Deftones、15年ぶりの単独来日公演完遂 進化し続けてたどり着いた黄金期、熱狂と絆の真実

一夜明けて本稿の執筆に取りかかった今も、身体に心地好い余韻が残っている。想像以上の音圧と轟音からなる楽曲への深い没入感。現代的な演出で彩りつつ、どこまでも生々しいバンドサウンドの迫力。Deftonesは、懐かしい青春のバンドではなく、リアルタイムで進化し続けるバンドとして、単独公演としては15年ぶりの来日を果たしてくれた。

ニューメタルと呼ばれた時代から独自の道を突き進み、オリジナルメンバーであるチ・チェン(B)の死など波乱の歴史をたどって活動を続けてきたDeftones。いつを“黄金期”とするかは人それぞれ意見があるなかで(それもこのバンドの面白いところ)、現在が黄金期のひとつであることは間違いない。ライブを観終えた今、より強く断言できる。

初日の会場は、15年前には存在していなかった東京ガーデンシアター。最大キャパシティ約8000人の会場がソールドアウトを記録した。2011年の来日公演がキャパ約750人の渋谷クラブクアトロであったことを思えば、ほとんどがワンマン初見の観客だったはずだ。1988年に結成され、90年代後半~00年代に世界を席巻したバンドが、2026年に約10倍のキャパシティを埋めるとは。驚きも含め現場に足を運ぶと、そこにはリバイバルや再評価という言葉を超えた熱が存在していた。

いわゆる洋楽/メタルリスナー層に加え、幅広い世代の観客が集まり、特に目立つのは若い女性層だった。TikTokを通じてZ世代に波及したという話は聞いていたが、実際に目で見ると実感を持って伝わってくる。ライブにも足を運ぶということは一過性のトレンドとして消費されたわけでもなく、カルチャーとして根付き、むしろ“今ライブを見ておくべきバンド”になっているのだろう。服装もバンドTシャツから仕事帰りらしきスーツ、ゴスファッションまでさまざま。インバウンド全体が増えた影響なのか外国人もかなり多く、多様で壁のない雰囲気が生まれていた。
ライブは、1997年にリリースされた『Around the Fur』の「Be Quiet and Drive (Far Away)」で幕を開けた。歪んだギターの音色を合図に爆音が解き放たれ、チノ・モレノ(Vo/Gt)のシャウトが響く。その瞬間、会場まるごとDeftonesの世界に呑み込まれた。

分厚いギターリフでバウンシーに揺れた「Swerve City」、エイブ・カニンガム(Dr)の獰猛なビートが牽引する「Diamond Eyes」、変拍子とともにダークサイドが花開く「Feiticeira」と、ほとんどインターバルを挟まずに畳みかけられるのは多数のアルバムからの楽曲たち。時代やアルバムごとに色を変えてきたバンドだと思っていたが、こうしてライブで聴くと違和感なく繋がっているのが面白い。


色褪せない楽曲郡を堪能しつつ、最新アルバム『private music』の楽曲の存在感も際だっていた。特に、「Digital Bath」でシューゲイズサウンドに酔い、ドラマチックな「Tempest」の叙情性を浴びたあと、最新アルバムからのヘヴィチューン「milk of the madonna」「my mind is a mountain」に繋ぐ流れがお見事。シューゲイズ、ドリームポップ、ポストメタルなど、多彩なジャンルの垣根を乗り越えて唯一無二となった彼らに影響を受け、“デフトーンズコア”なる言葉まで生まれた所以を噛み締めた。


ブレない軸を担っているのは、やはりチノの歌声だ。囁くような声や叫び、語りかけたかと思えばメロウに歌い上げる多彩な表現力。ステージの端から端まで激しく飛び回りながら、観客に向けて煽るというより、自分自身から湧き上がる衝動を歌に込めているようなステージングに目を奪われた。レジェンドバンドのフロントマンとしてのカリスマ性を放つ一方で、かつてのナイーブさを感じる部分や、Tシャツスタイルが似合うカジュアルさは変わらないのがいい。

そして、繊細な揺らぎを持つチノの歌声に寄り添いながら支えるエイブのリズムが、Deftonesの有機的なグルーヴの核なのだと気づかされた。フランク・デルガド(Key/Turntable)のサウンドメイクの重要性はもちろん、サポートメンバーの演奏も素晴らしかったが、結成からずっと組んできた“ボーカル×ドラム”の縦のラインはかけがえのないもの。変化し続けていくバンドにおいて、オリジナルメンバーの絆は大きな力だと実感する。


SNS世代の大歓声が湧いた「Sextape」や、ドラマチックな世界観に引きずり込まれる「Hole In The Earth」など数々の名シーンを経て、あっという間に終演が近づく。本編ラストは、コロナ禍にリリースされた『Ohms』の闇を象徴する「Genesis」から、最新アルバムのなかでもポップな「infinite source」が飾った。闇から光へ、絶望から救済へ導かれる展開が美しい。愛に満ちたメロディを歌い上げ、チノは深々と頭を下げてステージをあとにした。
アンコールでは、「Cherry Waves」「My Own Summer (Shove It)」とアイコニックな楽曲に加え、1stアルバム『Adrenaline』からの「7 Words」を投下。原点と言うべきニューメタル魂を爆発させ、オーディエンスの熱狂ととともに幕を閉じた。


Deftonesの偉大さや再評価を紐解く論評は数多く、筆者自身も音楽性や文脈で理解しようとした時期もあった。が、ライブを観たリアルな体感こそが真実なのだと思う。幅広い世代が、それぞれの価値観と視点で心を動かされたことだろう。2026年にDeftonesが来日したという事実は、2020年代の日本のロック/ラウドシーンのトピックとして刻まれるに違いない。「よし、あらためて全部聴き直そう!」と音源に向き合ったところ、「ライブの迫力にはおよばないな……」とやや寂しくなってしまうことだけが弊害である。


























