凶暴化した850頭のサルが親子に襲いかかる……! 猿と人間の壮絶バトルが恐ろしい

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自然に対して謙虚になりたくなる

 では、ニンゲンは自然とどう向き合えばいいのだろう。

 本書を読んで思ったことは、自然に対しては謙虚になろう、ということだった。

 『シャトゥーン ヒグマの森』を読んだときもそうだったが、やはり人は自然の前には無力。可能ならば放っておくべきなのだ。

 そう思わせるきっかけのひとつに、『シャトゥーン ヒグマの森』と『猿と人間』の研究者の死の描写がある。

 両作では、自然を愛して活動している人たちが無慈悲にも殺されてしまう。非常に理不尽に感じられるが、かつては繁茂していたであろう森やそこに生きる野生動物が人によって守られなければならない状態に追いやられた経緯や歴史を考えると、野生動物が人の期待する反応を見せないのも納得せざるを得ない。

 動物を愛する人たちが犠牲になり、その犠牲が人々の恐怖を誘い、自然を保護することにつながるというのは『シャトゥーン ヒグマの森』で詳細に書かれている。そこまで直接的ではないにせよ、『猿と人間』にも同じメッセージが込められているのだ。

 だから、読後は私たち人間と自然がどう共存していけばいいのか、そして各地で増え続けている限界集落の課題とどう向き合っていけばいいのかを考えたくなる。

 アニマルパニックというエンタメ要素強めのジャンルを通して、自然環境への啓発をする……。相変わらず増田俊也は上手い。さすが、環境保護の活動をしていたヒグマ好きだ。本作も漫画化されたら大ヒットするだろう。

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