171のオルタナロックが2025年に鳴る意味――ライブハウス発の“リアル”が響く理由を『HELLO!』から読む

尾崎世界観、Fukase、川谷絵音、谷口鮪らの支持も
「kemonomichi」は、171のざらついた“間”を活かしたシューゲイザーだ。椎名林檎『絶頂集』で聴けるような、その場の空気ごと封じ込めた生々しさがある。他者から与えられる自己像ではなく、歩いた軌跡そのものが証明になる。どこにも居場所がない日々も、意味の見えない苦しみも、いつか自分だけの地図になる。アルバムジャケットの国道171号の風景と呼応するように、この曲は171というバンドで生きるカナ自身の歩みとも重なって聴こえる。
「足音」は、171というバンドのリアルを象徴する一曲だ。オルタナとヘヴィロックの交配種的なサウンド。きれいにまとまらない内側の声がそのまま吐き出されている。シンプルに、めちゃめちゃカッコいい。
90年代が後半に向かっていく中で、日本のオルタナティブロックは一つの沸点を迎えていた。THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、くるり、スーパーカー、NUMBER GIRL。彼らがライブハウスから飛び出してシーンを塗り替えていく瞬間があった。あれから四半世紀以上が経ち、あの熱を懐かしむ気持ちがないと言えば嘘になる。けれど171の音を聴いて感じたのは、懐かしさとは違う何か、だ。この音は、過去を参照しながらも、確実に“いま”を鳴らしている。それは、どの時代に鳴り響いていても、リスナーのど真ん中に響く求心力を持った音だ。間違いない。
本稿の依頼を受けた際の編集者からのメールには、尾崎世界観、Fukase、川谷絵音、谷口鮪といったミュージシャンたちが171を支持、あるいはポジティブな反応をしている、とあった。なるほど、彼らは皆、2000年代のライブハウスの様相をよく知っているはずだ。“あの空気”を知っている者だけがわかる匂いが、171の音にはある。それは懐かしさへの共感ではなく、この音が2025年に鳴っているという事実への確信だ。先達たちが切り拓いた道の先に、今また新しいバンドが立っている。その連なりを感じ取っているからこそ、彼らは171を推すのだと思う。
バチくそイケてる。 https://t.co/TazMfj6hvl
— Fukase(SEKAINOOWARI) (@fromsekaowa) June 26, 2024
現在の日本ではオルタナティブロックの再燃が起きているという見方もある。サブスクで誰もが世界中の音楽にアクセスでき、SNSでバズれば一夜にして知名度を得られる時代。インディーズでも十分やれる環境の中で、171はあえてメジャーという道を選んだ。ライブハウスで育った音を、その体温を損なわないまま、より広い場所へ届けようとしている。
まぁ、でも、インディーだろうが、メジャーであろうが、重たい防音扉の向こうで、100Wのマーシャルと、SM58のウィンドスクリーンが、ロックバンドの帰りを待っている。171はいつだってその扉を開け続けるだろう。

■リリース情報
『HELLO!』
2025年12月3日(水)リリース
配信リンク:https://171.lnk.to/HELLO
<収録曲>
1. LOST IN THE ライブハウス
2. グレモンハンドル
3. Sunday Dreamers
4. SUPERSONIC
5. 壊れたギター
6. My First Car
7. 快速急行
8. 足音
9. plastic world
10. kemonomichi
11. ヒットソングシーズン(HELLO! Version)
12. LOOP
■ツアー情報
『171 メジャーデビューツアー“HELLO!”』<対バン編>
12月6日(土) 神奈川・F.A.D YOKOHAMA
OPEN17:30 START18:00
GUEST:テレビ大陸音頭
12月7日(日) 千葉・千葉LOOK
OPEN17:30 START18:00
GUEST:トップシークレットマン
1月10日(土) 宮城・LIVE HOUSE enn 2 nd
OPEN18:30 START19:00
GUEST:THIS IS JAPAN
1月12日(月祝)栃木・HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-2
OPEN17:30 START18:00
GUEST:THIS IS JAPAN
1月17日(土) 石川・vanvan V4
OPEN17:30 START18:00
GUEST:時速36km
1月30日(金)広島・ALMIGHTY
OPEN18:30 START19:00
GUEST:板歯目
1月31日(土)福岡・LIVE HOUSE Queblick
OPEN17:30 START18:00
GUEST:板歯目
2月6日(金)京都・KYOTO MUSE
OPEN18:30 START19:00
GUEST:PK shampoo
2月7日(土)愛知・CLUB UPSET
OPEN17:30 START18:00
GUEST:PK shampoo
2月13日(金)香川・DIME
OPEN18:30 START19:00
GUEST:ドミコ
『171 メジャーデビューツアー“HELLO!”』<ワンマン編>
2月23日(月祝)
OPEN17:00 START18:00
東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO
2月28日(土)
OPEN17:00 START18:00
大阪・UMEDA CLUB QUATTRO
■関連リンク
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