RAISE A SUILENとトゲナシトゲアリが“三次元”で激突　音で戦い、熱狂へと達した奇跡の対バンライブ

　インターバルを挟んで、続いてステージに登場したのはRASの5人。黒を基調にした衣装に身を包んだ彼女たちは、「Beautiful Birthday」にて自身のライブパートを開始した。夏芽（Dr.／マスキング役）が叩き出すタイトなビートに乗せて、小原莉子（Gt.／ロック役）が低音を効かせたヘヴィなギターリフを響かせる中、倉知玲鳳（Key.／パレオ役）は美しいピアノの音色と軽やかなプレイでバンドをリードし、Raychell（Ba./Vo.／レイヤ役）は極太ベースサウンドを奏でながら艶やかな歌声を客席に届けていく。たった1曲で場の空気を掌握するその様は、まさに王者の風格と言っても過言ではないだろう。

　続く「ʻFIGHTʼ ADDICT」では、Raychellの〈ゼロからイチヘ〉の歌い出しに紡木吏佐（DJ／チュチュ役）によるラップが重なることで、〈ギアをさらに上げて〉の歌詞通りバンドのテンションもさらに高まっていく。ヘヴィさを軸にしながらも、変幻自在なアンサンブルにRaychellと紡木という異なる個性が絡み合うボーカルワークで、トゲトゲファンも見事に夢中にさせてみせた。

　紡木が「トゲトゲさんとの対バン、とっても心待ちにしておりました。ここからはRASパート。皆さん、声を出す準備はできてますか？ 踊る準備はできてますか？」とオーディエンスを煽ると、両手を交互に上げる振りで一体感を作る「V.I.P MONSTER」へ突入。振り付けだけでなく、シンガロングでも高揚感を高めると、曲中盤のブレイクダウンパートでは会場が一丸となってヘドバンする一幕も。かと思えば、紡木のDJプレイから始まる「EXPOSE ʻBurn out!!!ʼ」では会場中に地鳴りのようなコールが鳴り響き、この日何度目かのクライマックスを迎える。

　ここまでの盛り上がりを見せながらも、Raychellは「もっともっと全力でかかってきてくれますか？」とまだまだ物足りない様子。すると、紡木の繰り出すスクラッチに導かれるように、夏芽による激しいドラムフィルを合図に「JUST THE WAY I AM」がスタート。曲中、紡木は後方のDJセットからステージ前方へと移動し、リズミカルなラップで観る者を大いに楽しませた。

　各メンバーのソロプレイをフィーチャーしたダンサブルなインストから「HOWLING AMBITION」へ繋げると、アンセミックなキラーチューンの登場に観客も大興奮。そして、豪快なギターリフとダイナミックなドラムが生み出す高速ビートとともに「OUTSIDER RODEO」が始まると、その場にいる者全員が激しくヘドバン。サビでは観客がペンライトの代わりにタオルを手にし、頭上でぐるぐると回して一体感を高めてみせる。そのカオスな様子は、クライマックスと呼ぶに相応しいものがあった。

　ドラムンベースやEDMテイストを取り入れたリミックストラックで場を繋ぐと、「SOUL SOLDIER」にてライブ終盤戦へ突入。小原が奏でる7弦ギターからは重低音が強調されたサウンドが響き渡り、その上でRaychellと紡木という異なる個性のボーカルが絡み合うことでRASならではの絶妙なハーモニーが紡がれていく。そして、夏芽がタイトなビートを刻む中、各パートが徐々に加わってひとつの“音の塊”を生み出すと、そこにバンドとオーディエンスによるシンガロングも追加され、より壮大で強烈な“音の塊”を作り上げることに。その“音の塊”は次第に「DRIVE US CRAZY」へと変化し、Raychellのドスの効いたボーカルも相まって、「これぞロックバンドのライブ」と言いたくなる迫力満載のステージが展開されていく。

　この熱気をさらに沸点高く昇華させるのが、RASのライブには欠かせないキラーチューン「HELL! or HELL?」。Raychellの「お前らの全力みせてくれ！ さあ……地獄へ行こうか。かかってこい！」を合図に、フロアは誰がどのバンドのファンなんてことお構いなしに爆発的な盛り上がりを見せるなど、RASらしいやり方で自身のライブを締め括った。

　両バンドのステージは終了したものの、ライブはこれだけでは終わらない。2つのドラムセット、2つのキーボードとDJセットがステージ上にセッティングされると、観客は次に何が始まるのか容易に予想できたことだろう。ライブTシャツに着替えたRASの面々が再び姿を現すと、ステージにトゲトゲの理名を呼び込み、「R·I·O·T」にてスペシャルコラボを展開。Raychellと理名は時に歌い分け、時にはユニゾンでボーカルを届けるなど、2者の魅力を最良の形で混ぜ合わせていく。

　コラボを終え、ステージ上にRaychellと理名が残ると「めちゃくちゃ楽しかった！」と互いに連呼。続けざまに理名が「せっかくなので、私たちの曲も1曲」と口にし、今度はトゲトゲの面々にRaychellをフィーチャーした形で「爆ぜて咲く」を披露。ハンドマイクを手にした2人がフロントに立ち、交互に歌声を響かせると、会場中からこの日一番の歓声が湧き起こる。曲間では両者が激しくジャンプする場面もあり、この奇跡の瞬間を心置きなく楽しんでいることがストレートに伝わってきた。

　こうして約3時間におよぶ夢の競演は、大成功のうちに終了。理名が「RASさんという大先輩と素敵な仲間に恵まれて、私はトゲナシトゲアリのボーカルとしてこのステージに立つことができて、本当に幸せな1日でした。今日の経験をバネに、また一歩一歩進んでいきます！」と感謝を口にすると、Raychellも「今日はきっとRASの曲やトゲトゲの曲を知らなかった人もいるかもしれない。でも、これをきっかけに知って……お互いの曲、最高だったでしょ？ また必ずやりましょう！」と次の対バンへの意気込みを語って、ステージをあとにした。

　二次元の世界ではなかなか実現できなかった異なるコンテンツのコラボも、こうして三次元で交わり合うことで夢のような「奇跡の瞬間」を作り上げることができる。それをこの日、RASとトゲトゲは証明してみせた。これを機に、2026年は両者がどんな「奇跡の瞬間」を生み出していくのか。期待に胸を膨らませながら、次の軌跡を待つことにしよう。

※1：https://realsound.jp/2025/02/post-1920024.html
※2：https://realsound.jp/2025/10/post-2179794.html

＜セットリスト＞
トゲナシトゲアリ
01. 声なき魚
02. 渇く、憂う
03. 蝶に結いた赤い糸
04. 空の箱
05. 空白とカタルシス
06. 闇に溶けてく
07. 視界の隅 朽ちる音
08. 名もなき何もかも
09. もう何もいらない未来
10. 命をくれよ
11. arrow
12. 荊の薔薇
13. 雑踏、僕らの街
14. 最期の禱り
15. 爆ぜて咲く
16. 運命の華

RAISE A SUILEN
01. Beautiful Birthday
02. ʻFIGHTʼ ADDICT
03. V.I.P MONSTER
04. EXPOSE ʻBurn out!!!ʼ
-DJ play-
05. JUST THE WAY I AM
-Solo session-
06. HOWLING AMBITION
07. OUTSIDER RODEO
-"REVELATION" megamix show-
08. SOUL SOLDIER
-Inst session-
09. DRIVE US CRAZY
10. HELL! or HELL?

RAISE A SUILEN×井芹仁菜 from トゲナシトゲアリ
EN1. R·I·O·T

トゲナシトゲアリ×レイヤ from RAISE A SUILEN
EN2. 爆ぜて咲く