劇団PU-PU-JUICE・山本浩貴 & AJIGULが語る、戦争作品に向き合う理由「自分たちの言葉で戦争を語りたかった」

劇団PU-PU-JUICE・山本浩貴 & AJIGULが語る、戦争作品に向き合う理由「自分たちの言葉で戦争を語りたかった」

辻本「その場で演じるからこそ立ち上がるリアリティはある」

pupujuice-02.jpg左から、AJIGUL・砂川彩乃と辻本好美、劇団PU-PU-JUICE・山本浩貴

ーー今回の『兵隊日記タドル』は、戦時中に書かれた日記を読む現代の若者たちの物語で、『兵隊日記ツムグ』は、その日記を書いた一家の物語となっています。この二重構造も「劇団PU-PU-JUICE」らしい試みかと思いました。

山本:戦争を題材とした作品はすでに世にたくさんある中、自分たちならではの切り口を考えた結果、こうした形になりました。まずは僕自身が、戦争について調べようと戦時中のひとの手紙や日記、『きけ わだつみのこえ―日本戦没学生の手記』などを読んだのですが、これまでイメージしていた部分と随分違うところもあって。僕たちが戦争を語るのであれば、その調べて認識していく過程もまた、物語として見せる必要があると考えたんです。たとえば特攻隊の人々に対しては、国家に洗脳されて戦地に赴いたというイメージが漠然とあったんですけれど、実際に手紙を読んでみると、すごく教養があるし、当時の世界情勢についても冷静に捉えていたりします。そうしたイメージとのズレに僕自身驚きましたし、舞台を観に来たお客さんにも、僕たちのそういう姿を通して、少しでも当時のことに目を向けてみてほしいと思いました。日記から過去を辿ろうとする役者の姿は、結局、自分たちが戦争に向き合う道筋にも繋がるんじゃないかというのが、『兵隊日記タドル』で試みたことです。

ーーそれで『兵隊日記ツムグ』では、実際に自分たちなりに当時の日常を再現してみようと。

山本:そうですね。ただ、戦時中というと暗くて悲惨な印象があり、もちろんそういう側面が大きいと思うのですが、今作で描きたかったのは、その厳しい環境の中でも笑ったり泣いたりしながら生き延びていこうとする家族の姿ーーどんな状況にあっても前を向こうとする人間たちの強さです。いまは世の中の環境が変わって、家族が離れ離れでも生きてはいけるし、だからこそ独居するひとも多いと思うんですけれど、当時は本当に家族で手を取り合わないと生きていけなかったんじゃないかと思うし、そこには何か、いまの時代には失われてしまった大切なものもあるんじゃないかと思います。ただシリアスに悲惨な戦時中を描くのではなく、その中にあった人間らしい営みを同時に表現したかったんです。

ーー戦時中にあった人間らしい営みというのも、山本さんが日記などを読んで感じたことなんですか。

山本:ええ、日記を読むと、当時のひとたちは空襲でB29が飛んでくるのにも慣れているところがあって、防空壕に隠れるのを面倒臭がっていたり、普通に友達の家に遊びに行ったりもしている。今日のご飯は何を食べようとか、普通の日々の生活もそこにはあるんですよね。それは結局のところ、僕らとそう変わらない感覚の人々がそこに生きていたということだと思うんです。そして、それを描くことは、戦争というものが決して過去のものとして僕たちから切り離されたものではない、ということを示すことにも繋がると考えました。

ーーたしかに、生活を描くことでより現実味を持って当時に思いを馳せることができるかもしれません。

山本:戦争があって、多くのひとが亡くなったというのはひとつの真実だけれど、その捉え方は必ずしも一様ではないですよね。歴史を学ぶということは、単に過去の事実を調べるということではなく、その多様な捉え方に想像を巡らせることでもあって、それは自分自身と向き合うということでもあると思うんです。そこに正しい答えがあるとは限らないけれど、それでも自分で調べて、自分なりに考えたことを発信する姿勢というのは、どんな表現をするうえでも大切なんじゃないかな。

ーーAJIGULのふたりも、山本さんのそうした姿勢に共感する部分があるのですね。

辻本:この作品はまだ未完成ですけれども、ある種のリアリティが宿った作品になると思っていて。それはやはりみんながその場で一生懸命考えて、歴史と向き合おうとしているからじゃないかと思うんです。その場で演じるからこそ立ち上がるリアリティというか、なにかしら現実と交錯する感じはあるんじゃないかな、と想像しています。

砂川:音楽的な課題としては、ふたつの時代をどう表現し分けるかを苦慮していますね。戦時中と現代、違う時代だけれども、山本さんも言ったように、ふたつの時代は決して切り離されたものではないということを表現したいので、どこかで繋がっている感じも出していきたい。

辻本:今は演技を見ながら曲を作っている状態なので、そのときに、見て感じたものから自分の中でイメージができたものを出すという感じですね。そのなかで自分たちなりに、いろいろと考えてみたいと思っています。

砂川:一番はじめに稽古場に来たとき、山本さんに「台詞も音だから」って言われたんですよね。それで、生の音楽と生の演技とでキャッチボールをすること、その場で舞台が立ち上がっていくことに感動したんですけれど、その空気感はすごく大事だと思う。

山本:音楽や芝居というのは、生で演奏する音と録音された音とでは大きく異なると思います。音というのはすごく重要で、無音だって音のひとつだし、芝居にもなるんですよ。場合によっては、台詞の内容よりも音が重要なときもあります。歌だって、ただ「あー!」って歌っているところで感動したりしますよね。そういう意味では、役者も楽器だし、自分の声と体を使って、日々チューニングしています。そこにどう感情を乗せるかで台詞のトーンだって変わってきます。

ーー生で演奏をすることもまた、対象とリアルに向き合うということと繋がってくるのかもしれません。

山本:そうですね、今回は伊藤直哉さんにキャスティングをしていただいて、「この人と一緒に芝居をやってみたい」と心から思えるひとたちが集まっているんですけれど、彼らはなにが良いかというと、常に熱意を持って作品と向き合ってくれるんです。その先にはなにがあるかはわからないけれど、それでも一緒に行こうとしてくれる。AJIGULのふたりもそうです。だからこそ、「今日、このひとはどんな芝居を見せてくれるのだろう」「AJIGULはどんな音を聞かせてくれるんだろう」と、毎日楽しみなんですよね。もちろん、キツいこともたくさんあって、もしかしたら9割はそうかもしれない。でも、その辛さがひっくり返るような瞬間、自分の想像をはるかに越えた芝居になる瞬間はきっとくると思っているし、その時、この戦争をテーマとした作品はなにか意味を持って、我々はもちろん、お客さんの心にも響くんじゃないかと信じています。

(取材・文=松田広宣)

■公演情報
PU-PU-JUICE 第22,23回本公演
『兵隊日記 タドル /兵隊日記 ツムグ』
日程:12月17日(木)〜27日(日)全16公演
劇場:中目黒 キンケロシアター(〒153-0042 東京都目黒区青葉台1-15-11)
チケット(全席指定):前売り4800円 当日5300円 二公演セット割引 9000円
☆クリスマスイブ割引き(12月24日の公演は4000円)※割引の併用は不可。
『兵隊日記 タドル』出演者:山下徹大 文音
岩田知幸 飯田祐貴 ジェントル 寒川綾奈 戸田れい 浦まゆ 舟津大地 板東晴 亀田侑樹 劇団PU-PU-JUICE(山本浩貴 久米伸明 松原功 中村奈生実)ほか / 三浦力
『兵隊日記 ツムグ』出演者:寺中寿之 西山咲子(劇団 PU-PU-JUICE)外岡えりか
成松修 吉本剛士 関口アナム 橘美緒 北川富紀子 有馬健太 大里莉楠 前田隆太朗 劇団 PU-PU-JUICE(長島慎治 中野マサアキ 高橋孝輔 田中裕士 谷遼)
演出・脚本:山本浩貴
音楽:AJIGUL
PU-PU-JUICE公式サイト:http://www.pu-pu-juice.com/

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