冨岡 愛が届ける“永遠のテーマ=愛” 底なしのポテンシャルを発揮した自身初のアジアツアーファイナル

冨岡 愛、初のアジアツアー最終公演レポ

 冨岡 愛が自身初となるアジアツアー『TOMIOKA AI ASIA TOUR 2025 “愛's CREAM”』の最終公演をKT Zepp Yokohamaで開催した。

 ライブ当日の11月12日は、1stフルアルバム『愛'sCREAM』のリリース日。アジア6カ国でSpotifyのバイラルチャート入りを果たした「グッバイバイ」、SNS総再生数8億回を突破した人気曲「恋する惑星「アナタ」」を含む本作の楽曲を中心に、彼女は等身大にして規格外のパフォーマンスをしっかりと見せてくれた。

冨岡 愛 ライブ写真

 ステージの上にはソファやランプが置かれ、まるでリビングルームのよう。開演前の会場にはテイラー・スウィフトやgirl in redの曲が流れ、ゆったりとした雰囲気が広がっている。そして、ついにライブがスタート。バンドメンバーがインストを演奏した後、冨岡がステージへ。まずは1stシングル曲「あなたは懐メロ」をアコースティックギターを弾きながら披露。さらにエレキギターに持ち替え、“I wanna”と“愛罠”をダブルミーニングさせた「アイワナ」を歌唱。洋楽のインディーポップの潮流を感じさせる「愛 need your love」はハンドマイクでパフォーマンスし、観客も気持ちよさそうに身体を揺らし始める。観客の男女比はおそらく半々くらい。年齢層も幅広く、彼女の楽曲が多岐にわたるリスナーに届いていることがわかる。

 ドリームポップ的な切ないメロディ、“あなた”は“あの子”と一緒に“わたし”との思い出の場所を巡っているという歌詞が響き合う「デジャヴ」でどこかアンニュイな雰囲気のボーカルを聴かせ、最初のMCへ。「ツアーファイナル、あっという間です! 記念すべき日になると思うので、今日は会いに来てくれてありがとうございます。叫ぶなり、踊るなり、歌うなり、最後まで楽しんでもらえたらと思います」。友達とおしゃべりしているような、リラックスした佇まいも印象的だった。

冨岡 愛 ライブ写真

 心地よいグルーヴと憂いを帯びた旋律が1つになった「delulu」の後は、冨岡のハイブリッドかつ多彩な音楽性をダイレクトに体感できる場面が続いた。まず心に残ったのは「劣り」。プリセットされたように進んでいく日々や人生に対して、“これでいいの?”と疑問を抱くことは誰にでもあるはず。そんな状況を真っ直ぐに見つめながら彼女は、〈劣っても でも踊りたいよ 私だけのダンスを〉と心地よいフロウに乗せて歌う。ネガティブがポジティブにひっくり返る感覚がこの曲のよさだが、ライブで聴くとその効果がさらに強く感じられる。

冨岡 愛 ライブ写真

 バンドメンバーによるセッション、着替えを挟んで届けられたのは「かろやかに」。軽快なビートと〈かろやかにparty party party〉というラインによって会場の雰囲気は一変。さらに葛藤や不安を抱えながらも、未来への一歩を刻む決意を綴った「beat up」、ずっとそばにいてくれると信じていた人への想いを切なく歌い上げる「missing you」へ。楽曲を重ねるたびに、想起される情景やエモーションが変化する。そのカラフルな音楽のレイヤーもまた、彼女のライブの魅力だ。

 「皆さん、今日はどこから来ましたか?」と問いかけると、香港、インドネシア、オーストラリアという声が客席から上がる。彼女の存在は本当に海の向こうに届いてるんだな……と実感した後は、「ちょっと早いクリスマスプレゼント」だという「We Wish You A Merry Christmas」のカバー(Apple Music限定で配信リリース)を披露。そしてアジア各国でバイラルヒットを記録した「グッバイバイ」では〈Be by your side/会いたいわ/あなたに/それだけが言えなかった〉というシンガロングが生まれた。

冨岡 愛 ライブ写真

 ここからライブは後半へ。ソファに座り、アコギの弾き語りで披露されたのは「Star空」。4歳から15歳までオーストラリアで暮らし、高校入学のタイミングで大阪に移住した彼女。そのときの寂しさ、オーストラリアの親友に会いたいという想いを綴ったというバラードナンバーだ。素朴なアコギの響き、リアルな感情を乗せた歌はまさにシンガーソングライターとしての原点と言っていいだろう。

 バンドメンバーが再びステージに上がり、「冨岡 愛の最大限の“I love you”を綴っている曲だと思います」という言葉から「831」、さらに軽やかなギターポップ調のサウンドと拗らせた愛情を描いた歌詞のコントラストが楽しい「Psycho」へ。振り幅が大きなセットリストに、身体と感情を気持ちよく揺さぶられる。

冨岡 愛 ライブ写真

 ここで彼女は、このツアーに対する想いをゆっくりと語り始めた。

「今回のツアータイトルは、今日リリースの1stアルバム『愛’sCREAM』と同じタイトルです。23年の間に感じてきた愛に対しての価値観、考え方を届けられたらなと思って作り上げた作品です。そこで生まれた矛盾、愛って何だろう? という疑問は、私の音楽の永遠のテーマになるんじゃないかなと思います。これから大人になっていくにつれて、愛に対する価値観が変わっていくのか、逆に変わらないものがあるのか。それを探っていくのもすごく楽しみだし、今この現状で自分がどのように感じているのかを1つの作品として残せて、それをリリース日にみんなと共有できて。本当に嬉しく思います」

 そんな言葉とともに届けられたのは、タイトルトラック「愛’sCREAM」。大丈夫って思える日まで生きていこう。そんな真摯な想いを込めたこの曲は間違いなく、観客一人ひとりの胸にしっかりと刻まれたはず。愛と向き合い、愛について考えることが、冨岡とオーディエンスのつながりを生み出しているのかもしれない。

冨岡 愛 ライブ写真

 最後はヒットチューン「恋する惑星「アナタ」」。映画『恋する惑星』の広告を見てインスピレーションを受けたという同曲では、洋楽とJ-POPが絶妙に絡み合うサウンドが広がり、ラブリーで切ないリリックも相まってナチュラルな一体感が生み出された。

 1stフルアルバム『愛’sCREAM』を中心にしたアジアツアーによって、シンガーソングライターとしてのポテンシャルをはっきりと示した冨岡。来年5月から6月にかけて福岡、大阪、名古屋、東京をまわる『TOMIOKA AI LIVE TOUR 2026』の開催も決定。新宿の路上ライブから始まった冨岡 愛のストーリーはまだ始まったばかりだ。

冨岡 愛はハイブリッドな感性で“リアル”を叫ぶ 進化の先で辿り着いた1stアルバム『愛'sCREAM』レビュー

新世代のシンガーソングライター 冨岡 愛が1stアルバム『愛'sCREAM』をリリース。同作に至るまでの活動の軌跡をたどりながら…

路上弾き語りシーンから現れた注目の次世代シンガー 透明感あふれるボーカルが話題の冨岡愛とは何者か?

コロナ禍に音楽業界は多くのものを失った。その中の一つに路上ライブがある。ひと昔前なら必ず誰かが歌っていた通りにも、2020〜21…

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる