久保史緒里が築いた“深夜の居場所”はなぜ井上和へ託されたのか 『乃木坂46ANN』という共に歩む時間
5期生の井上和が『乃木坂46のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)の新パーソナリティを務めることが発表された。3年9カ月にわたり深夜ラジオの顔として番組を支えてきた久保史緒里から、次世代の中心を担う井上へ。番組のパーソナリティの交代が発表されたことを受け、ひとつの時代が終わり、また次が始まるという感覚を抱いたファンも多かったのではないだろうか。
初代パーソナリティ 新内眞衣の功績、久保史緒里の存在が“特別”な理由
『乃木坂46のオールナイトニッポン』が長く信頼されてきた背景を振り返ると、初代パーソナリティの新内眞衣の存在なしに、その歴史は語れない。アイドル活動と会社勤めを並行するという独自の立ち位置から、日常感や社会との距離感をそのまま番組に持ち込み、“深夜ラジオのリアリティ”をグループのなかに作り上げた人物が、新内だった。
このあと25:00から生放送!
ニッポン放送「乃木坂46のオールナイトニッポン(#乃木坂46ANN)」に、新内眞衣&高校を卒業してオールナイトニッポンに出演することができるようになった久保史緒里が登場します!皆さま、ぜひお聴きください!#乃木坂46 pic.twitter.com/EeJLCYh5cW
— 乃木坂46 (@nogizaka46) April 1, 2020
筆者のなかでも特に心に残っているのが、架空の楽天ファンの少女“ワシオちゃん”だ。久保とリスナーが番組内で少しずつ設定を積み重ね、いつの間にか本当に存在しているかのような人気キャラクターになっていったワシオちゃん。久保がずっと「(ワシオちゃんを)漫画化したい」と夢を語り続けていた企画は、リスナーの後押しもあって『野球少女鷲尾@comic鷲尾さんは楽天的でいたい』(スクウェア・エニックス)としてついに実現することになる。2年近くかけて育てたアイデアが、深夜ラジオから形になる感動的な瞬間だった。
もうひとつ象徴的なのが、“乃木坂野球部”をめぐるエピソードだ。番組でも、久保がずっと話題にしてきた乃木坂野球部。これを盛り上げたいと、4期生の黒見明香や柴田柚菜がメールを送ってきた際に「めっちゃ感動するんだけど……」と声を震わせながら、久保が思わず涙をこぼしてしまうという場面があった。その姿には、久保が『乃木坂46のオールナイトニッポン』という場所で後輩の気持ちや夢までも受け止めていたことがはっきり表れていた。当時ラジオを聴いていた人も、きっとあの涙の温度を忘れられないはずだ。
久保が残したものは、ただ優しいだけの“包容力”ではない。『乃木坂46のオールナイトニッポン』とはリスナーと一緒に作る場所だという前提をそのまま形にして、少し不思議で、温かい物語を本当に形にしたところに、彼女の特別さがある。
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ひとりで話しているように見えて、実際はリスナーや後輩とともに育てた番組。それが終わったあとも記憶に残るのは、「番組を一緒に作ってきた」という感覚がリスナーにもあるからだろう。約3年9カ月という長い期間、彼女がグループの深夜の顔でいられた理由は、そうした関係性の積み重ねにこそある。























