『ドラえもん』『こち亀』で登場した発明品、今では当たり前となったサービスや商品といえば……

『ドラえもん』ホラー編がじわじわ怖い

   突拍子もないアイデアが時空を超えて現実になる。そんな事例は、多々ある。そのなかでも漫画の中で登場し「現実化」されている「発明品」が多いことで知られているのが『こちら葛飾区亀有公園前派出所』と『ドラえもん』ではないだろうか。

  『こち亀』で紹介されたアイデアやガジェットなどが次々と現実のサービスや商品となり、作者の秋本治氏が持つ先見の明が高く評価されている。開発や企画などに携わる人たちがアイデアソースとして読んでいる、という方ももしかすると多いのではないだろうか。一方『ドラえもん』は『こち亀』と比較するとタイムマシンやどこでもドアなど、未来すぎるアイデアも多いが、その一方で現在では当たり前となっているような「ひみつ道具」が存在している。今回はこの2つの作品から、現実化されたアイデアとその価格を検証してみたい。

「シミュレーションゴルフ」(こち亀)

  ゴルフや野球、さらには陸上など、最近は屋内にいながらその競技を擬似体験できる、VR技術が発達している。『こち亀』では1988年に発売された単行本50巻に、この「シミュレーションゴルフ」が登場していた。これはゴルフブースに巨大なスクリーンがあり、ボールを打つとコンピューターがインパクトの強さや角度を算出し、想定されるショットをスクリーンに映し出すというものだった。

  現在では『こち亀』に登場したものとほぼ同じシステムを採用した「シミュレーションゴルフ」が販売されている。その値段はソフトによって異なるが安価なもので80万、高価なものになると500万の値がついているシミュレーションゴルフもある。

  また、シミュレーションゴルフソフトと環境を整え、練習場としてプレーさせるケースも。料金はまちまちだが、月額2万円程度を徴収する練習場もあるようだ。いずれにしても『こち亀』で1988年に紹介されたVRゴルフは、現在ビジネスとして成立している。

「寿司ロボット」(こち亀)

  平成から令和にかけ、日本で爆発的人気となった回転寿司。回転寿司の元祖は昭和33年に東大阪市でオープンした「廻る元禄寿司」で、長く親しまれてきたが、平成に入り「かっぱ寿司」「スシロー」「くら寿司」「はま寿司」など大規模店舗で安価な回転寿司店が急速に広がった。

  大手回転寿司チェーンでは機械化が進んでいると言われるが、それを予言していたのが『こち亀』なのだ。1993年に発売された単行本84巻で、寿司を握るロボット「握っ太くん」が登場していた。人間の注文を理解して寿司を握るロボットで、作品では言うことを聞かない両津がロボットにブチギレて喧嘩になってしまうが、「機械が寿司を作る」ことについては、完全に現実化した。

  回転寿司業界の売上規模は、約7500億円といわれる。人間が握る回転寿司店ももちろんあるのだが、大手はほぼ機械化されており、人件費を極力カットすることで利益を確保している。

  寿司は人間が握ることがあたりまえの時代に、「機械化したらどうなるか」を描いていた『こち亀』の先見性は凄まじいものがある。

「近道マップ」(ドラえもん)

  近道を教えてくれるマップ、「近道マップ」。このアイディアはカーナビゲーションシステムやグーグルマップに通じるものがある。

  カーナビゲーションシステムは今や自動車に「必須」のシステムで、その市場規模は4兆円ともいわれる。また、グーグルマップは現在無償で個々のスマートフォンに搭載されているのが一般的だ。

「糸なし糸電話」(ドラえもん)

  糸電話の糸なしバージョン、糸なし糸電話。糸がなく受話器だけで会話できるというコンセプトは、コードレスフォンに通じるものがある。

  また、その形が手のひらサイズであることや、親機がなくても相手の声が聞こえることから、「携帯電話の元祖ではないか」という説も。電話番号がなく、電力を供給する必要もないことを考えると、携帯電話やスマートフォンより優れたデバイスなのかもしれない。

  携帯電話の市場は2兆円規模といわれる。糸なし糸電話からインスピレーションを受けたのがどうかは不明だが、漫画ではいち早く取り入れている。藤子F不二雄氏のアイデアが莫大な利益を生んだとも言えるかもしれない。

  まだ『こち亀』『ドラえもん』ともに現実化出来ていないアイデアやガジェットも多い。今後も人々の暮らしが豊かに、利便性に富んだ生活となるようなアイデアが世に出ることを期待したい。

 

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