『Early Noise』選出、LAUSBUBとは何者? 音楽/カルチャーシーンから大注目、札幌から世界へ響く才気

『Early Noise』選出、LAUSBUBとは何者?

 今、2026年、世界規模でエレクトロニックミュージックシーンに新たな躍動が起きている。Yellow Magic Orchestra、TOWA TEI、電気グルーヴ、といったレジェンドたちが築いてきた国内の系譜、そして現在世界各国で進化を遂げるエレクトロニックミュージックシーンとも呼応し札幌からミュージックシーンを更新するような強烈な個性を放っているのが、Spotifyが選ぶ国内新進アーティスト『RADAR: Early Noise 2026』に選出されたLAUSBUBだ。

 LAUSBUBをよく知る人にとっては、タイミングも含めて必然を感じるかもしれない。本稿ではその活動を振り返り、LAUSBUBの現在地を見つめてみたい。

世界に届いた「Telefon」、ローカルを起点に広がった活動領域

 結成は北海道札幌市の高校の軽音楽部、“ニューウェーブ・テクノポップ・バンド”を自ら掲げたLAUSBUBは2020年3月より活動を開始した。最初にして最大のターニングポイントは2021年1月、LAUSBUBを“発見”したユーザーのXの投稿が大きなバズを巻き起こしたことだった。その中心にあったのが「Telefon」という楽曲だ。当時、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり宅録を中心に活動していたLAUSBUBは、それぞれの家で遠隔レコーディングを行いながら、アナログシンセサイザーやサンプリングを多用した曲作りを進めていたという。

 ジャーマンテクノやニューウェーブが意識された「Telefon」は、ドイツ語の歌い出しで始まる。直訳すると「LAUSBUBのMeiです」「LAUSBUBのRicoです」というリリックは、電話を題材にした楽曲ということを考慮すれば、「もしもし」という世界への応答を願うニュアンスもあるかもしれない。そんな楽曲は爆発的に注目を集め、SoundCloudの全世界ウィークリーチャートの1位を獲得。同年6月にデジタルシングルとしてリリースされた。

LAUSBUB - Telefon (Official Video)

 そうした本人たちの意図を大きく超えた状況は、一過性のものでは終わらなかった。2021年12月末には、『SCHOOL OF LOCK!』(TOKYO FM)内のコーナー「サカナLOCKS!」に出演し、サカナクションの山口一郎とラジオ共演。さらに2022年には8月と11月の二度にわたり細野晴臣がDJを務める『Daisy Holiday!』(Inter FM)に出演し、話題を呼んだ。

 ドイツ語で“いたずらっ子”を意味するLAUSBUBを活動名にしていることからも、彼女たちの根底にはドイツの音楽への憧憬のような感情がある。まだふたりが高校生だった頃に取材した際には、Kraftwerk、クラウス・シュルツェ、そしてとりわけDAF(Deutsch Amerikanische Freundschaft)への偏愛を語っていた。そうした憧れに近い感覚を抱くきっかけは、サウンドプロダクションの中核を担うRicoが中学生の頃に出会ったYellow Magic Orchestraだった。ボーカルのMeiは、Ricoを介してさまざまな音楽に出会うことになる。

LAUSBUB(撮影=キラ)
撮影=キラ
LAUSBUB(撮影=Kosuke Ito)
撮影=Kosuke Ito

 高校時代に音楽を通じて関係を深めていったふたりにとって、細野晴臣という音楽家は“音楽性の母体”を形作る重要な原体験となる存在だったことだろう。その後、LAUSBUBは細野晴臣の「Sports Men」をカバーし、自身のレーベル・極東テクノ(FAR EAST TECHNO)から、2022年11月にリリースした1st EP『M.I.D. The First Annual Report of LAUSBUB』に収録されるに至った。

Sports Men

 ここまで結成から3年足らず、しかもこの間、学生でありながら北海道のテレビCMの楽曲を2曲書き下ろし、スチャダラパーのBoseと「LAUSBUB×Bose」名義の楽曲「RAP'N'TECHNOTCHI」はバンダイ「たまごっち」のプロジェクト『TAMAGOTCHI REMIX』の第1弾楽曲となっている。LAUSBUBがここまで短期間で自分たちの音楽的探究に打ち込むだけでなく、社会や企業といった他者から求められる存在になっていったことは率直に言って驚異的だ。他人から見れば順風満帆な活動にも簡単ではない瞬間もきっとあっただろうが、RicoとMeiがふたりでその一つひとつを乗り越えてきた経験、プロセスそのものがLAUSBUBの音楽に息づいていることを想像する。

 活動4年目に突入すると、LAUSBUBの活動はもう一段ステージを進め、3月には札幌PARCOのリニューアルキャンペーン楽曲を手掛け、キービジュアルモデルも務めた。さらに8月には『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2023 in EZO』に出演、11月には『札幌国際芸術祭 2024』の書き下ろしテーマソング「Dancer in the Snow」を発表。

LAUSBUB - Dancer in the Snow (Official Video)

 2024年7月、LAUSBUBは1stアルバム『ROMP』をリリースする。“ニューウェーブ・テクノポップ・バンド”というアイデンティティと可能性を結実させた本作には、音楽に夢中になり始めた思春期の頃にはすでにストリーミングサービスが普及していた世代ならではの感覚を見出すことができる。

 現在と過去を問わず膨大な音楽作品を浴び、小さなひらめきと無数のアイデアを大切に拾い集めた先で自分たちの信じるものを形にした音楽——『ROMP』からは、そうしたふたりの無邪気な好奇心と真摯な音楽への愛情の両方が感じられる。SNS上で“発見”されて約3年半の濃密な時間と経験が丁寧に織り込まれ、実験的なマインドも忘れず、自らの可能性をさらに広げた1stアルバムと言えるだろう。しかし一方で、“あくまでもここは通過点”というような、すでに次を見据えた清々しさ、力みのない野心をリリース当時の取材で感じたことを思い出す。

 『ROMP』によってLAUSBUBは、自らの実力と可能性を音楽シーンに改めて証明した。翌2025年には『CIRCLE』(福岡)や『森、道、市場』(愛知)といった大型ローカルフェス、そして念願であったであろう『FUJI ROCK FESTIVAL』への出演を果たした。

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