本国フランスで大ヒット 『カミーユ、恋はふたたび』が描く、舞台装置としてのタイムトラベル
“主人公が過去にタイムスリップする”という設定だけを聞けば、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『恋はデジャ・ブ』など、過去にも幾度となく描かれてきたタイムトラベルものだと想像してしまうが、そんな設定を背景に持ちつつも、ひときわ異彩を放つ作品がフランスから届いた。10月31日に公開された『カミーユ、恋はふたたび』だ。
本作は、2012年の第65回カンヌ国際映画祭「監督週間」で上映されSACD賞を受賞したほか、同年のセザール賞で13部門の最多ノミネート、本国フランスでは公開週に興行成績第1位に輝き、約100万人を動員した大ヒット作だ。フランスから遅れること3年、このたびようやく日本公開となった。
本作がフランスで大ヒットを果たした理由のひつとに、キャスト・スタッフの豪華さがあるのは間違いないだろう。主演だけでなく、監督・脚本も務めたのは、ノエミ・ルヴォウスキー。日本でそこまで知名度があるわけではないが、本国ではかなりの実力者だ。国立映画学校FEMIS(ここでアルノー・デプレシャンやパスカル・フェランと出会う)出身の彼女は、同級生だったエマニュエル・ドゥヴォスを主演に迎え、1989年に初の短編『Dis-moi oui , dis-moi non』(原題)を手がける。その後、デプレシャン監督作の制作に参加したり、フィリップ・ガレルの脚本執筆に参加したりと、そのキャリアを重ね、これまでに監督作も多数手がけている。
その交流関係を見ただけでも、彼女がフランス映画界において重要な人物の1人だとわかるだろう。女優としても、『キングス&クイーン』や『メゾン ある娼館の記憶』などに出演している彼女にとって、『カミーユ、恋はふたたび』は、監督・脚本と主演を兼任することになった初めての作品でもある。脇を固める役者陣にも注目が集まる。デプレシャン作品の常連でもあるマチュー・アマルリックや、『いかしたガキども』のリアド・サトッフ監督、もはや説明不要の名優ジャン=ピエール・レオら、フランス映画界を代表する映画人たちがカメオ的に出演しているのもポイントだ。
パリに暮らす40歳で女優の仕事をしているカミーユは、うめき声しかセリフがないホラー映画の撮影を終え、ウイスキーのボトルを飲みながらバスで帰路につく。プライベートでは、25年も連れ添った夫のエリックに離婚を突きつけられる。気分転換のために友人に誘われた年越しパーティーに出かけるが、大はしゃぎするあまり、酔っ払って転倒し意識を失ってしまう。目が覚めると、彼女は病院のベッドにいた。そして、死んだはずの両親が病室に訪れる。カミーユは学生時代にタイムスリップしていたのだ。見た目は40代のままなのに、周りの人たちには10代に見えている。そんなカミーユの2度目の青春が幕を開ける…。