岡田奈々「歌詞もメロディも奇跡」――劣等感を超えて実感した音楽の力、成長が刻まれた『Unformel』に迫る

岡田奈々『Unformel』インタビュー

2年前の自分へのアンサーソング「この枯れない花」

――では、そんな「睡蓮プラグマティズム」の次に作った曲についても。

岡田:次は、「Undead Anniv.」です。1stアルバムで「TAKOYAKI ROCK」を作ってくださったサクマリョウさんが提供してくださいました。“社会の不条理に立ち向かっていく俺たち”をテーマにしていて、みんなで立ち向かっていこうという強いメッセージを込めています。

――1stアルバムに込めていたメッセージと違い、今回は“みんな”で戦うのですね。

岡田:そうです! 

――そこにはどんな心境の変化が?

岡田:1stアルバムを出したソロデビュー当時って、孤独感が強くて。「ひとりで頑張るしかないんだ」とずっと思っていたんです。だけど、3年目にもなると「いや、私には支えてくれるスタッフさんもファンの方もいっぱいいる! だからみんなで進むんだ!」とはっきりと気持ちに変化があったんですよ。なので、こういう形に収まりました。

――だからでしょうか、今回の歌詞は心が削られない感じがしますね。

岡田:そうなんです! 

――ちなみに、この曲の歌詞について、ディレクターさんとはどんなやり取りがありましたか?

岡田:歌詞を見たときに「ゾンビみたいというか、バイオハザードの世界と重なりますね」と言われたんです。社会の不条理とか、全部ゾンビに見えるって。なので、そのゾンビをみんなで倒していこうという見え方になるように、歌詞をブラッシュアップしていきました。サビの〈君と撃ち抜く21世紀〉も、最初は〈君と生き抜く21世紀〉にしていたんですけど、ゾンビの世界観を出すために〈撃ち抜く〉に変えました。

――その次に作った楽曲は?

岡田:「この枯れない花」です。1stアルバムに収録されている「望まれない朝」のアンサーソングですね。もがき苦しみながら「望まれない朝」を書いていた2年前の自分へ、お手紙を書くようなイメージで作詞しました。

――結果、すごく温かい曲になりましたね。「望まれない朝」自体も完全に希望を失った曲ではないけれど、やっぱり苦しさが強いですから「この枯れない花」の包み込むような優しさが沁みます。

岡田:いやぁ、そうなんですよ! レコーディングも、この曲ではあえてコーラスやハモリを入れず、そのままの自分の声を録りました。実は、歌詞もディレクターさんからのフィードバックがなかったので、純度100%の岡田奈々が詰まっています。

――そうなんですね。ディレクターさんも、あえて戻さなかったのでしょうか。

岡田:そうだと思います。一応提出はしましたけど、何も修正が入らなかったので。あと、そんなに大事な情報ではないかもしれないですけど、「望まれない朝」と「この枯れない花」は、母音が同じなんです。アンサーソング感を出すためにちょっと意識してタイトルを付けました。

――また、この曲を書くにあたって改めて「望まれない朝」とも向き合ったと思いますが、2年前のご自身の歌詞はいかがでしたか?

岡田:いやあ、「そんなに悩まなくてもよくない?」って思いました。生きるとか死ぬとか、考える必要ないじゃないですか。当時はまだ26歳だったし。その年齡で、「今日を生き抜けるかな」「死んじゃうかな?」みたいに思っているのが心配になりました。

――すごいですね、たった2年でこんなに変われるとは。サビの〈君と生きたい今日が 君を望む人が/世界には溢れているんだ 君が好きだよ〉も刺さりました。こういう言葉をかけてもらいたい人、たくさんいるだろうなと。

岡田:そうですね。いろんな苦しみを抱えている人に寄り添えるのがこの曲だと思います。それに、アンサーソングができたことで2年前の気持ちも救ってもらえた気がします。これで完結ですね! で、この次に作ったのが、「夏の追憶」です。

――「インコンプリート」に続き、2つ目の夏曲ですね。

岡田:「インコンプリート」はひまわりが咲くようなカンカン照りの夏だとしたら、「夏の追憶」は星空が見えるような夏の夜や、朝焼け、夕焼けのような、ノスタルジックな情景をイメージしました。子供の頃、夏はどんなふうに過ごしていたかなと思い浮かべたりして。

――では、歌詞に描かれた情景は、実体験に基づいていると。

岡田:そうですね。あとは、夏の花火大会を自分の人生に喩えて書いたりしています。儚いものは一瞬で終わってしまうけれど、その一瞬がすごくキラキラしていて眩しいじゃないですか。そして、しばらく経ってからあの眩しかった頃のことを思い出して「すごく良かったな」と思い返す感じ。それって自分自身にも感じることなので、反映してみました。

――あと、〈あの夏に焦がれた〉という一節が印象に残りました。ここの音に歌詞をはめるんだという意外性もあって。

岡田:実は、AメロとBメロの歌詞が書けなかった時に、このワードだけ浮かんできて。いったんはめ込んでみて、「ここにめがけて歌詞を繋いでいこう」という指針みたいな立ち位置にしていたんです。そうして書き上げたので、たしかにここの歌詞は存在感があるのかもしれないですね。

岡田奈々(撮影=加古伸弥)

迷いを超えて辿り着いた“軽やかさ”

――そして、ラストとなる10曲目は「僕らだけの音で」ですね。完成したのはいつ頃なのですか?

岡田:9月に完成したので、本当に最近ですね。(※取材は10月中旬に実施)

――ついこの前じゃないですか!

岡田:ギリギリでした(笑)。歌詞も、レコーディングの2日前に完成したんですよ。楽曲の方向性は“みんなで歌えるようなライブ映えする曲”で、メロディはまさにそういう雰囲気になっていたんですけど、歌詞がなかなか……。ここでクラップがほしいなとか、ここでラララって歌ってほしいなとか、入れたいことはあるんですけど。

――そこまで固まっていても、悩んでしまったと。

岡田:そう、みんなで歌おう系を私が書くと、薄っぺらく感じるんですよね。今までの私の歌詞は、いろんな葛藤を詰め込んで、自分の感情を抉って抉って書き出していたけど、この曲はあまりえぐらなくてもいいから、「本当にこれでいいの?」「全然重くないけど?」と不安で。

――ちょっとくらい抉ろうかな? という気になってしまうというか。

岡田:はい、そのくらい薄く感じてしまいました。だけど、最後まで書き上げてみたら成立していたし、薄さがこの曲にはハマるからこれがいいんだという考えに至りました。〈また今日も駄目だった〉というなんてことないフレーズから始まるところも、正直言うと「もっと意味を込めたほうがいいのかな?」と不安になりますけど、皆さんの感想が楽しみです。ライブでやったら、どんな空気になるのかも楽しみですね。

――こうして全曲見てみると、季節感やライブ感など、これまでになかった方向性の楽曲がふんだんに入っていて、さらにレベルを上げた1枚になっていますね。花の名前が全曲の歌詞に入っているという統一感もあって、遊び心も感じますし。その辺りも、ディレクターさんと話し合いながら?

岡田:はい。花の名前に関しては、もともと歌詞に入れるのが好きだったので「だったら全部に入れちゃおう」という話になって決まりました。

――だから、ジャケ写には花があしらわれているのですね。

岡田:そうです、“音の花束”ですね。これだけ花でいっぱいになったアルバムなので、花に囲まれて撮りたいですとお願いして、花が映えるように白のお洋服を着させてもらいました。髪色も、花に合わせるとしたら明るい色よりは暗いほうがいいなと思って黒髪にしています。

――アー写に関して言えば、1stアルバムの頃は黒、2ndアルバムはパステルブルーがベースになっていたので、今回のシンプルな白ドレスは逆にインパクトがありました。どんどんピュアな色になっているような。

岡田:そうなんですよ。だんだん悪いものが抜けてきたのかもしれないですね(笑)。

岡田奈々(撮影=加古伸弥)

※1:https://realsound.jp/2024/11/post-1853388.html

■リリース情報
岡田奈々 3rd Album『Unformel』
2025年11月12日(水)発売

・CD+フォトブック盤
品番:AVCD-63804
価格:¥5,700(税込)
フォトブック付き(A5サイズ・48P)
封入特典:トレカ6種+シークレット1種 合計7種より1種ランダム封入【Type-A】

<収録内容>
CD
01.インコンプリート
02.夏の追憶
03.爆裂ロンリーガール
04.睡蓮プラグマティズム
05.Undead Anniv.
06.ゼロセンチ
07.恋煩い
08.この枯れない花
09.僕らだけの音で
10.あなただけを求めてる

・CD+Blu-ray盤
品番:AVCD-63805/B
価格:¥5,700(税込)
封入特典:トレカ6種+シークレット1種 合計7種より1種ランダム封入【Type-B】

<収録内容>
CD
01.インコンプリート
02.夏の追憶
03.爆裂ロンリーガール
04.睡蓮プラグマティズム
05.Undead Anniv.
06.ゼロセンチ
07.恋煩い
08.この枯れない花
09.僕らだけの音で
10.あなただけを求めてる

Blu-ray
01.あなただけを求めてる Music Video
02.あなただけを求めてる 楽曲制作ドキュメンタリー

・CD Only盤
品番:AVCD-63806
価格:¥3,500(税込)

<収録内容>
CD
01.インコンプリート
02.夏の追憶
03.爆裂ロンリーガール
04.睡蓮プラグマティズム
05.Undead Anniv.
06.ゼロセンチ
07.恋煩い
08.この枯れない花
09.僕らだけの音で
10.あなただけを求めてる

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