【漫画】Twitterで感動広げる「タクシードライバーと強面おじさんの話」が、厳しくもあたたかい
「自分の名前が残ることがしたい」
――岡部さんは現在、どんな形で漫画を制作しているのでしょうか。
岡部アズサさん(以下、岡部):普段は会社員をしているため、平日の仕事終わりや土日を使って漫画を描いています。数ヶ月に1本、30ページ前後の読み切りが描けるという状況です。
――漫画制作を始めたキッカケも教えてください。
岡部:学生時代にデザインを学んでおり、初めて原稿用紙に漫画を描いたのは大学生のとき、授業の課題でした。お話を考えるのはもともと好きだったのですが、その時に「漫画を描くのは面白いな」と思い、そこから少しずつ描くようになりました。松本大洋先生、髙橋ツトム先生、浅野いにお先生の影響を受けています。また、映画鑑賞が好きなので、会話シーンなどは映画からインスパイアされることが多いです。
――本格的に漫画制作を始めた時期は?
岡部:本格的に描き始めたのは大学卒業してからですね。就活していた時に自分のやりたいことを真剣に考えた時、「自分の名前が残ることがしたい」と思いました。
『ナイト・オン・ザ・プラネット』みたい作品に
――「タクシードライバーと強面おじさんの話」制作の経緯をお聞かせください。
岡部:「30ページくらいのボリュームかつ、限られた空間のものを描きたい」と思ったことが最初です。「とあるバーでの出来事」「ワンルームの中だけのやりとり」など、いろいろプロットを考えていたとき、映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』みたい作品を作りたくなりました。
この作品は各国のタクシードライバーと客のやりとりをオムニバス形式で描いた作品なのですが、タクシーという密室空間で展開される初めて会った人同士のやりとり・会話がとても面白いです。「その映画に自分が寄稿するなら」というイメージでプロットを考え、ストーリーを組み立てていきました。
――どのような点を意識してダークな雰囲気を演出したのですか?
岡部:そもそも、「ラストでちょっとだけ上がって終わる」という話にしたかったため、ラストまでは重い雰囲気になるように設定とキャラを考えました。深夜のタクシーというちょっと不穏な雰囲気の空間、人生に疲れ切っている主人公、客のおじさんもただ高圧的なだけでなく、暗い面を持たせたりしました。
「ほんのちょっとしたことで人生は変わる」
――岡部さんは本作を通して、どのようなことを伝えたかったですか?
岡部:描きたかったことは、「ちょっとした出会いや誰かの一言で考え方が変わったり、行動も変わる」ということです。主人公は自分の人生を諦めて、逃げ出そうとしている。そこで偶然の出会いがあり、考え方が変わりました。これって現実でも起こりうることだと思います。
なにより、一番大事なことは強面おじさんのセリフにもありますが、普通に生活しててもうまくいかないことや思い通りに行かなくてイライラすることはあると思います。だからと言って、「自虐的になったり、八つ当たりしたり、悪いことをしていい理由にはならない」いうことです。自分も上手く行かない時、八つ当たりしてしまうので戒めでもありますが……。
――漫画制作の今後の展望についても聞かせてください。
岡部:しばらくは会社員を続けつつ、合間に漫画を描く今までのスタイルでやっていくつもりです。いずれは商業誌で連載したいと思っています。これからもTwitterに漫画を載せたりしていく予定なので読んでいただければなと思います。