綾野剛が語る、役者として文章を書く意味 「言葉ではなく、感情を生業に」

綾野剛が語る、役者として文章を書く意味

 綾野剛による書籍『牙を抜かれた男達が化粧をする時代』が発売された。

 月刊誌『+act.(プラスアクト)』に綾野が隔月で連載していた写真、文章をまとめた本作。綾野自身が「その時の心情やコンディションが如実に表れている」と評する連載内容を自ら振り返り、過去の自分と向き合う「証言(解読)」も新たに収録されるなど、充実の内容に仕上がっている。また、本の表紙には気鋭の現代アーティスト・画家である佐野凜由輔氏が描き下ろした綾野剛の肖像ZOOM「GO AYANO face」が掲載されている。

 リアルサウンドブックでは、綾野剛に単独インタビュー。本作『牙を抜かれた男達が化粧をする時代』の制作、言葉・写真に対するスタンスなどについて語ってもらった。(森朋之)

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役者としての自分を忘れたことはない

綾野剛

——書籍『牙を抜かれた男達が化粧をする時代』について聞かせてください。『+act.(プラスアクト)』の10数年分の連載をまとめた作品ですが、まさに言葉と写真の芸術だなと。

綾野:励みになります。『+act.(プラスアクト)』の船田(恵)さん、デザインを手がけてくれたみなさんをはじめ、チームとして共作した作品が愛蔵版として新たな形となり素直に嬉しいです。船田さんがプラスアクトの編集長を勇退されることになり、「連載を続けますか?」というお話がありました。僕としては「一緒に船を降りる」という思いでしたし、「連載もここで(終了)」ということにさせていただいて。自分たちの余命をちゃんと作ると言いますか、一つ一つはじめて、一つ一つ終わらせていきたいんです。どんな映画やドラマも必ず終わりがあるわけで、俳優としても性に合ってるんだと思います。この書籍も、船田さんへの敬意の証になればいいなと思っているんですが、こうやって形を変えて生きながらえるのも意味があるのかなと。本は、僕よりも長生きしますから。

——2009年から現在までの綾野さんの軌跡を体感できる作品としても、すごく貴重だと思います。

綾野:僕の12年間が詰まっているわけではなくて、自分が生きてきた役たちが吐露した言葉、役たちが求めていた景色(写真)なのかなと。ご一緒したキャストやスタッフも含めて、作品自体が込められていて。それがこうして形になったことに対しては、感謝しかありません。

——俳優としての活動と強くつながっている、と。

綾野:映像ではなく本という形ですが、俳優として作品を提示していますので、 “別の表現”という感覚ではありません。以前、音楽をやっているときもそうだったんです。「役者としての活動に影響がある」と信じて。この先、出会う作品のために自分と向き合う時間でした。役者としての自分を忘れたことは、一時(いっとき)もありません。

——つまり綾野さんご自身を表現した本ではないんですね。

綾野:この本を「役者本」と捉えている方もいますし、「役作りを経て、どう変化したか」というふうに読んでくださる方もいて。それぞれ読み方が違う。ただ、すべては僕が演じた役から溢れたもので、言葉も写真も、僕から直に生まれてきたものは一つもありません。

言葉は断定的、表情は雄弁

綾野剛

——なるほど。「牙を抜かれた男達が化粧をする時代」というタイトルを含め、言葉の解釈、捉え方の変化はありますか?

綾野:タイトルは12年前に考えたものなので、羞恥心もあります。ただ、基本ベースにあるものーー言葉にはいつも表情を変える、という思いは変わらないです。言葉はときに暴力的だし、言葉に愛されたり、生かされたりする経験もあって。みなさんも同じだと思うんです。僕は“言葉=メッセージ”と捉えていなくて。写真家、音楽家、ダンサーもそうだと思いますが、言葉にメッセージを込めることができないから役者をやってるんだと思います。言葉で表現できないから僕は役者をやっている。この本を読み返してみても、「役者であろうとしている」ということは確かでした。

——本作には、綾野さんが過去の自分と向き合いながら記した「証言(解読)」も収録されていますが、書くのは大変でした?

綾野:あくまでも今の感覚でしか書けません。だから、どうしてもフィクションになってしまう。唯一、解読することは許してもらえたのかなと。ただ、個人的には「楽しい」というより、「苦楽を共にした方が、お客さんに喜んでもらえる作品になる」という感覚もあって。この本も、「しっかり自分を追い込んで作った」という感じがあります。素直に「証言(解読)」は残酷な作業でした。

ーー役者は言葉を扱う仕事でもあるし、書くことに対しても適性があるんだと思いますけどね。

綾野:確かに「役者は言葉を扱う仕事」と思われがちですが、自分は言葉ではなく、感情を生業にしています。セリフが一切なくても、その役を見ただけで涙が出てくる瞬間もありますし、喋らなくても感情がヒシヒシと伝わることもある。特に上の世代の方々を見ていると、生きてきた軌跡の積み重ねを感じます。

——言葉を越えた表現ですよね、それは。

綾野:言葉は断定的ですが、表情は雄弁ですから。「証言(解読)」も、そういう姿勢で書くことは務めました。当時の自分のことを思って、そこに残っている感情だったりを形にしています。

——写真に関しては?

綾野:その役にとって必要な景色がきっとあったのではないかと。



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