ZOCX、それぞれが人生を賭けるグループへの想い 新体制1周年の手応えと新アルバム『六姫無双』を語る

ZOCX(ゾック)が、2019年の傑作「family name」のさらにその先の未来を見せようとしている――現在のZOCXには、そんな雰囲気がある。シンガーソングライターの大森靖子がプロデューサーとメンバーを兼任するアイドルグループZOCXが、新アルバム『六姫無双』を完成させた。そもそもは2018年にZOCとして始動し、2022年にMETAMUSE(メタミューズ)に改名、2023年にZOCに再改名した後、2025年よりZOCXに表記が変更されたグループだ。
現在のメンバーは、大森靖子、荼緒あいみ、戦慄かなの、千椿真夢、天國3ゅ姫、猫猫猫はうの6人。「すぐ崩壊する」と揶揄もされたZOCXだが、新体制はもうすぐ1周年。『六姫無双』について、そしてZOCXに賭ける思いについてメンバーに聞いた。(宗像明将)
「自分でも知らない自分を引き出してもらった」(戦慄)

ーーZOCXになってから、6人の声の重なり方がとても魅力的です。『六姫無双』のレコーディングでは、大森さんからはどんなリクエストや指導がありましたか?
戦慄かなの(以下、戦慄):私はピッチを外さないように歌おうとしすぎて、小さい声で歌いがちなんですけど、一回すごい声を出して、声がかすれたところがあって、それを「かっこいいね」って言ってくれて、実際に収録されていて、けっこうびっくりしました。自分が歌ったことのない発声法や声色を使ってもらったのがカルチャーショック。自分でも知らない自分を引き出してもらったと思います。
大森靖子(以下、大森):かなのはすごく真面目な性格だし、自分が描いたきれいな自分しか人に届けたくない部分もわかってるから、「ここを使ったら絶対嫌がるだろうな」ってこともわかっていたけど、かなのの声を聴いた瞬間に、エンジニアの人も、私もニヤってしました(笑)。「使いまーす」って言ったんですよ(笑)。「DON’T TRUST TEENAGER」のときですね。



ーー真夢さんはいかがでした?
千椿真夢(以下、千椿):「A INNOCENCE」で私が泣いてしまって。声がギリ出ないところがあって、すごい悔しくて泣いちゃったんです。靖子ちゃんが「一回、首回してみよう」とか「肩回してみよう」とか「手を広げて立ってみよう」とか、いろいろ言ってくれたら出たんですよ。「ここ出るんだ」って感動したのをすごい覚えてて嬉しかったです。
大森:みんな、緊張するから出ない。
戦慄:みんなスタジオを退出させられました。
猫猫猫はう(以下、猫はう):このアルバムから真夢さんのレコーディングのときは外に出なきゃいけないから。
千椿:すいません!(笑)
大森:でも、慣れっこなんで。真夢に対応できる自分になれてます。やっぱ〈最悪の経験した分 / キャパ広がって最高〉(『はーふついん♡うぉーず』)かなって(笑)。
「靖子ちゃんが1曲3時間くらいかけて私に指導してくれて」(荼緒)



ーーあいみさんはいかがでしたか?
荼緒あいみ(以下、荼緒):私はなんか「壱ノ型」だって(笑)。
大森:「鬼滅の刃」です。あいちゃお(荼緒)は壱ノ型しか使えないタイプだけど、その壱ノ型を使えるってことが大事なんです。
荼緒:靖子ちゃんが1曲3時間くらいかけて私に指導してくれて、しかも丁寧に私にわかるような優しい日本語で教えてくれて。教えてもらったことをそのままがんばってやったら、猫はうが「あいちゃお、壱ノ型の曲できたねー」って言ってくれて、すごく嬉しかったです。
大森:基本1人30分って決めてるんですよ。でも、あいちゃおは1人3時間だったので。
猫はう:その日、遅刻しちゃったんですけど、待ってる側になってた(笑)。
戦慄:私はそれより遅刻したんですけど、まだまだで(笑)。
大森:でも、あいちゃおは3時間と思ってなくて、それがありがたくて。傷ついちゃったり、泣いちゃったりする人もいるし、そういう人にはなるべく短く負担なく終わらせてあげようと思うんですけど、一生泣かずにやってくれるから、いくらでも追い込めるっていう(笑)。
ーー3ゅ姫さんはいかがでしたか?
天國3ゅ姫(以下、天國):まず歌い方から全部教えてもらったら、聞くごとに声の出し方とかが全部違うんです。だから「自分ってこういう歌い方ができるんだ」って初めて気づきました。
大森: WACK癖(天國3ゅ姫は豆柴の大群の元メンバー)が歌い方にあって、前にボーカルが倒れるんです。エモーショナルに聴こえるからすごくいいボーカルなんですけど、リズムも前に行くし、声も前に倒れてるから、マイクが一番拾える状態ではないんですよ。松隈(ケンタ)さんのサウンドには合ってるけど、オンのリズムでダンスミュージックに合わせるには不適切なので、すべて修正しました。
天國:大変だけど、靖子ちゃんはわかりやすく、できるまでやってくれるから、「もうやるしかないっ!」と思ってできました。
ーー猫はうさんはいかがでしたか?
猫はう:靖子ちゃんからめっちゃ褒められた感じがしました。しかも、ミトさん(クラムボン/『六姫無双』でアレンジを担当)には「猫はうさんは声楽をやってた方なの?」って聞かれて「ありがとうございます」って言ったのを覚えてますね(笑)。
大森:能力が高いうえに、「こういう歌い方をします」って固執してるんじゃなくて、どんどん新しく「こういうのどうですか」って大量に持ってきてくれるので、「じゃあ、こういうのもやってみてほしい」って。レスポンスも早いし、1行の質量が違う。ついつい歌割りを増やしちゃう(笑)。




















