『女の園の星』星先生の誕生日はなぜ12月30日だったのか? 七夕伝説との関係性を考察

『女の園の星』星先生の誕生日の謎

織姫を連想される登場人物

 もしも星先生が彦星を象徴しているのであれば、作中には織姫にあたるキャラクターは存在しているのか。

 成森女子高において、観察日記をつけるなど星先生を特別視している女子生徒は見られるものの、星先生が特定の生徒や先生に対し特別な感情を有していると読み取ることは非常に困難であると感じる。作者である和山やま氏も、星先生を描くうえでどの生徒に対しても接し方に差が生まれないように意識していることを明かしている(参考:文春オンライン「星先生は、生徒に対しての言葉遣いもていねいで、理想を詰め込んだ感じです」 和山やまが語る『女の園の星』の“関係と恋愛”)。

 星先生が特定の人物に対し特別な感情を抱く様子はあまり見られない反面、本作では時計の描写が數多く見られる。学校が舞台となっている影響から、背景の一部として時計が多く登場するのだろう。和山氏が描くリアルな学校の風景に含まれた時計の存在によって、登場人物の行動に時刻にまつわる情報が付与される。

 午前6時過ぎに電車で通勤してうどんまんを大量に購入する女子生徒「若尾」さんを見守ったり、午後8時過ぎまで職員室で学級日誌に描かれた女子生徒「香川」さんの絵について考えながら作業したりーー。2巻「9時間目」で小林先生がペタリスト(タペストリー)をつくり始めたのは午後7時20分過ぎであり、同時刻に星先生も学校にいることが確認できる。朝早くから夜遅くまで勤める星先生の姿も、七夕の日に織姫と逢うため日々の仕事に精を出す彦星と重なる。

 夜遅くまで仕事をすることの多い星先生であるが、1巻「5時間目」ではいつもより早く帰ったことが小林先生によって明かされており、その日は娘さんの誕生日であった。日付は6月30日であり、織姫と彦星が年に1度逢うことのできる7月7日の1週間前にあたる。

 娘さんの誕生日である6月30日は、星先生の誕生日である12月30日とちょうど半年前だ。1年において対極的なふたつの日付は、天の川を挟み東西に分かれて暮らす、織姫と彦星の対称性をも感じさせる。本作において星先生が彦星を象徴しているのであれば、もしかしたら織姫にあたる存在は星先生の娘さんなのかもしれない。

 考察の真偽はさておいて、本稿がクールでミステリアスな星先生が家族に対し抱く心情について考えるきっかけとなれば幸いだ。

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