a flood of circle、“谷底のロックンロール”に宿った希望 転がり続けて20年――辿り着いた約束の地=武道館レポ

a flood of circle、初の武道館ライブレポ

 a flood of circleは最高のロックバンドだ――。「夜空に架かる虹」で歌われている〈5月6日 武道館〉。思わずそう叫びたくなるほど、痛快なライブだった。

 『a flood of circle 20周年記念公演 LIVE AT 日本武道館』は、結成から20年という長い時間を経て実現した、バンドにとって初の日本武道館公演である。客電は最初から最後まで点いたまま。ステージの背後に設置されたスクリーンには、佐々木亮介(Vo/Gt)、渡邊一丘(Dr)、HISAYO(Ba)、アオキテツ(Gt)の姿を映すシンプルな映像が流れるのみ。アニバーサリー公演らしい華やかな装飾も、派手な演出も、何一つない。音楽以外の要素が極限まで削ぎ落されたステージで、4人は渾身の30曲をストイックに鳴らし続けた。その潔さが、あまりにもa flood of circleらしかった。

afoc 武道館

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 本公演に向けて行われた対バンツアー『a flood of circle 20周年記念ツアー “日本武道館への道”』で、佐々木は開演直前に会場入りし、本番でセットリストを変更するなど、予定調和を崩すことを選んできた。その姿勢はこの日も貫かれており、ギターケースを背負った彼が武道館に姿を現したのは開演10分前のこと。客席に現れるやいなや、そのままステージへと上がり、サウンドチェックを始めたところで時刻は16時。渡邊、HISAYO、アオキもステージインし、「本気で生きているのなら」を歌う佐々木に自然と合流していく。1人の弾き語りから、4人のどっしりとしたアンサンブルが武道館に響きわたる。どんなに自分が自由に振る舞おうと、3人がついてきてくれることを佐々木は知っているのだろう。そして、3人もまた、そんな佐々木をある意味面白がるようにしながら、しっかりと支えている。たしかな信頼がこの4人にはあるのだと思った。

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佐々木亮介(Vo/Gt)
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渡邊一丘(Dr)

 「おはようございます。a flood of circleです」というお決まりの挨拶から、正真正銘の1曲目「伝説の夜を君と」が奏でられる。〈誰も知らん伝説の夜を〉のフレーズが、ユニークな形で幕を開けたライブの光景と重なり、自然と胸を高鳴らせた。音楽以外の要素が削ぎ落されているということは、オーディエンスは4人の演奏から何かを受け取るしかない。言い換えれば、伝えたいことは歌と演奏にすべて詰まっているということだ。「New Tribe」の〈君を連れてく 約束の地へ〉は、「君を連れてきた 約束の地へ」に変えて歌われる。長い時間をかけて、バンドが武道館へ辿り着いた事実を少しだけ噛み締めるような響きがあった。

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HISAYO(Ba)
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アオキテツ(Gt)

 そもそもa flood of circleの武道館公演に向けた動きは2023年から始まり、その決意は当時発表された楽曲「ゴールド・ディガーズ」の〈武道館 取んだ3年後 赤でも恥でもやんぞ〉に込められた。ライブの後半でこの曲が歌われた時、該当の歌詞の部分で佐々木は黙って大きく両手を広げ、「きたぞ! 武道館!」と叫ぶ。続く「虫けらの詩」の冒頭で〈こんな日がどうせ来るってわかってた〉と歌われることで、3年前の宣言を彼らが自身の手で現実にしたことを強く実感させられた。佐々木がワンコードをかき鳴らし、渡邊が軽やかにビートを刻む。疾走するバンドサウンドが、会場の熱をぐんぐんと引き上げていく。

afoc 武道館

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 そこからステージ上で4人が向かい合えば、「プシケ」が始まる合図である。いつものように、曲中で始まるメンバー紹介。「2026年5月6日。a flood of circle『20周年記念公演 LIVE AT 日本武道館』にお越しの親愛なる皆さまに、俺の大事なメンバーを紹介します!」と告げた佐々木が順番にメンバーの名前を呼び、最後に「a flood of circle」というバンド名が武道館に高らかに響きわたった。積み重ねてきた20年間のバンドの重みが、この瞬間に一気に押し寄せる。

 「シーガル」を経て披露されたのは、昨年11月のフリーライブで武道館公演を発表した際に歌われた「夜空に架かる虹」。佐々木は〈ここで歌ってる〉とステージを指差し、分厚いバンドサウンドに乗せて〈5月6日 武道館/目を開けて夢を見ている〉という言葉を放つ。夢の景色が広がっているはずなのに、彼らはどこまでも地に足がついているように感じた。

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 怒涛のような本編を終えると、佐々木はステージで譜面のような紙を広げ始め、客席からの手拍子を「やるから」と制した。アンコール1曲目、新曲の「ロックンロール」。振り絞るように歌う佐々木に、HISAYOの力強いベース、アオキの熱を帯びたギター、渡邊のダイナミックなドラムが重なっていく。日本武道館は多くのミュージシャンにとって憧れの地だろう。夢を追いかけて、登って、登って、その先に見える場所のはずだが、歌う前に佐々木は「働きたくなさでバンド始めたから、もうずっと夢叶いっぱなし」「バンド組んだ日からずっとジェットコースターなんですよ。で、今日が谷底」だと口にした。a flood of circleにとって、今日の武道館公演は華やかな夢の到達を意味するものではなく、転がり続けてきたバンドの現在地を示すものなのかもしれない。谷底で鳴らされるロックンロール。だが、そんな彼らの泥臭い姿に惹きつけられ、彼らの音楽を求める人が大勢いることは、今日この光景が証明している。

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 アンコールではベストアルバム『革命未遂の蝶が見る夢』のリリースと全国ツアー『a flood of circle TOUR 革命未遂の蝶が見る夢』の開催に加え、武道館公演の翌日5月7日に東京・下北沢SHELTERでライブを行うこともさらりと発表。「花降る空に不滅の歌を」「Honey Moon Song」「ブラックバード」でライブを締めくくると、渡邊、HISAYO、アオキはステージを去り、佐々木はギターをケースにしまったのちに再び客席を通って会場を後にした。

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 翌日の下北沢SHELTER公演では、武道館のセットリストが逆から披露されていた。彼らにとって、この2日間がひと続きだったのだろう。「武道館には魔物が棲んでいる」なんてよく言うが、この日のa flood of circleは武道館を完全に自分たちのものにしていた。20年間転がり続けてきたバンドの強さを見た夜だった。

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