【漫画】コンビニと謎の行列店、カレーを食べるならどっち? ゲームブック風のSNS漫画がおもしろい

――Twitterでゲームブック調の作品を読んだのは初めてでした。

梵辛:『くちべた食堂』シリーズは連載休止していた期間も入れて3年ほど続けているので、新規の人が途中から読みづらい部分もあると思ったんです。だからゲームブックという体裁で登場人物が自己紹介を始めたり、舞台設定を説明したり、と初めての方に向けて紹介し直す意図の特別編として描きました。

普通のゲームブックは、複雑に往復しながら読み進めるものなので、自分が何ページ目を読んでいるかわからなくなりがちです。それはスマホだとさらに難しい。なので選択肢は深く気にしなくてもいい構成にしました。ハズレを選んだら、いきなりゴールでゲームクリア。そうすれば、そこで読むのを止めてもいいし、違う選択肢を選んだことにして読み進めることもできますから。

――どの選択肢を選んでも同じ結末に至る点が、煩雑さを避けるのに効果的だった気がします。

梵辛:その通りです。「結局同じ店に行くんかい!」というツッコミもありましたが、『行きつけの店に通い続けてしまうゲームブック風漫画』ですから、タイトルがネタバレになっているんですよ(笑)。同じことを繰り返して笑わせる、お笑いの「天丼」という手法を使えば、読んでるうちに「何の話だっけ?」となっても「どうせ、いつもの店に行くんだろ」という雰囲気で楽しめるかなと。あと読みながら途中でタイトルを忘れて「オチで驚きました」と言ってくれる人もいたのも興味深かったです。

――梵辛さんは、他の作家さんのTwitter漫画もリツイートして紹介していますが、常にチェックはされているんですか。

梵辛:なるべく他の方の作品もチェックして、自分の作品と見比べるようにはしています。それが自分の作品の客観的な見え方の指針になるんですよ。注目作品はたくさんありますが、カラーで見やすくて、見ごたえがあって可愛いコンテンツをハイペースで投稿されているアカウントには特に憧れますね。有名どころではナガノ先生の『ちいかわ』など。まだまだカラー漫画は描ける人が少ないコンテンツなので、得意な人はやはり目立ちますし、人気になるのも頷けます。

――今後、作画ソフトの発達でカラー漫画が手軽に描ける時代も来るのではないでしょうか。

梵辛:既にAIが自動で色を置くソフトがあります。その進歩によっては途中までAIが描き進めることも出来るかもしれません。僕も将来的に導入する可能性もありますが、課題も多く、現時点でカラー漫画を描くなら着色のプロを雇うか、自分で勉強するのが現実的ですね。

 とはいえ、これ以上発展するためには誰かと一緒に仕事をするのは避けられません。ただ他人やAIの力を一度借りてしまったら、連載のクオリティは落とせないので、自分ひとりで作っていた時代には戻れなくなってしまう。そこで二の足を踏んでいる感じです。超一流の背景美術スタッフが抜けてしまって、続けられなくなった作品もあるくらいですし。

――なるほど。

梵辛:もしガンガン話しかけられる性格なら今頃、仲間を集めていたと思います。話すのは好きですが「話しかける」のが苦手なんですよ。きっかけがない。だから『くちべた食堂』は自分の話なんです。世の中の多くの人や普段、家で作業している漫画家はそんな孤独と戦っているのかもしれません。それが共感を持って読んでもらえている理由なのかなと。

 そして世の中によくあるラブコメのような距離感の漫画は自分には描けないので、もう少しだけ距離感のある関係のコメディを描きたい。それで店員と客という舞台設定の漫画にしたんです。

――興味深いです。最後に本シリーズにおける今後の展望などあれば。

梵辛:シリーズを通して、考え得る題材をひと通り描き切ることが目標なので、それまでクオリティを保って描き切りたいです。

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