堂本剛・堂本光一の2人だからできること DOMOTOとしての第一歩が「愛のかたまり」である意味

 12月3日、DOMOTOが1stデジタルシングル『愛のかたまり』をリリースした。「愛のかたまり」は、2001年に発表した13thシングル『Hey! みんな元気かい?』のカップリングとして収録されたナンバー。KinKi KidsからDOMOTOへ。その大きな転換点に、1st デジタルシングルとしてこの楽曲を新録してリリースしたのは、ふたりにとっても、そして長年支えてきたファンにとっても特別な1曲だからにほかならない。

当時22歳だったふたりが貫き抜いた、Kinki Kidsらしさ

KinKi Kids「愛のかたまり」【from KinKi Kids Concert 2023-2024 ~Promise Place~】

 KinKi Kids名義として最後の作品となったベストアルバム『39 Very much』では、ファン投票で圧倒的1位を獲得。2位に倍以上の差をつける結果となり、改めて“不動の人気曲”であることが証明された。3月21日放送のラジオ『DOMOTOのどんなもんヤ!』(文化放送/以下、『どんなもんヤ!』)で堂本光一は「そんなに好きなんですね、この曲ね、みんなね(笑)。なんでやろうか〜」と冗談めかしていたが、理由を一番よく知っているのは、きっと彼ら自身だ。

 なにより、この曲は作曲・堂本光一、作詞・堂本剛による共作だという点が大きい。昨今ではメンバーが自ら楽曲制作に携わることは珍しくないが、当時はアイドルとは“プロデュースされる存在”という固定観念がまだ色濃く残っていた時代。そんななかでの挑戦は、ふたりの意志そのものだった。

 マイナー調を得意とし、独自の陰影を放っていた当時のKinKi Kids。自分たちらしさを追求したいという想いが強かった一方、事務所から提案されたのは真心ブラザーズ・YO-KING作詞曲の「Hey! みんな元気かい?」。堂本光一は、亀梨和也のYouTubeチャンネルの動画に出演した際、若さゆえに技術が追いつかず、自分たちの曲にして歌いこなせなかった感覚を抱いていたことを明かしている。だからこそ、「KinKi Kidsらしい曲を作ろう」という反骨精神で生まれたのが「愛のかたまり」だった(※1)。

 さらに堂本光一は、当時流行していたカラオケで歌われやすいよう“ハモりやすさ”にもこだわったという。その狙いは見事に的中し、ファンやリスナーはもちろん、後輩たちにも数えきれないほど歌い継がれてきた。カラオケで“ふたりで歌う”というシチュエーションには多様な物語が宿る。恋人同士が寄り添うように歌うことも、気心の知れた友と笑い合いながら歌うことも、大きな夢を追う同志が背中を預け合いながら歌うこともできる。そして、そのどれもがDOMOTOという“ふたり”の関係性のどこかに重なっていくのだ。

歌うのは、男女の恋愛にとどまらない“愛”の奥行き

 歌詞としては恋愛を描いた曲である。しかし、その奥行きは恋愛にとどまらない。改名発表後、初の東京ドーム公演では〈変わっていく あなたの姿/どんな形よりも愛しい/この冬も越えて/もっと素敵になってね〉という歌詞を、〈変わっていく 僕らの愛は/強く光り輝く/この冬を越えて/もっと素敵になるから〉と変え、「KinKi KidsからDOMOTOへと表札が変わってもファンへの愛は変わらない」という想いを、まっすぐに届けてみせた。

 歌詞を変更しようと提案したのは、堂本光一だったと1月17日放送回のラジオ『どんなもんヤ!』で堂本剛が明かしている。それはバンドリハーサルのタイミング。「彼の相談はいつも急なんで、『えー!?』ってなるんですけど。本番までそんな時間なくて」と焦りながらも、「例えば、どういう歌詞がいいと思ってるの?」「こんなふうなイメージ」「わかった、じゃあ本番前日ぐらいまでには考える」といったやり取りで完成したというから驚かされる。

 かつて、音楽番組『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系/現『EIGHT-JAM』)で、ふたりが合作するときには堂本光一は堂本剛ならどう歌うかを想像しながら楽曲を作り、堂本剛は堂本光一に歌ってほしい言葉を紡ぐという話があった。このときも、そんな関係性の延長線上にある出来事だったように思う。

 ふたりは、世間で言われがちな“いつも一緒の仲良しコンビ”とは少し違う部分もある。けれど、ラジオやMCでは息もつかせぬテンポで会話が転がり、ときには観客を置いてけぼりにしながらも、ふたりだけで笑い合う。その関係性は、誰にも真似できないふたりだけの距離感だ。そして、その距離感こそが、彼らのクリエイティブを何度も前へ進めてきた。

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