【漫画】なぜか気になるあの子の素顔は…? 男子高校生の複雑で繊細な恋心を描いたSNS漫画『抜きたいあの子』
ーー本作を創作したきっかけを教えてください。
安寿アジュリ(以下、安寿):本作は漫画賞に応募するため制作した作品です! その賞は少年漫画のものであり、少年漫画を意識して描いた作品は本作がはじめてでした。
普段は女の子が主人公の作品を描いていたので「少年漫画って何なんだろう」と考えるところから始まり、男の子が主人公の作品として本作を描きました! 自転車通学をしていたことなど、高校生の頃の思い出をモデルにしています。
ーー明るく誠実で、泥臭さもある草太くんのキャラクターが印象に残っています。
安寿:主人公の名前「提草太(つつみそうた)」はたんぽぽの別名「鼓草(つづみぐさ)」をモチーフにしています! たんぽぽをイメージして描いたキャラクターなので、いい子であることはもちろん、主張はあまりしないけれど雑草のような強さがあり、見ているといい気分になる感じを意識しました。
ーー「なぜあの子を好きなのか」と考え「あの子に救われたんだ」という思いに至る。その過程から草太くんの真摯さを感じました。
安寿:草太くんの心情は高校時代の私の感じていたものを一部参考にしています! 入学当初は友達が全然できず、かといって周りに積極的に話しかけられるタイプでもありませんでした。本当は友だちになりたい子のいるグループに移りたいけれど、とりあえずできたグループにずっといるみたいな感じで。
ただ1度、席替えで仲良くなりたいと思ってた子と近い席になったんです。かといって自分から話しかけられなかったのですが、向こうから「おはよう」って言われて、それがとても嬉しくて。「おはよう」と返せて、その子とだんだん仲良くなれて、その子のグループに移ってーー。
あの子の「おはよう」が私の救いになったことは、草太くんの心情にもつながっています。当時の思いが友だちに届けばいいなと思い本作に入れました。
ーー遠すぎることはなく、かといって密でもない……。2人の距離感が絶妙だと感じました。
安寿:憧れの存在や推しのことを知りたいけれど、すべて知ってしまった結果、失望してしまう部分があったら嫌だと思います。そんな気持ちが草太くんにもあると思い「…なんか嫌になってるんだよ/あの子のこと知るの」といったワンシーンを入れました!
ーー印象に残っているシーンは?
安寿:クライマックスであの子を追い抜くのではなく、草太くんの手紙だけが届くシーンです。草太くんはあの子を抜けなくてもいいんじゃないか、あの子に届くのは気持ちだけでいいんじゃないかと思って、手紙だけが届いたシーンを描きました! このシーンはすぐに思いついたので、ここを描くために本作を描きました。
ーーなぜ届くのは手紙・気持ちだけでいいと思った?
安寿:草太くんはたんぽぽがモチーフですが、彼女の名前には杜若(かきつばた)が入っています! たんぽぽの黄色と杜若の紫色は対照的なものであり、花が隣同士で咲くことも稀でしょう。
憧れや推しの存在と関係を築き始める際には、いきなり横並びのような、親密な関係にはならないと思います。でも推しがこちらに振り向いてくれる……。距離はあるけれど、顔だけは見える関係をイメージして2人を描きました!
また最後まであの子の顔が見えないところにもこだわりました! 顔が見えないからこそ、草太くんと彼女だけの秘密となるものが欲しかったからです。
ーー漫画を描き始めたきっかけを教えてください。
安寿:小さい頃から絵を描くことが好きで、親に「漫画家になるの、いいんじゃない」と言われ漫画家を目指すようになりました。10代で商業デビューしたいと思い高校2年生ごろから本格的に漫画を描きはじめて、19歳で読み切り作品を掲載できたので嬉しかったです!
ーー商業デビューして漫画を描くことの印象は変化した?
安寿:変わりました! 以前はただ自分の好きなものを描いて、みんなが面白いって言ってくれたらいいと思っていました。ただ、それだと商業的にはダメなんですよね、独りよがりになってしまうーー。
自分が漫画制作を好きになったのは、読んだ人に面白いと言ってもらえたからなので「読者に寄り添い、喜んでもらえる漫画を描けるようにならないと」と思うようになりました!
ーー今後の目標を教えてください。
安寿:まずは漫画賞を獲ることが目標です! 人が笑ってくれる、喜んでくれる漫画を描きつづけられるよう、体調に気をつけていきたいです!