久保史緒里がアイドル人生最後の日に刻んだ“乃木坂46”という青春ーー愛溢れた卒業コンサートを振り返る

久保史緒里、乃木坂46愛溢れた卒コンレポ

 久保史緒里にとって、子供の頃に出会い、憧れ、そして自身もメンバーの一員となりアイドルとして約9年にわたり活躍した乃木坂46という存在は、24年におよぶ彼女の人生にとって正しく“青春”そのものだった……11月26日、27日に神奈川・横浜アリーナで開催された『乃木坂46 久保史緒里 卒業コンサート』を観て、そう強く実感させられた。

 2016年9月4日に乃木坂46「3期生オーディション」に合格し、同年12月10日に日本武道館で行われた『乃木坂46 3期生「お見立て会」』にてファンにお披露目された久保だが、彼女が「乃木坂46に入りたい」という思いをより強めたきっかけが、同年4月24日に山形で開催された『乃木坂46 アンダーライブ全国ツアー2016 ~東北シリーズ~』を観覧したことだった。『乃木坂46 久保史緒里 卒業コンサート』DAY1冒頭ではそんな彼女の歴史を振り返るように、同日から2016年4月24日へと時間がさかのぼっていく。

『乃木坂46 久保史緒里 卒業コンサート』

“乃木坂46の久保史緒里”としてのこだわり、グループに対する愛

 オープニングこそ和傘や扇子などを手にしたメンバーに導かれ、人力車に乗った狐面姿の久保がアリーナ後方から登場する、“狐の嫁入り”を思わせる演出が用意されたが、ライブ本編は「不等号」からスタートするという、久保にとって大きなターニングポイントとなった『乃木坂46 アンダーライブ全国ツアー2016 ~東北シリーズ~』の幕開けと同じ選曲。そこから「生まれたままで」「13日の金曜日」「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」といった初期のアンダー楽曲……久保がいちファンとして乃木坂46を応援していた時代の名曲たちが連発される。

『乃木坂46 久保史緒里 卒業コンサート』

『乃木坂46 久保史緒里 卒業コンサート』

『乃木坂46 久保史緒里 卒業コンサート』

 以降も4〜6期生の期別曲に久保が加わった“期別ブロック”や、思い入れの強いユニット曲がズラリと並ぶ“ユニットブロック”(ここでは大園桃子、久保、山下美月、与田祐希から成るユニット“いもうと坂”の楽曲「言霊砲」も披露されたが、ついに“いもうと坂”も最後のひとりとなってしまったかと、時の流れを強く実感させられた)、ほかのメンバーがセンターを務め自身はオリジナルポジションに立つ“他メンバーセンター楽曲ブロック”など、彼女のこだわりが随所に感じられる選曲/構成でライブは進行。

『乃木坂46 久保史緒里 卒業コンサート』

『乃木坂46 久保史緒里 卒業コンサート』

『乃木坂46 久保史緒里 卒業コンサート』

 また、同日にリリースされたばかりの40thシングル表題曲「ビリヤニ」のライブ初披露や、アンコールでは自身がリスペクトする先輩・生田絵梨花のソロ曲「歳月の轍」をひとりで歌唱する場面も用意され、どこか「乃木坂46を応援していた頃の久保史緒里が、ファンとして観たかったセットリスト」のようにも感じられる、久保の“乃木坂愛”をじっくり堪能できる1日となった。

『乃木坂46 久保史緒里 卒業コンサート』

『乃木坂46 久保史緒里 卒業コンサート』

『乃木坂46 久保史緒里 卒業コンサート』

 続くDAY2は前日とまったく異なる演出が用意され、気付くと「シンクロニシティ」以外はまったく被りのないセットリストに驚愕することに。しかも、DAY1の「シンクロニシティ」では同期の梅澤美波がセンターに立ち、久保は初めて選抜入りした際のオリジナルポジションに徹し、DAY2では自身がセンターを務めるという徹底ぶり。2日間に披露されたすべての楽曲に出演するというある種の苦行とも言える演出に、「何も最後の最後に、ここまで自分に鞭打たなくてもいいのに」と心配してしまうほどだった。しかし、このこだわりこそが“乃木坂46の久保史緒里”であり、彼女のグループに対する愛情の表れであり、約9年間にわたる彼女のアイドル人生に対する“けじめ”だったのだろう。そんな「静かな中にもメラメラと燃え上がる青い炎」のような彼女の熱は、公演中も至る場面から感じ取ることができた。

 「不眠症」からスタートしたDAY2も「何度目の青空か?」「走れ!Bicycle」「太陽ノック」と初期のヒットシングルが多数用意されたほか、「錆びたコンパス」という意外な選曲もあり、最後に彼女が歌っておきたい、パフォーマンスしておきたい楽曲が詰め込まれているのだなと実感させられる。また、DAY2の公演本編ではMCパートが排除され、着替えのための転換にはこの日のためだけに制作されたドラマ映像が複数用意されていた。『走れメロス』を朗読する映像、学校での合唱コンクールを題材にしたショートドラマ、さらには久保と縁の深い平祐奈や古田新太が特別出演したショートドラマと、どれもクオリティの高い映像ばかりで、ここでしか観られないものだと思うと「なんて贅沢なんだ」とため息が溢れてしまう。

『乃木坂46 久保史緒里 卒業コンサート』

 ライブ本編に話題を戻そう。「Never say never」から始まったブロックでは、久保がこれまでに参加したユニット曲の数々が披露されていく。3期生5人で楽しげに歌う「平行線」や、林瑠奈や松尾美佑と歌唱した「雲になればいい」(本来は久保同様に卒業を控えた松尾と、体調不良で休演となってしまった矢久保美緒の3人で歌う予定だった。ここにも彼女のグループ愛が表れている)、現時点でグループに在籍する“新・華の2001年組”(久保、遠藤さくら、賀喜遥香、金川紗耶、佐藤璃果)で送る「価値あるもの」と、どの曲もファンにとっては思い出深いものだったのではないだろうか。

 3〜6期生をシャッフルした編成で進行する“Wセンター楽曲ブロック”では、久保が吉田綾乃クリスティーとともに中心に立つ「今、話したい誰かがいる」、歌唱力に定評のある林とのWセンターによる「嫉妬の権利」、これからのグループを牽引していくであろう井上和との「ありがちな恋愛」と、選抜/アンダー問わず人気の楽曲が並ぶ。そんな中、シングル表題曲で自身が唯一(W)センターを務めた「人は夢を二度見る」では、卒業した山下美月の代わりを入れることなく久保ひとりでセンターを担うという彼女なりのこだわりも透けて見えた。

 また、“アンダーライブブロック”では煽りを豊富に取り入れた「狼に口笛を」、柴田柚菜と林の3人で美しいハーモニーを響かせる「私のために 誰かのために」、鬼気迫る表情を浮かべながらもどこか楽しんでいるようにも見える「日常」(この曲は筆者との過去のインタビューで、久保自身が「忘れられないライブ」として挙げた、彼女が唯一参加したアンダーライブ『乃木坂46 アンダーライブ全国ツアー2018 ~関東シリーズ~』時のアンダー楽曲だ)と、ここにも久保らしさと彼女の乃木坂愛がたっぷり凝縮されていた。

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