「ジョニー・デップの演技には驚嘆した」ジョエル・エドガートンが『ブラック・スキャンダル』での共演を振り返る

ジョエル・エドガートン インタビュー

「映画作りで大切なのは、まず映画自体を最優先することだ」

20160120-BlackMass-sub6.jpg
『ブラック・スキャンダル』 (c)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., CCP BLACK MASS FILM HOLDINGS, LLC, RATPAC ENTERTAINMENT, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

ーー役作りで苦労した点はありますか?

エドガートン:映画の冒頭で、彼をいい人すぎないように演じるのが大変だった。と同時に、平面的な“単なる悪人”としてだけ演じないようにするのも大変だった。彼は、“利己的で堕落したFBI”ではなく、妻を愛した夫であり、元はいいFBIだったんだ。すごく厄介だったのは、彼が映画の中でずっと嘘をついてることだ。俳優として、その嘘がどれほど説得力があるかを決める選択肢があった。どの時点からジョンの嘘が説得力を欠いていくかを、常に自問していたよ。

ーーバルジャーと秘密の協定を結んで以来、彼の影響を受けてコノリーが変わっていく様子も見応えがありました。

エドガートン:その変化は脚本に明確に書かれていたので、どう演じるかもハッキリしていた。映画の中で、ジョンの妻が「あなたの動き方、歩き方、服装が違う」と言うシーンがある。だから、衣装を変化させるように細かく注意した。高価なスーツを着るようになって、アクセサリーや金の腕時計を身につけるようになる。僕が会った、あるFBI捜査官が、ジョンのことを「孔雀」と形容したんだ。孔雀はカラフルで派手で、誇りがあって、自信があるように見える。それがジョンにとって大切な言葉だと思った。突然、ギャングとしての自信に満ち始め、動き方、歩き方、見かけが変わっていく。1人の人間がこれほど変化するのは、とてもエキサインティングだと思った。

20160120-BlackMass-sub5.png
『ブラック・スキャンダル』 (c)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., CCP BLACK MASS FILM HOLDINGS, LLC, RATPAC ENTERTAINMENT, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

ーー善良なFBI捜査官だったコノリーは、なぜ悪に染まってしまったと思いますか?

エドガートン:そのキャラクターの本質と意志の強さを見なくちゃいけないと思うんだ。僕はジョンに会ったことがないから、明確な回答を得られない。ただ、考えるべきなのは、ジョンは権力に酔っていたのかーー。もっと金を稼ぐことに酔ったのかーー。個人的にはこの2つのコンビネーションだと思う。彼には、成功した人として賞賛されたいという欲望があった。偉大なFBI捜査官とみなされるために、歪んだことをしてもいいという、とてつもない野望も持っていたと思う。それに加えて、サウシーの仲間との関係や絆もある。ジミーもその1人だ。彼は、地元では賞賛された犯罪人で、ロック・スターみたいな存在だった。子供や若者たちは、ジョンのように彼を尊敬していた。だから、ジョンにとっては、ジミーを捕まえるというよりも、彼との関係や彼への憧憬の気持ちのほうが、もっと重要だったんだと思う。ジョン自身も、危険な状況を立ち回っていることには気付いていただろう。でも、自分の本来の仕事とは正反対に、犯罪人を守り続けざるを得なかったんだ。ものすごい心理状況だよね。なぜそんなことが可能だったのか、いつかジョン本人の本当の考えを解明できたら、とても面白いと思う。

ーールックスに関しては、実際の彼らとそっくりだという声もたくさん聞きます。

エドガートン:はははは(笑)。どうだろうね? 映画作りで大切なのは、まず映画自体を最優先することだ。今回のように実在の人物を演じる場合でも、映画そのものに悪影響を及ぼすなら、本物そっくりに演じることに執着しちゃいけないと思う。ただ、今回はスコットが、本人たちに似た人たちを配役しているし、メイクや衣装で本人たちに近づけている。本人たちのように動いたり、話したりするというのは、面白いエクササイズだと思うし、それ自体は楽しいことだよね。ジョニーはジミーそっくりになろうと固く決意したから、周りの俳優もそれに倣ったんだ。

20160120-BlackMass-sub10.jpg
フランチェスコ・アンジュロ(真ん中)逮捕時のジョン・コノリー(左)

ーーもし自分がバルジャーのような人物と協力しなければならないとしたら、どうしますか? サウシーの絆より正義を選びますか?

エドガートン:まず一番最初に気をつけるね(笑)。自分には、そっちの方向に行かない決断をする賢明さがあると思いたい。でも人生はもっと複雑だ。ただ、そんな状況には自分では絶対陥りたくないとは思っているよ。僕がジョンの立場だったら……このことについては、いろいろ考えてみたんだ。でも本当にその立場にならない限り、どうなるかわからないと思う。あくまで推測でしかないけど、僕にとってのサウシーは、自分の家族だと言えるだろう。兄、母、父、姪を守るためには何でもすると思う。彼らが恐ろしいとしか思えない行為をしていない限りはね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる