16歳TikToker・ひかりんちょが「全世代の人に知られる人になりたい」と言うのでオッサンが著書を読んでみた
「校則は守る」
そんな本書だが、オッサン的に気になったところがある。
「周りに流されて人生決めるな」「私は好きな服を着る好きな事をする」が基本的なメッセージである本書だが、ひかりんちょ本人も母親も「校則を守る」ことを重視している。
これは非常に今っぽい感覚だ。
近年では昭和の時代よりもずっと厳しくなっている「ブラック校則」が問題視され、ドラマのネタになるほどだ。
にもかかわらず、他人に迎合せずに生きることを称揚しているひかりんちょのような存在でさえ「校則は守るべき。その範囲でおしゃれすればいい」と考えている。
これはオッサン世代には理解しがたいものがある。
校則なんて法律ですらないし、不条理なら変えるか、変えられなくても別に守らなくてもいい、というのがかつてであれば当たり前の感覚だったと思う。
もちろん、なんでもかんでも逸脱している人間では視聴者に引かれてしまって人気は出ないし、逆になんでもかんでも従順なだけでも魅力を感じてもらえない。
だから、どこが周囲の人間と同じ感覚で、どこが違うかが重要になるわけだが、このひかりんちょ親子の感覚は、その今日的な線引きを示している。
今年出た本では、kemioの『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』(KADOKAWA)と並んで、当事者が書いた若者本としては必読のものだろう。
SNS社会でどう生きぬくのかなどに関しては共振するところもありつつ、kemioは95年生まれ、ひかりんちょは2003年生まれだから、年齢による感覚の違いもある。
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■飯田一史
取材・調査・執筆業。出版社にてカルチャー誌、小説の編集者を経て独立。コンテンツビジネスや出版産業、ネット文化、最近は児童書市場や読書推進施策に関心がある。著作に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』『ウェブ小説の衝撃』など。出版業界紙「新文化」にて「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/kodomonohonlog.htm)、小説誌「小説すばる」にウェブ小説時評「書を捨てよ、ウェブへ出よう」連載中。グロービスMBA。
■書籍情報
『ありのままの私を受け入れずに批判する奴には、心の中で中指立てればいい』
ひかりんちょ 著
価格:1,320円(税込)
出版社:KADOKAWA