majikoを突き動かす“ライブが楽しい!”という純粋な気持ち デビュー10周年ワンマンを彩った笑顔が示す現在地

majikoが12月14日、ワンマンライブ『majiko Presents“GOLDEN JUNKIE” Release Party“金光燦燦"』を渋谷WWW Xにて開催した。
今年デビュー10周年を迎え、新作EP『GOLDEN JUNKIE』を発表するなど充実した活動を展開。10周年を飾るワンマンライブでもmajikoは“とにかくライブが楽しい!”という雰囲気のなか、アーティストとしての現在地をはっきりと示してみせた。
開演30分前に渋谷WWW Xに入ると、すでにフロアには大勢の観客が。白人の男子、中国語を話しているグループから親子連れのお客さんもいて、majikoの存在が幅広い人に届いていることが伝わってくる。
そして17時ちょうどにライブがスタート。ダンサブルなSEとともにバンドマスターの木下哲(Gt)をはじめとするバンドメンバー、そして、majikoが笑顔で登場。うやうやしく挨拶した次の瞬間、〈ちょっと待って/笑っちゃうよパラノイア〉というフレーズを張りのある声で響かせ、オープニングの「パラノイア」へ。ジャズのテイストを反映したバンドグルーヴ、起伏に富んだメロディラインによって、観客が気持ちよさそうに身体を揺らし始める。

「ただいま、東京! 朝は雨が降ってたみたいですけど、晴れてよかった!」というMCに導かれたのはEP『GOLDEN JUNKIE』収録曲「なんで?」。「パラノイア」と同じく、ジャズ的な要素を取り入れたサウンドが気持ちいい。「今年は10周年、EP『GOLDEN JUNKIE』をリリースした年。majikoを求めていただいてありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えた後は、様々な時期の楽曲がラインナップされた。
シックなファンクネスをたたえた「交差点」は2022年の楽曲。「アイロニ」「グロウフライ」は“まじ娘”名義の1stアルバム『Contrast』の収録曲だ。“majikoの筋肉たちがスピーカーをハッキングして喋り出す”という演出を挟んで届けられたのは、2019年リリースのアルバム『寂しい人が一番偉いんだ』に収められた「エミリーと15の約束」。〈よく聞きなさい。〉と歌い出すと、フロアから歓声と拍手が沸き起こった。続いては同じアルバムの収録曲「ひび割れた世界」も。キャリアを行き来するようなセットリストを“今”のmajikoが表現するーーこれも今回のライブのポイントだったと思う。
ここでmajikoは「せっかくだから、お話したいです」といきなり客席フロアに降りる。バンドがおしゃれでソウルフルなサウンドを奏でながら、「こんにちは〜majikoでいちばん好きな曲はなんですか?」とオートチューンをかけたマイクでお客さんと会話。majikoらしい、ユーモアに溢れたコミュニケーションだ。
ライブ中盤はEP『GOLDEN JUNKIE』の楽曲を中心に構成。まずはダークファンタジー的な「ピエロ」。背景には楽曲のムードを際立たせるアニメーションが投影され、しっかりと世界観を伝えていた。ヘビィな4つ打ちのビートが響き渡った「Princess」の後は、「NA TTE NAI」。トラップ系の派生ジャンル“フォンク”を取り入れた楽曲だが、音のひび割れ感、中毒性のあるメロディによって独自のダンストラックへと結びつけている。


個人的にもっともインパクトを感じたのは「ロカ」だった。中国でのフェスを経験し、“4つ打ちと声を活かした曲が必要だ”という意図のもとで制作された楽曲なのだが、その目論見通り、ライブでの威力は抜群。自由に飛び跳ね、踊りまくる観客の姿も印象的だった。
ライブアンセムの一つである「ワンダーランド」からは、ダークかつポップなナンバーを連発。フロアの熱気をさらに引き上げていく。驚くべきはmajikoのフィジカルの強さ。歌のスタミナも素晴らしく、ライブが進むにつれて声のパワーはさらにアップ。とにかく“ライブが楽しい!”という気分が溢れているのが最高だ。
インタビューなどで本人が語っているように、歌い手としてデビューした頃は人見知りで、ライブにもそこまで積極的ではなかったというmajiko。その後、様々なアーティストやミュージシャンと出会い、場数を踏むことで“ライブこそが自分の居場所”と心境が変化してきた。その根底にあるのはおそらく“この場所で私は受け入れられている”という自己肯定感だろう。


「ありがとう、最高だ……。これだけの人が私を待っててくれて、どんなときもmajikoがんばれ! とか、心はいつもそばにいるよ! とか、ひとつひとつの言葉が励ましといいますか、原動力といいますか。みなさんには多大なる感謝しかありません。また新しい10年、20年、30年、40年、50年、60年、70年、80年、90年、10年……それまでみんな生きてろよな! 月にでも行く勢いで、これかもmajikoをお願いします!」
そんな言葉から始まったのは「Q」。未来への希望を込めた〈「久しぶり、また会えた」って笑いたい〉というフレーズが響き渡り、ライブ本編は終了した。
鳴り止まない手拍子に導かれ、majikoとバンドメンバーが再びステージへ。
〈ねぇ、もしも全て投げ捨てられたら〉というアカペラで始まったのは、「心做し」。彼女の存在を世に知らしめたきっかけの歌だ。10年前より確実に向上した表現力、そして、歌を支えるバンドのエモーショナルな演奏にも心を打たれた。さらにEP『GOLDEN JUNKIE』から「Welcome to Hell」。ソウル〜R&Bのテイストを含んだサウンドと“酒”をテーマにした歌詞が一つになったこの曲もまた、10周年を迎えた今だから生み出せた楽曲だろう。



「また絶対会えるということは言っておく! それまでお酒でも飲んで待っててくれ」というMCに導かれたのは「声」。機材トラブルで演奏が中断するも、「トラブルだって! 楽しいなー! トラブル大好き!」と盛り上げてしまうmajiko。演奏が再開され、〈君のその悲しみ/輝いていたよ〉と歌うときの笑顔からも、今の彼女の充実が伝わってきた。
ここで再び“筋肉たち”の声。「まだ歌ってない曲あるよな」「もう少し付き合ってね」「最後の力を振り絞ろう」というトークに導かれ、majikoが再度ステージへ。「この曲を忘れちゃいけないよな!」と披露されたのは、ホリエアツシの提供曲「アマデウス」。爆発的な盛り上がりのなか、ライブはエンディングを迎えた。
代表曲を網羅したセットリスト、心身の充実ぶりを感じさせるパフォーマンスを見せつけたmajiko。ネットカルチャー、バンドシーン、J-POPを行き来する彼女のスタンスは、ここからさらなる価値を発揮するはずだ。































