マンガ制作をAIで効率化、カラー化=“着彩”の時間を2分の1にするDNPの画期的なツールの内容

マンガ制作をAIで効率化して、カラー化=“着彩”の時間を2分の1に

 大日本印刷株式会社(DNP)は、多言語対応のマンガ制作ツール「DNPマンガオンラインエディトリアルシステム MOES®(モエス)」に、株式会社10ANTZ<テンアンツ>が開発した「マンガAI着彩機能」を搭載し、2023年10月にトライアル運用を開始する。

 MOESは、マンガ等のコンテンツの創出・制作・各種データ変換を一貫して支援するスタジオ「MANGA CREATIVE WORKS®」で提供する制作ツール。この機能により、従来は手作業で行っていたマンガに色を付ける“着彩”の工程を大幅に効率化する。

 また、オノマトペ(マンガに描かれる画像化された擬音語・擬態語)を削除するとともに、削除後の部分にあるはずの背景を推定して描く機能もMOESに実装。このように、翻訳以外の機能も今後MOESに集約することでマンガ制作の効率化をさらに推進し、マンガコンテンツのグローバル展開に貢献していくという。

■開発背景
 近年、世界的にスマートフォン用アプリやWebサイトでマンガを楽しむ読者が増加する中、日本のマンガコンテンツは人気作品が翻訳され、海外展開されているが、現在、多言語版の制作負荷やグローバルな流通の課題によって、海外に展開できていないタイトルが多数ある。マンガは人物・キャラクターのほか背景・吹き出し・セリフ・オノマトペ等の構成要素が多く、特にカラー化する着彩の工程は非常に難易度が高いため、現状ではそのほとんどを手作業で行っており、制作に時間がかかることが課題となっていた。

 こうした課題に対してDNPは、「MANGA CREATIVE WORKS®」を構築し、そのなかで、マンガの多言語版制作に向けてMOESを展開している。今回、AI(人工知能)を活用して着彩する機能をMOESに搭載することで、マンガコンテンツの着彩工程の生産性向上と効率化を支援。DNPは引き続き、社外のパートナーとの連携も強化して、出版市場の活性化に向けたサービスを推進していくという。

■MOESによるマンガ制作のシステム化とAI着彩機能について
 DNPが2016年からサービス提供しているMOESは、多くの言語への翻訳版のマンガ制作に必要な翻訳・レタリング・校正・進捗管理等を行うクラウド型のシステム。このサービスにマンガ制作をさらに効率化する機能を集約していく計画であり、今回その第一弾として、AIを活用した着彩機能を実装した。

 「マンガAI着彩機能」では、表現上の効果について、模様や色の濃さなどを影やグラデーションに置き換えて着彩することが可能。電子書籍で配信するマンガコンテンツを制作する場合、全てを手作業で着彩する場合と比較して、修正も含めて生産性が2倍以上(作業時間が2分の1以下に短縮)となった(自社での実証実験結果による)。

 セリフ等が無いため翻訳が不要なWeb素材やグッズ制作の場合、着彩機能だけを利用することができる。今後追加を予定している各種機能についても、制作者が必要な機能のみ選択して利用できるようにしていく。

 また、オノマトペを削除するとともに、削除後の部分にあるはずの背景を推定して描く機能もMOESに実装する。従来、元の言語のオノマトペの画像を残して、その近くに翻訳を併記する場合が多かったのに対して、この機能でオノマトペを削除することで、より読みやすい表現を容易に行えるようになる。

 今後、複数の多言語版を同時に(simultaneous)制作する“サイマル対応”など、翻訳関連の機能を順次追加・改善して提供していく。

■今後の展開

 2023年12月に、MOESでの「マンガAI着彩機能」の本格運用を開始し、出版社・企業・教育機関等に提供していく。DNPは引き続き10ANTZと連携し、着彩の品質向上や機能改善を進めるとともに、マンガ制作の一層の効率化に向けて、一貫したシステムの構築を強化していく。

 また、多言語版のマンガ制作について、高い品質を確保しながら、作業の負荷とコストを低減する機能の開発・提供をさらに進めて、出版社等のコンテンツホルダーによる海外へのマンガコンテンツ展開を支援する。プリントオンデマンドや電子配信など多様なコンテンツ提供の形にも対応し、コミック市場の拡大に応える体制を構築して、出版業界の継続的な発展に貢献していく。

 DNPは、本システムをはじめとする国内外のマンガ制作関連事業で、2028年までに累計150億円の売上を目指すという。

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