Ms.OOJAが現代に届ける切なる願い “冬”モチーフの演歌歌謡が今の時代にも響く理由

Ms.OOJAが届ける切な願い

 2月にデビュー15周年を迎えた歌手のMs.OOJAが、4月22日に最新アルバム『Ms.ENKA』をリリースした。本作はタイトルの通り、演歌の名曲カバーに挑戦した。2020年から彼女が愛してやまない歌謡曲の名曲を中心にカバーした『流しのOOJA~VINTAGE SONG COVERS~』シリーズをリリースしており、今作は昭和歌謡から演歌へと、さらに一歩踏み込んで選曲/制作された。

『Ms.ENKA』の選曲に込められたMs.OOJAのメッセージ

 今作では「冬のリヴィエラ」「氷雨」「雪國」「北の宿から」「冬隣」と、「冬」や「雪」の情景を舞台にした楽曲が多く選曲され、「冬」が一つのキーワードとして浮上してくる。今の日本はまさしく「冬」の時代であり、それは社会情勢による物価高騰や災害などによる社会不安、人口減少による未来への不安、価値観や貧富の乖離による分断など多岐にわたる。混迷を極める時代を迎えているなかで、改めて“良質の音楽”を聴き癒され、心のよりどころとしてほしいという、Ms.OOJAの切なる願いが選曲からは見え隠れする。

「冬のリヴィエラ」Live Movie 2026

 森進一の「冬のリヴィエラ」は、演歌とシティポップがクロスオーバーしたエポックメイキングな1曲として知られる。作曲の大滝詠一はカラッとしたアメリカンポップスを得意としており、同曲にも演歌特有のウェット感はかけらもない。「リヴィエラ」とはイタリア語で「海岸」や、地中海沿岸の景色を指す言葉。歌詞に出て来る「港」や「船」「男」は演歌の常套句で、演歌の定番を松本隆流に比喩したセンスが実に心憎い。編曲の前田憲男はジャズ畑の出身で、尾崎紀世彦や西城秀樹のコンサートにも参加した人物。演歌とは異なる座組で作られながら、森進一独特のハスキーなボーカルと節回しが演歌の息吹を感じさせる、「ENKA」と呼ぶに相応しい1曲だ。Ms.OOJAの歌声は力強くも優しさがあり、まるで男を包み込む大いなる海のよう。〈男って奴は〉と呆れながら、でもばかなところも可愛く思え憎めないといった様子が伝わってくる。活動を始めてから20年、40代である彼女だからこその包容力が発揮されている。

 「氷雨」は、もともと1977年に佳山明生によって歌われた楽曲で、何度かの再リリースを経て1982年に日野美歌が歌ったことで広く知られるようになった。別れの寂しさを酒で忘れようとする、女性の切ない様子を歌ったもの。原曲は淡々とした雰囲気の楽曲であり、失恋の涙をタバコの煙のせいだとごまかし雨で隠すといった、情緒や趣深さがポイント。Ms.OOJAはそんな楽曲を、ブルージーなムードでドラマチックかつソウルフルに歌い上げた。まるで港町のジャズバーのステージで、ピアノをバックに、ドレスを着た彼女が歌っているかのような様子が目に浮かぶ。原曲の舞台や日本的な印象を、彼女のボーカルが異国の風景へと昇華させている。

 吉幾三の最大のヒット曲である「雪國」は、切ない女心を歌った。もともとフォークソングのシンガーソングライターであった吉が、自ら作詞・作曲を手がけ、男性である吉が女性の気持ちを歌い上げたことも当時大きな話題となった。原曲は、青森出身である吉の青森訛りが独特のニュアンスを生み、主人公の切実な思いが絶妙に表現されている。Ms.OOJAはクリアな発音でストレートに思いを表現した。バックに流れるピアノは、ジャジーで遊び心にあふれたフレージングを披露している。

 都はるみの「北の宿から」は、歌詞にも出て来る通り、〈女ごころの未練〉を手紙調の歌詞で綴ったナンバー。作詞はピンク・レディーなどアイドルから、五木ひろしや八代亜紀など幅広く手がけた阿久悠。非常にシンプルで短い歌詞でありながら、1番、2番と進むごとに寂しさが募り、3番ではとうとう〈あなた死んでもいいですか〉と寂しさも極まる。作曲の小林亜星はCMソングの作曲家として知られ、アニメや特撮の曲も多く手がけた。歌手への楽曲提供としては、グループサウンズや歌謡ポップス系の歌手が多い。Ms.OOJAのバージョンは、バックに流れるピアノのキーが原曲とは異なっており、意表を突く新鮮さがある。ストリングスが入ってからはジャズ調で、時折出てくる演歌チックなフレージングも耳を引く。

 冬の歌には、悲しみや苦しみ、切なさが多く表現されている。それと同時に、春の訪れという「希望」もその裏に隠されている。また、1980年代の楽曲の歌詞やメロディーにはその時代特有のエネルギーがあり、今作のカバーからそのエネルギーを感じ取り、来るべき春に備える力としてほしいという思いも込められているように感じる。そうした春が暗喩として込められていることが如実なのが「冬隣」だ。

「冬隣」Live Movie 2026

 ちあきなおみの「冬隣」は、厳密には演歌というよりフォーク/シンガーソングライター系と歌謡曲の融合体だ。「喝采」なども手がけた吉田旺の作詞。作曲はすぎもとまさと名義による「吾亦紅」で『NHK紅白歌合戦』出場も果たした、シンガーソングライターの杉本眞人。編曲は椎名林檎やMISIAにも参加するキーボーディストの倉田信雄が手がけた。『流しのOOJA 3~VINTAGE SONG COVERS~』のリリース後、杉本真人のライブを観に行き、弾き語りでセルフカバーされた「冬隣」を聴き「絶対に歌いたい!」と思って最初に収録を決めたことを、オフィシャルインタビューで語っているMs.OOJA。昨年のBillboardライブで「雨の慕情」や「氷雨」とともに披露されており、ファンの間でも大きな反響を呼んだ。

 「氷雨」と同様、寂しさを紛らわせるため一人酒を飲む女性の心情を歌った同曲。〈お湯割りの焼酎〉という非常にピンポイントで身近な視点から、〈地球の夜更け〉と視点が一気にスケールアップするところが秀逸だ。テーブルの上から一気に人工衛星軌道まで上昇するような、視点の切り返しにハッとさせられる。この失恋はそれくらい本人にとっては大きな悩みであり、逆に地球規模で考えたら恋の悩みは些末なものと、なぐさめにも受け取ることができる。Ms.OOJAのバージョンは、シティポップ調で艶めかしいサックスが秀逸。Ms.OOJAは物語の語り部のように淡々とし、そのクールさが逆に、歌詞の物語のドラマ性を想像させる。

 上記の楽曲が誕生した1980年代は、戦後という冬を耐えしのぎ、1970年代の行動経済成長期を経てバブル期を迎え、日本はまさしく「この世の春」だった。そうした時代の冬を歌うことで、春への期待をほのめかしたアルバム。少ない言葉数で比喩的に物語を歌う演歌の手法をトレースしながら、日本人特有の奥ゆかしさも感じられる、まさしく「演歌ならぬENKA」と呼ぶに相応しい1作だ。

■Ms.OOJA 15周年特設サイト
https://msooja.jp/page/15th/

■リリース情報
『Ms.ENKA~OOJA の演歌~』
2026年4月22日(水)リリース
購入予約リンク:https://msooja.lnk.to/MSENKA_CD

<通常盤>
価格:3,520円(税込)
品番:UMCK-1826(CD Only)

<CD>(曲順未定)※通常盤・UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤共通
・愛燦燦 / 美空ひばり(1986)
・雨の慕情 / 八代亜紀(1980)
・北の宿から / 都はるみ(1975)
・氷雨 / 日野美歌(1982)
・人生いろいろ / 島倉千代子(1987)
・冬隣 / ちあきなおみ(1988)
・冬のリヴィエラ / 森進一(1982)
・べサメ・ムーチョ / 桂銀淑(1940)
・無言坂 / 香西かおり(1993)
・雪國 / 吉幾三(1986)
・夢芝居 / 梅沢富美男(1982)

<UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤>
価格:13,200円(税込)
品番:PDCS-194
2CD+Blu-ray+GOODS
仕様:見開きLPサイズジャケット仕様
※商品は数量限定。

UNIVERSAL MUSIC STORE 限定盤 Disc-2 ライブ CD
2025.8.8(fri)Billboard Live Summer Tour 2025 @Billboard Live YOKOHAMA
1. 夏をあきらめて
2. 恋人も濡れる街角
3. Last Night
4. Purple Haze
5. 優しい雨
6. まだ知らないストーリー
7. Ti Amo
8. 最後の雨
9. 雨の慕情
10. 30
11. 40
12. Be...
13. 最終回

UNIVERSAL MUSIC STORE 限定盤 Disc-3 Blu-ray
2025.6.22(sun)流しのOOJA 総集編 TOUR Final @明治座公演
1.異邦人
2.ルビーの指輪
3.ワインレッドの心
4.恋人も濡れる街角
5.真夜中のドア
6.プラスティック・ラブ
7.みずいろの雨
8.勝手にしやがれ
9.六本木純情派
10.飾りじゃないのよ涙は
11.フライディ・チャイナタウン
12.Woman
13.恋におちて
14.つぐない
15.駅
16.木枯らしに抱かれて
17.メモリーグラス
18.ダンシング・オールナイト
19.青春の影
20.恋
21.瑠璃色の地球
22.さよならの向う側

<UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤 GOODS>
・Ms.OOJA オリジナルアクリルスタンド
・Ms.ENKA オリジナルバンダナ

■ライブ情報
『Ms.OOJA 明治座公演2026』
会場:東京明治座
日時:2026年6月7日(日)
開場:17:00/開演:18:00

『Ms.OOJA OFFICIAL FANCLUB EVENT ~おじゃファミ会 vol.5~』
<全曲リクエストライブ>
来場の方々からMs.OOJAがステージ上で抽選をして、当選された方がMs.OOJAに歌って欲しい曲を(Ms.OOJA名義でリリースしている曲に限る。)リクエスト頂き、その場で歌う。おじゃファミ会Liveだけの特別企画です。

2025年12月7日(日) 愛知・THE BOTTOM LINE
2025年12/14日(日)神奈川・横浜赤レンガホール(横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール)
w/エアトリ presents 毎日がクリスマス 2025
2026年1月11日(日)北海道・ジャスマックプラザ ザナドゥ
2026年1月24日(日)福岡・ROOMS
2026年1月25日(日)大阪・UMEDA CLUB QUATTRO
詳細:https://msooja.jp

■関連リンク
Ms.OOJA オフィシャルHP https://msooja.jp
Ms.OOJA オフィシャルYouTube Channel https://www.youtube.com/user/MsOOJAChannel
Ms.OOJA オフィシャル X @msooja https://x.com/msooja
Ms.OOJA オフィシャルInstagram @msoojafaith https://www.instagram.com/msoojafaith/
Ms.OOJA オフィシャルLINE @msooja

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