか?

ショーヴロン:セリフの細かいところまでしっかりと脚本に書いていました。セリフに関しては、それぞれのキャストに「このセリフ言いやすい?」というような感じで確認をしながら決めていきましたが、それによってすごく変化したということはあまりないですね。ベテラン俳優のクリスチャン・クラビエは、セリフをリスペクトしながらもアドリブを少し付け加えて、それを採用するかしないかは、編集時の監督の判断に委ねるという方だったので、今回も彼のアドリブはいくつか採用していますね。

ーークリスチャン・クラビエ演じる父クロードをはじめ、それぞれのキャラクターが強烈な個性を放っていますが、配役はすんなりと決まったんですか?

ショーヴロン:今回の映画の製作は、本当にすべてが順調に進んでいきました。キャスト陣もオファーをすれば即答で快諾してくれて、結果大ヒットに繋がりましたから。今回の作品に関して、大変だったという記憶はほとんどありません。4人の花婿役の役者たちは、スタンダップコメディアンだったり、ワンマンショーのコメディアンだったりするのですが、単にコメディアンで面白そうな人というだけではなく、男性として魅力的であるということがポイントでした。クリスチャン・クラビエに関しては、私自身、子どもの頃からのファンだったので、出演していただけて嬉しかったですね。ほとんどの役は、この役はこの人にやってもらうというのを決めてからキャラクターを作っていきましたが、4姉妹に関しては、当て書きではなく、あとから探したという感じでしたね。

20160313-hanamuko-sub1.jpg
(c)2013 LES FILMS DU 24 - TF1 DROITS AUDIOVISUELS - TF1 FILMS PRODUCTION

ーーフランスでは2014年興収No.1の大ヒットを記録しましたが、これだけヒットすると予想していましたか?

ショーヴロン:まったくしていませんでした。テーマは面白いし、両親役の2人は有名な役者さんで、4人の花婿役の俳優たちはブレイクしかけている途中で、撮影もうまくいったので、ヒットする要素は十分あったと思いますが、これほどヒットするとは思っていませんでしたね。ドイツ、メキシコ、スペイン、韓国などでもすごいスコアを記録しているので、それは自分にとってもサプライズでした。

ーーどのような要素が世界中での大ヒットに繋がったと思いますか?

ショーヴロン:失敗作もいっぱい作っているので、失敗を分析するのは簡単なんですが、成功を分析するのは難しいですね。でも、成功した理由は、たぶんすごくシンプルなことだと思っていて。喜劇には笑いがないと意味がなく、この作品ではみんなが笑ってくれた。そのような笑いの要素がうまくいったということと、ストーリーやそれぞれのキャラクターに関しても、フランス人が感情移入しやすいフランス的な部分がありつつも、誰もが感情移入しやすいユニバーサルな普遍的なものがあったからだと思います。結婚、寛容、人種差別のような、フランスのみならず他の国の人々も感じているテーマが盛り込まれていたことが、これだけのヒットに繋がったのではないでしょうか。

20160313-hanamuko-sub4.jpg
(c)2013 LES FILMS DU 24 - TF1 DROITS AUDIOVISUELS - TF1 FILMS PRODUCTION

ーー製作当時(2013年)と比べると、ポリティカル・コレクトネスの観点から表現面で自主規制を強いられる風潮が強くなってきましたが、そういった現状についてはどうお考えでしょうか?

ショーヴロン:そのような表現規制の傾向は本当に厄介だなと感じています。ポリティカル・コレクトネスや規制を気にし始めたら、コメディは作れません。我々はショッキングなことを描こうとして、映画を作っているわけではありません。人に何かを考えさせたり、人を楽しませたりするときに、ステレオタイプを誇張することは、どうしても必要だと思うんです。この作品でも確かにデリケートな問題を扱っていますが、そのようなことを怖がっていたら、喜劇にはなりません。面白く感じてもらうために我々が自己検閲をしてはいけないのではないかと思い、この作品を作り、人々に大胆なギャグを受け入れる素地があることがわかりました。なので、今後もそういった傾向とは闘っていきたいと思っています。もちろん善意があるのは前提ですけどね。世界や社会、描く人物に対して、悪意がなければ、何を言っても受け入れられると思います。

(取材・文=宮川翔)

『最高の花婿』フィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督コメント

■公開情報
『最高の花婿』
3月19日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開

YEBISU GARDEN CINEMAオープン1周年記念作品

監督:フィリップ・ドゥ・ショーヴロン
出演:クリスチャン・クラヴィエ、シャンタル・ロビー、アリ・アビタン、メディ・サドゥアン、フレッド・チョウ、エロディー・フォンタン
後援:ユニフランス・フィルムズ
配給・宣伝:セテラ・インターナショナル
2014/フランス/97分/日本語字幕:横井和子
(c)2013 LES FILMS DU 24 - TF1 DROITS AUDIOVISUELS - TF1 FILMS PRODUCTION
公式サイト:http://www.cetera.co.jp/hanamuko/


関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる