IQOSはなぜDevialetと共鳴したのか ミラノで体感した音のインスタレーションの世界

世界最大のたばこメーカー、フィリップ モリス インターナショナル(通称PMI)。歴史的にはマールボロやラークなどの銘柄でも有名だが、昨今は加熱式たばこのIQOS(アイコス)シリーズに力を入れており、日本でもシェアは高く、加熱式たばこを代表するメーカーのひとつともなっている。
そんなIQOSが、フランスを拠点とする高級オーディオブランドのDevialet(デビアレ)とのコラボレーションを発表。IQOS×Devialetの限定コレクション『Soundsorial Collection(サウンドソリアルコレクション)』として、2026年ミラノデザインウィークの開催とともにお披露目された。なお『Soundsorial』は、soundとsensorial(感覚的な)を組み合わせた造語でもある。本稿ではその世界観をレポートしたい。
こちらがDevialetとのコラボ製品。『IQOS イルマ i プライム』の限定デザインモデルと、Devialetのワイヤレスイヤホン『Gemini II』の限定デザインとなる。
しかし、考えてみれば「どうして加熱式たばこのIQOSが名門オーディオブランドとコラボを?」と疑問に思う部分もある。IQOSは2025年にイタリアのホームプロダクツブランドSELETTI(セレッティ)とコラボした実績があるが、いわばSELETTIはデザインの雄であり、そのコラボには特に疑問はない。一方でDevialetは、純粋なオーディオブランドで、たばことの関連性は一見、なさそうに思える。
しかし、イタリア・ミラノでPMIが開催したメディア向けツアーにて、その真意の一端を伺うことができた。どうやらPMIの考えているスケールは、筆者の想定を大きく超えていたようだ。
世界のメディアをミラノに招待した訳
ミラノデザインウィークにあわせて、PMIは世界中から現地ミラノにメディアを招待していた。筆者がまず現地で驚いたのはその規模感だ。
デザインウィーク開催前日のプレパーティは、DOLCE&GABBANAのブティックに隣接するDG MARTINI®にて開催。
誰もがスマホを構えずにはいられない真っ赤なアプローチを抜けて……。
デビアレサウンドに包まれたレセプション会場へ。世界中のメディアがひしめきあう規模とは筆者も想像もしていなかったが既に熱気溢れる会場。
会場の音響を担うのは、もちろんDevialetのスピーカーだ。日本では2026年4月末に西日本初の公式ストアがオープンするなど、国内での注目度も高まりつつあるブランドだ。ちなみに写真のモデル『Phantom Ultimate 108 dB』の価格は、58万9000円となっている。
レセプションの次は晩餐会へ。テーブルにディスプレイを用いるなど、まるで空間すべてがインスタレーションのよう! 「すごく力が入っている発表イベントだな」と関心したが、すべてはIQOSというブランドイメージや世界観の延長線にあり、Devialetとのコラボもまた自然な成り行きだという。
音の可視化という「好奇心」
晩餐会が進むなか、フィリップ モリス イタリアのマネージング・ディレクター、パスクアーレ・フレーガ氏が登壇。今回のイベントやDevialetとのコラボについて語った。
フレーガ氏は卓越性・精密性・テクノロジーの再定義こそが重要だと述べ、そのマインドはDevialetとも共通するものだという。そこで生まれた疑問こそが「私たちが聞いた音を可視化したらどうなるだろう?」というシンプルなものであり、我々はインスタレーションやサウンドソリアル・デザインというかたちで、IQOS×Devialetの挑戦的な表現を目にすることとなる。
続けて登壇したDevialetのCEOをつとめるジャック・デュモン氏も、卓越性こそが重要だと説く。締めの言葉として述べていた「常に好奇心を持ち、卓越性を徹底的に追求する」という言葉は、筆者が特に惹かれたものだ。Devialetのスピーカーこそ、好奇心とクラフトマンシップの体現ではないか。
卓越していて精密。「神は細部に宿る」とはミース・ファン・デル・ローエの言葉だが、そのマインドを加熱式たばこに宿すという発想は、非常に面白い。だが、筆者はミラノにて多くの加熱式たばこユーザーを見かけた。実はイタリアは、IQOSの普及率が高い国のひとつでもある。カフェではテラス席も多いため、加熱式たばこを楽しみやすい土台ができているのだ。そうなると重要になるのは、スタイルだ。
例えば服装やヘアスタイルはその人の個性を表現する代表的な要素だ。手元もまた個性を表現できるポイントといえる。なぜその製品を選んだのか、どのようにそれを使いこなしているのか。
例えばこちらは先述したSELETTIとIQOSのコラボモデルだが、こうしてテーブルに置いてあるだけでただならぬ高級感を醸し出す(使用している男性もとてもおしゃれだった!)。たばこを味わっている時間は、ただ味わっているだけにあらず。精神的な充足、指先に感じる重み、そしてそれらを体現している自分など、あらゆる要素が自身を表現するツールとなる。
では、音楽という要素を盛り込んだ今回の限定コレクション『Soundsorial Collection』はどうだろう? 「自分は音楽も好きだしこのデザインも好きだから、これを使ってみたい」と思わせるパワーがある。好きになったきっかけはデザインかもしれないが、各メーカーが共鳴したことや、互いに通底する理念があることは、デザインの説得力を強化する要素として申し分ないものだろう。
ブースから見る、音の可視化への様々なアプローチ
ここからはミラノデザインウィークで展示されていたIQOSブースを見ながら、いかにして彼らが「Soundsorial」を表現していたかを紹介していこう。
コラボ製品を展示するメインブースには、磁性流体を組み合わせたインスタレーションが用意されていた。ダイヤルを回すと下部の黒い泥(磁性流体)が、トゲのようになったりあるいは穏やかな並のような形状に変化していく。生き物のような有機的動作はユニークで、小さなメディアアートとして来場者を楽しませていた。

入場する前に、来場者はマイクに向かって自分の声を収録する。どうやら5種類のパターンに声を分析しているようだ。
筆者はbasso(baseのイタリア語)のカードをもらった。イタリアといえばオペラの本場であり、スカラ座を擁するミラノで自分がbassoに所属できたことは、なんだか誉れ高い気持ちだ。
ブース内は体験と視聴を重視したインスタレーションで構成されていた。音響はもちろんDevialetのスピーカー。
このブースの目玉となる大広間には、水で満たされた池とタッチパネルが配置。パネルを操作するとそれぞれのエリアからパートに分かれた音楽が再生される。
パートごとに池の水に生まれる波紋が異なり、これがなんとも美麗だった。ソプラノのような高音ならば波紋の波長は細かくなり、低音ならば波長は広くなる。音の可視化の集大成のような表現になっていた。
IQOSが作ろうとしているのは、まだ見ぬたば体験
「PMIはたばこを売っているだけじゃない」というのが、今回のメディアツアーで強く感じた点だった。製品を販売することは重要だが、その前段階にあたる哲学や世界観の部分、それら目に見えない抽象物を具現化するためのデザインアプローチに並々ならぬ力を注いでいた。
特に今回、Devialetというオーディオブランドとコラボしたことで、音楽的文脈からもIQOSに届く導線が生まれた。他カルチャーを巻き込むことは新たな顧客の獲得にも繋がるが、自ブランドだけでは出せないカラーを表現できる利点もあるだろう。単なるロゴ貸しやデザイン替えに留まらない、意義と意味のあるコラボレーションが実現できている。
ミラノを代表する中央駅にはIQOSストアが並んでおり、加熱式たばこの身近さが窺えた。喫煙という日々のルーティンも、クリエイティブな五感体験に接続できる。世界トップのメーカーであるPMIの好奇心あふれる戦略には、筆者もまた好奇心を大いに刺激された。音をキーワードに「吸う」から「体験する」を示した今回の試み。IQOS×Devialetが提示した新時代の「たばこ体験」に注目したい。










































