Mr.Childrenの名曲が長く愛され続ける理由 桜井和寿、『日曜日の初耳学』で語る創作の真髄
3月22日、29日放送の『日曜日の初耳学』(TBS系)に、Mr.Childrenの桜井和寿が2週にわたって出演登場する。林修氏との対談という形で実現した今回の出演は、日本の音楽史を最前線で作り上げてきた表現者の脳内を覗き見るような、極めて濃密な時間になるだろう。
「Tomorrow never knows」「HERO」「Again」……数々の名曲秘話
予告にあるとおり、番組では不朽の名曲「Tomorrow never knows」の秘められた旧タイトルや名曲「HERO」誕生の裏側、そして最新曲「Again」の制作秘話が語られるという。デビューから30年余り、なぜMr.Childrenの音楽は、これほどまでに長く、そして深く、私たちの人生に寄り添い続けているのか。間もなくリリースされるニューアルバム『産声』へと続く彼らの歩みを、語り継がれるエピソードとともに紐解いてみたい。
1994年、空前のメガヒットを記録した「Tomorrow never knows」。名古屋のイベント出演に際しての滞在中に、わずか3時間ほどの驚異的な短時間で書き上げられたというこの曲だが、さらに興味深いのは、その仮タイトルが「金のシャチホコ」だったということ。名古屋での滞在中に生まれたその大名曲の原石が、最終的に「Tomorrow never knows」=“明日のことは誰にもわからない”というタイトルを冠され、楽曲は時代の代弁へと昇華された。バブル崩壊後の閉塞感漂う日本において、〈勝利も敗北もないまま孤独なレースは続いてく〉という一節は、あまりにも誠実な真実として人々の心に突き刺さったのだ。ユーモアすら感じさせる仮タイトルから、人々の孤独を救う名曲へと至るプロセスには、桜井和寿、そしてMr.Childrenという表現者が持つ日常を普遍へと変換する魔法が凝縮されている。
番組で深く掘り下げられるもう一つの楽曲が、2002年にリリースされた「HERO」だ。この曲の背景には、世界、そして桜井個人を襲った二つの大きな出来事が影を落としている。一つは、2001年に起こったアメリカ同時多発テロ事件。そしてもう一つは、桜井を襲った小脳梗塞という病だ。療養期間を経て、復帰第一弾シングルとして放たれた「HERO」で、桜井は〈残酷に過ぎる時間の中で/きっと十分に僕も大人になったんだ〉と歌い、そこには誰かのために生きる決意を固めた一人の人間の静かな、しかし揺るぎない覚悟が刻まれているように思う。自分を犠牲にしても守りたいものがあるという究極の利他的な愛。この愛の意味を知る強さこそが、Mr.Childrenが国民的バンドとして全世代に愛される決定的な理由となったのだと筆者は思う。
彼らの長いキャリアには、いくつものターニングポイントが存在する。たとえば、デビュー以来数多くのラブソングを書き続けてきた桜井が、個人的なテーマをメッセージ性豊かに歌詞へ落とし込み、ブレイクのきっかけにとなった「innocent World」(1994年)。自分以外の誰かのために音楽を奏でていく決意をみせた「優しい歌」(2001年)。あるいは、「足音 〜Be Strong」(2014年)に見られるバンドとしての肉体的な躍動――。これらに共通しているのは、完成された正解を決して押し付けないところだ。常に迷いや矛盾を抱え、泥臭い現実を直視した上で、それでもなお一歩先へと進む。このリアリティがあるからこそ、私たちは彼らの歌を人生の節目節目で手放すことができないのだ。
新曲「Again」デモ段階でのエピソード――『日曜日の初耳学』対談への期待
そして今、音楽シーンの熱い視線が注がれているのが、ニューアルバム『産声』、そして新曲「Again」だ。番組で明かされるデモ段階でのエピソードは、楽曲がまだ形を成す前の、生々しい衝動に触れる貴重な機会となるだろう。アルバムタイトルに冠された『産声』という言葉には、これまで数え切れないほどの脱皮を繰り返し、そのたびに新境地を切り拓いてきた彼らが、30年を超えた今、何を脱ぎ捨て、どのような姿で生まれ変わろうとしているのかを克明に表している。収録されている新曲「Again」というタイトルには、ドラマ『リブート』(TBS系)の書き下ろし主題歌であるとはいえ、何度でも更新できるという確信めいたバンドの青い熱量を感じずにはいられない。制作過程において、桜井がデモという原石に何を託したのか。そのエピソードは、単なる楽曲解説に留まらず、普遍的なクリエイティブ論としても響くはずだ。
彼らの音楽が長く愛される理由は、桜井和寿という歌い手が、常に“不完全な人間”を肯定し続けているからではないだろうか。彼の歌詞には、迷い、矛盾、苦しみ、醜さといった、人間が本来は隠しておきたい感情が赤裸々に描かれている。しかし、最後には必ず、それらすべてを包み込む大きな光がある。サウンド面においても、田原健一(Gt)、中川敬輔(Ba)、鈴木英哉(Dr)という不動の4人が鳴らす音は、技巧と信頼に満ちている。この4人でなければ鳴らせないMr.Childrenというグルーヴが、言葉に血を通わせているのだ。
数々の名曲を生み出してきた天才が、実は私たちと同じように――いや、それ以上に世界に対して敏感に共鳴し、悩み、それでもなお音楽という希望を信じようとしている姿を『日曜日の初耳学』での対談を通じて垣間見ることになりそうだ。Mr.Childrenの音楽は、これからも時代とともに形を変え、私たちの隣に在り続ける。彼らが“永遠のスタンダード”である理由をしっかり受け止めたい。


























