【漫画】空っぽで刹那的な少女がなぜか美しいーー夢で見た物語を描写したSNS漫画から目が離せない
実際に夢に出てきた話
さいとう:私は眠りが浅いのでほぼ毎日夢を見るのですが、たまに印象的な夢を見ることがあるのです。
――では本作はさいとうさんが見た夢を漫画化した、と。
さいとう:そうです。当時……というか今もですが、ミュージカルの鑑賞にハマっていました。また、個人的な興味でトー横界隈、パパ活、ホス狂いについてよくニュースを調べていた時期でもあり、それらが混ざってあのような夢を見たのだと思います。
――登場人物も夢に出てきた人物をそのまま登場しさせたのですか?
さいとう:いえ、夢をそのまま描くと荒唐無稽すぎるので、主人公は読者目線を持てるように若干脚色しました。ただ、自分が見た夢なのでJKとおじさんは曖昧です。
――「主人公=さいとうさん」という解釈で良いですか?
さいとう:その解釈でも良いですし、誰でもない人として解釈しても良いと思います。夢は客観的になったり主観的になったりするので、明確に「あれは自分自身の姿」とは言えないです。
「その空っぽさが美しい」
――部屋に入った途端、教師ははしゃぎだしたり、急にドレスを着たりなど、どこに視点を置いて良いのかわからなくなる不思議な展開でした。
さいとう:商業漫画ですと、本作のような“置いてけぼりになるリスク”を持つ漫画ってまず企画段階で通らないと思います(笑)。ただ、「自主制作ではより実験的な漫画を描いていきたい」という思いがあります。破茶滅茶な漫画を描いて、意外とウケるのも良し、案の定スベるのも良し、みたいな割と気楽に描いてます。
――ちなみに2人が演じた演目が『エリザベート(エリザベータ)』だった経緯は?
さいとう:描いている時、帝国劇場で公演していた『エリザベート』がすごく話題になっており、「乗っかろう」と思って(笑)。とはいえ、当時は『エリザベート』のことはほとんど知らなかったため、劇中の演目内容はすごく適当です。
――ラストのJKが発した「ここで終わりならいいのに」というセリフは、女子高生の生き辛さが凝縮した印象的なセリフでした。
さいとう:将来のことを考えず、もしくは考えられず、刹那的に生きる少女は、1人も居ないほうが幸せな社会と言えると思います。しかし、どんな国にでもそういう生き方を余儀なくされている人がいます。悲しいです。同時に「その空っぽさが美しい」とも思います。それに美しさを見出してしまうのは、残酷なことではあります。
――確かに儚さを感じさせますよね。
さいとう:現実では誰にも救えない人達を、「せめて創作では少しだけでも救えたらいいな」とも思って描きました。ただ、それも欺瞞です。「欺瞞、矛盾、残酷さ、そして少しの美しさが表現できていると良いな」と思っています。
――最後に今後の目標など教えてください。
さいとう:商業漫画を専業としていた時もありましたが、今は会社員をしながら少しずつ自主制作を続けていけたらと思っています。運命のいたずらでまた商業連載を描く機会があるかもしれませんが、その時になったらまあ考えようかなと。どんな形でもいいので、手が動くまで漫画を描き続けることが目標です。
■さいとう林子さんのプロフィール
HP:https://konakusoyarou.tumblr.com/
漫画家、イラストレーター。
フリーランスの漫画家として活動後、現在は会社員。同人活動をメインとしている。
商業漫画「ルーモア・ヒューモア」「好きだったゲイが他の女性と結婚してました」
多摩美術大学生産デザイン学科テキスタイルデザイン専攻卒業。