【漫画】もしも世界に地図がなかったら……駄菓子屋を目指して町を彷徨うWeb漫画がおもしろい

ーー近所を歩き回るだけで冒険しているかのようにワクワクしていた幼き日を思い出した作品でした。創作のきっかけは?

マシュー:この漫画はCOMITIA(一次創作物の即売会)で頒布する合同誌へ寄稿するために描きました。その合同誌には「『当時まだ〇〇は存在しなかった』『この時代の人々に〇〇は知られていなかった』に類するナレーション、または台詞を含むこと」というレギュレーションがありました。

 “存在しなかった”ことについて考えていると、ふと小学生のころ「行こうとするとたどり着けない駄菓子屋」があったことを思い出しました。あの頃にGoogle Mapがあったら行けてたのかな……と思ったことから、本作のテーマは「地図が存在しない」になりました。

 ちなみに自分の兄弟に駄菓子屋について尋ねると「あの駄菓子屋は行こうとすると行けない。誰かに連れて行ってもらわないと行けない」と言われました。

ーーフキダシを背負うシーンや、読み込まれていない箇所が存在したりなど、どこか不思議な世界観が印象的でした。

マシュー:個人誌で描いている漫画ではあまりできない表現をしてみたいなという気持ちがあり、フキダシを登場人物に持たせてみたりなど、合同誌に寄稿する際は実験的な表現をすることが多いです。また本作を描くなかで、自分が言葉の重さや言葉を背負うことについて考え始めました。

 “チャンク抜け”は『Minecraft』から着想を得ています。『Minecraft』では高いところから世界を見渡すと、読み込める場所にラグが生じます。その記憶が蘇り本作では行ったことのない場所をチャンク抜けとして表現しました。

ーー重さのある言葉として作中で「意味のない祈りを発してないで進め!!」という台詞が描かれていました。

マシュー:本作の台詞は意味不明なものが多いですが、この台詞だけは不意に言ったことが自分に押し寄せてくることを表現したいと思っていました。言葉について今も自分が考えていることと重なる部分の大きい台詞です。

ーー印象に残っているシーンは?

マシュー:二人が登山をするシーンです。コマ割りをナナメにして坂道を表現したいと思っていたのですが、このシーンを描くことがすごく大変で……。そんな苦労もあり印象深いシーンです。

ーー漫画を描き始めたきっかけは?

マシュー:子どもの頃からオリジナルキャラクターの「ナユタ」や、そのキャラクターたちがいる世界が自分の頭の中にはありました。以前から絵の作品としてキャラクターやその世界について描いてきたのですが、誰かにもっと深くキャラを覚えてもらうためには漫画が適切だなと思い、漫画を描くようになりました。

 またCOMITIAに参加し様々な同人誌を読むなかで、自分も漫画を描きたいと思うようになりました。ちなみに、この漫画はいつも描いてるキャラクターたちの世界とは別の世界であり、本作に出てくる二人の名前は「イワナ」と「ギロチン」です。

ーー本作に登場する二人について教えてください。

マシュー:長身でリボン付きの帽子のキャラが「イワナ」で、頭に包丁(に見える鉈)が刺さっているキャラが「ギロチン」です。二人は自由になんでも描けるキャラクターとして描いていますが、イワナはギロチンの後輩という設定だけ決まっています。

ーー漫画を描き続けるモチベーションは?

マシュー:自分の頭の中にいる「ナユタ」というキャラクターのことを覚えていてほしいという気持ちが一番大きいです。

 頭の中には確かにナユタはいるし、その世界もありますが、現実には存在しない。自分がいなくなったら消えてしまう虚構であり、消えることが悲しい。でも誰かが覚えていてくれたら完全には消えない……。だからナユタを描いた作品を投稿するんです。自分がいなくなってもナユタのことを覚えていてほしい、けれどナユタからしたら迷惑かもしれないし、呪いかもしれませんが。

ーー今後の目標を教えてください。

マシュー:最大の目標は「わたしがいなくなっても、誰かにナユタのことを覚えていてほしい」であり、ずっと変わらない目標です。短期的な目標としては、なにかしらの活動を続けていくことです。

 活動を続けるに連れて年々「自分は誰かの模造品だな」とか「なにをしたところでなにも変わらないし、意味がないな」という気持ちに圧倒されてしまいます。そんなネガティブな気持ちに押しつぶされないで、自分の活動を続けていきたいです。

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