『最高の花婿』フィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督インタビュー
『最高の花婿』監督が語る、フランスの異人種間結婚をコメディで描いた理由
コメディ映画『最高の花婿』が3月19日に公開される。本国フランスでは、2014年興行収入No.1に輝き、1300万人の観客数を突破。フランス映画歴代動員記録第6位にもランクインした、大ヒット作だ。カトリック教徒を花婿に迎えたいヴェルヌイユ夫妻だったが、4人の娘たちは次々と外国人と結婚していき、最後の希望だった末娘までもが、コートジボワール出身の黒人男性と結婚することに。国際結婚というワールドワイドなテーマをコメディタッチに描き、見事成功を収めた、フィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督に、製作の背景やフランス社会の実情について語ってもらった。
「現代フランス社会のポートレートを描けるのではないかと思った」
ーーどのような経緯で今回の作品を手がけるようになったのでしょうか?
フィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督(以下、ショーヴロン):フランスが異人種間結婚のチャンピオンだということを新聞で読んで、非常に面白いテーマだと思ったのがきっかけでした。私の家族はかなりの大家族なんですが、この作品と同じように、ブルジョアで、カトリックで、兄弟が4人いて、異人種間結婚をしている人もいる。自分たちの経験談を盛り込みながら、いろんなコミュニティが寄せ集まって形成されている、現代フランス社会のポートレートを描けるのではないかと思ったんです。これまで、それぞれのコミュニティをあまりポジティブに描いてこなかったことへの反省と、社会を豊かにしてくれるコミュニティにオマージュを捧げるという意味も含まれています。
ーーその統計によると、フランスでの異人種間結婚率は約20%に及ぶんですね。
ショーヴロン:私の周りにも、家族や友人など、異人種間結婚をしている人たちもたくさんいたのですが、新聞を読むまでは、そこまで多いとは知りませんでした。フランスには、国民戦線のジャン=マリー・ル・ペンのような、極右で外国人排斥を訴えていた差別主義の人たちもいながら、違う文化を受け入れる土俵もある。そんな二重人格的な国なんです。
ーー4姉妹の花婿は、アルジェリア人、イスラエル人、中国人、コートジボワール人ですが、それぞれ選んだ人種には理由があるのでしょうか?
ショーヴロン:人種というよりも民族で、フランス社会で代表的なコミュニティを選んだ感じですね。アルジェリア人というよりは、フランスにすごく多いマグレブというアフリカ北部の人たち。それから、イスラエル人というよりもユダヤ。フランスには、アメリカに次ぐ多さのユダヤコミュニティが存在します。フランスは植民地主義の国だったので、アフリカから移民してきた黒人も多い。アジア系に関しては、カンボジア、ベトナム、中国からの移民が主要ですが、やはり中国人が一番多いですね。本当は日本人についても語りたかったんですが、日本人のコミュニティはそれほど大きくないので採用しませんでした。
ーーそれぞれの文化を調べるのに苦労はしませんでしたか?
ショーヴロン:自分の周囲にそれぞれのコミュニティに属する人たちが結構いて、イチからリサーチするという感じではなかったので、あまり苦労はしませんでしたね。アジア系の友達があまりいないので、中国文化のリサーチはしっかりとしましたが。あと、キャストたちにシナリオを読んでもらった上で、このセリフはもう少しこうしたほうがいいなどの助言ももらいつつ、文化的な慣習などに間違いがないように、確認しながらやりましたね。ただ、この4人の花婿に関しては、自分たちはフランス人なんだという自負のほうが強い。2世ということもあって、アルジェリア人であるよりもフランス人、ユダヤ人であるよりもフランス人、というような思いを抱いた花婿たちなんです。
ーー映画の中ではそれぞれのコミュニティのステレオタイプというか、文化の特徴が面白おかしく描かれますが、もしも花婿のひとりが日本人だったらどのような描写をしますか?
ショーヴロン:フランス人が日本人に対して抱いているステレオタイプは、常にカメラを持って写真を撮っているということですね。あと、私は日本に来るのは今回が初めてなのですが、日本人の方は相槌を打つときに首を動かすのが非常に面白いですね。他の国ではあまり見たことがない。まだそこまで日本の文化を知らないので、今回の滞在で検証してみます(笑)。