路上弾き語りシーンから現れた注目の次世代シンガー 透明感あふれるボーカルが話題の冨岡愛とは何者か?
コロナ禍に音楽業界は多くのものを失った。その中の一つに路上ライブがある。ひと昔前なら必ず誰かが歌っていた通りにも、2020〜21年あたりは弾き語りするミュージシャンの姿をほとんど見かけなかった。
しかし路上ライブの文化は、そのままネット上へと移ったと考えられる。SNSは現代のストリートだ。作った曲を自由に発表したり披露できる。路上ライブと同じようなことが日夜ウェブ上では起き、シーンは形を変えて存在していたのだ。
実際TikTokでは弾き語り系の投稿が常に一定の人気を得ており、「#弾き語り」は同SNSの人気ジャンルの一つとなっている。シンプルに人の心を掴みさえすれば多くの注目を集められるという点では、ネットも路上も同じ条件だ。
例えば、昨年SNS発のアーティストとして大ブレイクを果たした優里が、ここまで支持されるようになったのは、不特定多数の相手にも届けられる正確なピッチ感覚と大きな声量を路上で鍛えてきたからこそと言えるかもしれない。まさに彼こそ現場がSNSへと切り替わった時代を象徴する存在だ。
一方で、今年3月下旬に首都圏のまん延防止等重点措置が明けた頃から、徐々に街には活気が戻りつつある。路上で弾き語りをする姿もちらほらと増えてきた印象だ。これまである種ネット上だけに限定されていたこのカルチャーが、ここ最近の状況の変化によってリアルの場へと拡大し、さらに盛り上がりを見せているのである。
きゃない、ふうりん。、舟津真翔といったアーティストがその代表と言えるだろう。きゃないに至っては、今年リリースした「バニラ」が各種チャート上でも絶好調。力強い歌声や耳に残るメロディセンスなど、確かな音楽性で人気を集め、今年のネクストブレイクアーティストとして期待されている。このように今、弾き語りのシーンから続々と新しいミュージシャンが現れているのだ。
さて、その中でも注目なのが冨岡愛である。
冨岡愛は2021年の夏からTikTok活動をスタートした女性シンガー。ギターの弾き語りによるオリジナル曲やカバー曲の動画をTikTokで毎日のように投稿し、短期間でフォロワーを急激に増やしている。今年6月からは路上ライブもスタートさせており、ネット上でもリアルの場でも今後要注目のアーティストの一人だ。
歌っている曲は平井大やRADWIMPSのような近年のJ-POPを中心に、斉藤和義やスピッツといった弾き語りの定番もあれば、The Beatles「Let It Be」やCarpenters「Yesterday Once More」といった日本でも馴染み深い洋楽の名曲まで幅広い。