ヒップホップ漫画『少年イン・ザ・フッド』が目指すもの 「世界のラップゲームにエントリーする」

『少年イン・ザ・フッド』インタビュー

「漫画で世界のラップゲームにエントリーする」

影響を受けた本がずらりと並ぶ“一軍”の本棚。
ジャンルごとにきっちり並べているのは、棚自体が彼にとって思考を整理するためのツールだからだそう。
古今のヤンキー漫画の名作が並ぶ。
ヤングアダルト文学の影響も大きいとのこと。
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影響を受けた本がずらりと並ぶ“一軍”の本棚。
ジャンルごとにきっちり並べているのは、棚自体が彼にとって思考を整理するためのツールだからだそう。
古今のヤンキー漫画の名作が並ぶ。
ヤングアダルト文学の影響も大きいとのこと。
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ーー『少年イン・ザ・フッド』の第一話では、ドゥビが「フリスタ番長」という架空のテレビ番組をディスる描写があります。『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)への批判とも読めますが、その真意は?

SITE:俺はZeebraさんのことも好きだし『フリースタイルダンジョン』に出ているラッパーは顔見知りも多いけど、シンプルにあの番組の演出はイケてないと思うんですよね。ヒップホップの業界はラップゲームと言われるくらいで、競争によるゲーム的な要素が強いジャンルでなんです。色んな奴がこのラップゲームに参加してるけど、ターンがきてる奴、つまりボールを持っている奴だけがポイントを上げられる。今現在、日本のラップゲームでボールを持っているのは間違いなく『フリースタイルダンジョン』だから、ボールを持ってない奴らがスキをついてそのボールを奪いに行くのは当然のことなんです。日本のラップシーンはガラパゴスだと言われますが、ここから世界規模のラップゲームに参加するためにも、誰かが『フリースタイルダンジョン』からゲームの主導権を奪わなければいけないタイミングだと思うので。

ーー『少年イン・ザ・フッド』は、ヒップホップのゲームに参加する作品でもあると。

SITE:今は連載が始まったばっかでそこまで言うのはおこがましいですが、いずれはそうなって欲しいと思ってます。『少年イン・ザ・フッド』では、人種差別は絶対に許さないけど、ドラッグやグラフィティの罪は自己責任でOKという、ある意味NETFLIXのドラマに近いモラルのライン引きをしています。国際的にもヒキがある日本の漫画やアニメのフォーマットでリアルなディテールをきっちり描ききれれば、世界のラップゲームにおいても通用するものになるはずだと思っています。

ーー『少年イン・ザ・フッド』がアニメ化して、NETFLIXなどで配信されたら、海外でも人気になる可能性は十分ありそうです。

SITE:今は88risingのようなアジア系のヒップホップに注目が集まっている時代だから、チャンスだと考えています。あとは俺の画力さえ追いつけば……。ここまでラップゲームがなんだと、偉そうなことを語ってきましたが、正直なところ、まさか自分で漫画を描くになるとは想定していなかったので、当たり前の話なんですが、現時点での自分の漫画家としての実力不足にちょっと焦ってます。知ってましたが、漫画を描くのってめちゃくちゃ難しいですよね。連載の4回目まではアシスタントなしで背景まで全部自分で作業してたんですが、週刊連載のペースに全然追いつかなくて。そんなこんなで連載早々、事故りかけてたんですが、最近やっとアシスタントが決まって、ようやく無理ゲーではなくなったので、ここからどんどんパワーアップして、最終的には世界のラップゲームに認知されるような作品にしていきたいです! 今、頭の中にあるイメージをちゃんと描けるようになれば、絶対に面白い話だという自信があるので、まだまだ絵が安定しない感じとかも含めて、作者自身の成長物語だと思って温かく見守ってやってください。

(取材・文=松田広宣/写真=林直之)

■Ghetto Hollywoodプロフィール
79年東京生まれ。ヒップホップ特殊情報機関Ghetto Hollywood主宰。2000年『BURST』(コアマガジン)に掲載したグラフィティの特集記事をきっかけにライターとして活動を開始。その他A&R/PV制作など“ヒップホップ何でも屋”としてオルタナティブに活動中。グラフィティライターとしてNORIKIYOが率いるラップグループSD JUNKSTAにも所属。

※次ページからは第三話までを完全無料公開!

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