171が“ロックバンド”と“ライブハウス”にこだわる理由 3人の初期衝動、新EP『音楽 青春 LOVE』に迫る

国道171号は、京都・大阪・兵庫を貫く一本の道だ。3人組ロックバンド、171(イナイチ)は、その名をそのままバンド名に刻んでいる。2019年結成、2025年にアルバム『HELLO!』でメジャーデビュー(『HELLO!』についてはリリース時に筆者がリアルサウンドに寄稿したコラムもぜひご一読を)。それから半年後の今、新EP『音楽 青春 LOVE』を完成させた。
タイトルは、これ以上ないほどの直球だ。表題曲「音楽やろうよ!」は、ファンクやメタル、カントリーまで飲み込み、デスボイスさえ放り込んだ雑食的な1曲。続く「青春のウソホント」は、これまでの歩みを振り返る自伝的なロックチューンでありながら、青春を礼賛しない。誰かのせいにしていた未熟さや、消えない嫉妬心まで隠さずさらけ出す。ラストの「love」は、カナが作詞作曲を手がけた、EPの中で最も静かでオルタナティブ、そして個人的な曲だ。不器用な愛情表現が、装飾のない言葉でそのまま吐き出される。
田村晴信(Vo/Gt)、カナ(Vo/Ba)、モリモリ(Dr)。3人は現在28歳。『音楽 青春 LOVE』というタイトルが連想させる“青春真っ盛り”の年齢ではない。青春が終わりかけていることを自覚した20代後半が、それでもロックバンドを続ける理由を歌っているようにも響いてくる。
なぜ彼らはロックバンドという形式にこだわるのか。なぜ愚直なまでに『音楽 青春 LOVE』を掲げるのか。その背景にあるものを、3人に聞いた。(三宅正一)
三者三様、強烈なロックの初期体験
ーー今日は新しいEPのこともそうですが、直近で拝見したライブも含めてお話をお伺いできたらと思います、マイク1本とPCがあれば音源が作れるし、ライブもできる時代にあって、171を見ていると、ライブハウスと直結しているロックバンドという共同体はまだまだ刺激的で普遍的な存在になれるし、自分たちがその旗を振ってやるという執念と信念を感じるんですね。その背景にあるものも聞きたくて。まず、3人それぞれにとって、ロックミュージックに最初に出会った瞬間を聞かせてください。
田村晴信(以下、田村):僕が最初に好きになったのはマキシマムザホルモンで、そこから9mm Parabellum Bulletにのめり込みました。一番衝撃を受けたのは、『DEATH NOTE』(日本テレビ)のアニメのオープニング・エンディングが両方ホルモンだった時です。本当にかっこよくて、親に隠れて録画した映像を観ていました。衝撃的でしたね。当時はまだ、これはお茶の間で流していい音楽じゃないという感覚があったので。見てはいけないものを見ている、アダルトサイトを覗いているような気分でした(笑)。

ーー子どもが触れてはいけないかもと感じるものに、もっと触れたいと思わせる。それがロックミュージックの根源的な求心力の一つでもあると思います。
田村:そうじゃないと、ロックってただの大人の逃げ道にしかならないと思うんです。あれは、自分にとって最初の招待状でした。お母さんのそばでは聴けない音楽が、この世にあるんだと教えてもらった瞬間でしたね。あと、サザンオールスターズもよく聴いてました。よく考えたら、サザンも親の前で聴いちゃいけないような歌詞がいっぱいありますけど(笑)。
ーーそれは桑田佳祐という唯一無比のソングライターが持つ、アナーキズムとポピュラリティが成し得る技であり。
田村:そうですね。それをやりながら日本で一番のレベルにいるってすごいことですよね。サザンも聴きつつ、そこから9mmのライブ映像に出てくる海外バンドの名前を辿っていって、Nirvanaに出会いました。Nirvanaは最初、「サビがない」と思っていたんですが、聴き返すとちゃんとサビがありました(笑)。あとは、Pixiesを聴いたり。でも一番ハマったのはジミ・ヘンドリックスでした。ギターを始めたばかりの頃で、「こんなことができるのか!」と衝撃を受けて。9mmの滝(善充)さんがどうやってその音を出しているのかわからないタイプのギタリストで、その系譜を辿るとジミ・ヘンドリックスという王様的な存在がいたんです。
ーー今はPublic Image Ltd.のTシャツを着てますが。
田村:Public Image Ltd.が大好きというわけではなくて、このTシャツは薄くてペラペラで、遠征の時にリュックに入れやすいので着てるというのが正直なところです(笑)。でも、Sex Pistolsは聴いてました。パンクを聴き始めたのは、高校3年生から。正直、最初はよくわからなかった。最初は実はVOCALOIDから入ったんですよ。当時身近にVOCALOID出身でパンクバンドをやっていた人がいて、そこから広がっていった感じです。
ーーモリモリさんは2Pacが出演した映画『Poetic Justice』のTシャツを着てますね。
モリモリ:これは2Pacが好きで、心斎橋のPangeaというライブハウスの近くで買ったんです。

ーーラップも結構聴くんですか?
モリモリ:そうですね。アメリカのラップより日本語ラップの方が好きで、今もよく聴いてます。日本のラッパーだとACE COOLが好きです。
ーー171のインタビューでACE COOLの名前が出るとは思ってなかったです(笑)。バンドに興味を持ったのは?
モリモリ:中学時代、クラスで前の席だった子がバンド好きで、「『Mステ』に凛として時雨が出るから観た方がいいよ」と教えてくれたんです。当時の僕はロックといえばTOKIOくらいしか知らなくて、ORANGE RANGEやゆずを聴いてるような感じでした。時雨が「abnormalize」をパフォーマンスしているのを観て、「バンドってこんなことができるのか!」と感動して。吹奏楽部で打楽器をやっていたので、軽音楽部に入って高校の同級生とバンドを組んだのが、ロックの初期体験です。
ーー今のドラムスタイルに影響を与えたのは?
モリモリ:就職活動があまりにもしんどかった時期に、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの「ミッドナイト・クラクション・ベイビー」を駅のホームで聴いて、一人で泣いたことがあって。「これでいいんだな」と思えたんです。そこからドラムの叩き方も変わっていきました。あとはヒップホップを聴いて「フィルインがなくても曲は進んでいくんだ」と気づいたことも大きくて。今はシンプルにビートだけを叩く方向に変わっていきました。
ーーカナさんの最初のロック体験は?
カナ:ロックとかバンドとの出会いは結構遅くて。もともと4歳くらいからピアノを習ってたんですけど、子供の頃から破壊衝動がすごかったんですよ。物を壊すのが好きで、ブロックの中にアンパンマンを閉じ込めて、上から叩き壊して遊んでました。
ーーサディスティックですね(笑)。
カナ:それなのにピアノはクラシックで、「楽譜通りに」「ここは優しく」「ここは強く」って言われるのがすごい嫌で、家ではヒステリックに鍵盤を叩くように弾いてました。「私、クラシックちゃうのかも」って気づいたのが中学生か高校生の頃で、その時にベースやギターって楽器があるって知りました。ロックは最初、スピッツが好きやったんです。
ーースピッツも、もともとはビートパンクバンドですよね。
カナ:そうですね。詩や小説も好きで、衝動の逃げ場として文字を書くってことがあるんやって、スピッツを聴いて知りました。そこから椎名林檎も好きになって、ベースを弾き始めて。でもベースを始めた時に、後ろでおとなしく弾いてなあかんって雰囲気がまたあったりして。今は違いますけど、「バンドでベースを弾いてもまだそうなんや」って最初は思ってました。

ーー破壊衝動は今もあるんですか?
カナ:全然ありますね。日常生活ができるレベルにはなってますけど、これだけライブがあっても、ライブがない時期はかなりギリギリです。クラシックでもベースでも、ずっと抑圧されたフラストレーションがあって、田村たちに「好きに音を出していいよ」と言われたところから、ようやく私の音楽が始まったという気持ちになれたんです。だから、ほんまに、バンドに命を救われました。
ーーそんな3人ですが、どのように一緒にバンドを組むことになったんですか?
モリモリ:僕はバンドを始める時、大きなフェスのヘッドライナーになりたいと思っていました。自分にとって最後のバンドだと思ってやったので、組むならもう、可能性があると思える相手とやりたい、と。大学に入る前に出会った中で、作曲が一番上手かったのが高校の軽音楽部で一緒だった田村だったので、声をかけました。断られたら、自分のバンド人生はそこで終わりだと思っていたので。カナちゃんのことはもともと知らなかったんですが、田村が紹介してくれて一緒にバンドを組んだらすごくいい曲を書くから、本当に運がよかったです。

ーー田村さんは、この2人とやりたいと思った決め手は何だったんですか?
田村:カナとは大学の軽音部の同期で。ベースはカナしかいないと思っていました。僕はずっと音の大きいギタリストだったんですけど、実は大きい音を出そうとしていたわけじゃなくて、“正しい音量”を出そうとしていただけなんです。それでも一緒にバンドをやると、僕が音を出すと遠慮してしまう人が多かった。でもカナだけは何も遠慮せず、こちらが上げればそのぶん上げてくる。それが決め手でしたね。
カナ:私は大きい音を出したいわけじゃなくて、バンドのアンサンブルとして、ギターに対してベースはこれくらいほしいなっていうのが、一番気持ちよかっただけなんですけどね(笑)。
ーー絶妙な3人ですよね。本当にバランスがいい。みんな全然違うタイプだからこそ。
田村:そこはまさに売りだと思ってます。



















