岡田奈々「歌詞もメロディも奇跡」――劣等感を超えて実感した音楽の力、成長が刻まれた『Unformel』に迫る

岡田奈々『Unformel』インタビュー

 2023年4月にAKB48を卒業し、同年11月にはフルアルバム『Asymmetry』でソロデビューを果たした岡田奈々。以降、アーティストとして活動し、アイドル時代から高く評価されていたその歌唱スキルを存分に見せつけている彼女が、2025年11月12日に3rdアルバム『Unformel』をリリースした。

 そこで、本稿では「今年1月から始まっていた」という楽曲制作を振り返りながら、2年前とは大きく変わった岡田本人の心境や“作詞家・岡田奈々”の成長ぶりに触れてみた。(松本まゆげ)

アジアツアー、『フクフェス』、村山彩希 卒業コンサートを振り返る

――2ndアルバム『Contrust』(2024年11月)をリリースしてから現在までの1年は、どんな1年でしたか?

岡田奈々(以下、岡田):すごく平和でした! 大好きな歌の活動をたくさんやらせてもらった上に、ファンの方とコミュニケーションを取ることができるイベントもたくさんあったので、自分のやりたいことがギュッと詰まった1年でしたね。

――『Asymmetry』(2023年11月リリース)から『Contrust』までの1年間は、休養期間もあって心身ともに大変だったと、昨年のインタビュー(※1)で語っていただきましたが、今回は順調だったようでよかったです。『Contrust』に関しては、ファンの皆さんからどんな声がありましたか?

岡田:「徐々に明るくなってきたね!」って言われました(笑)。

――(笑)。『Asymmetry』は暗めでしたからね。

岡田:そうそう、『Asymmetry』の頃はすっごくダークに落ちていたので。『Contrust』にもダークサイドな部分は残っていましたけど、明るい部分もちゃんとあったし、比率で言えば半々くらいにはなっていたので、そこから「だいぶ成長したね!」と声をかけてもらえますね。今年はファンミーティングツアーを2回やっていて、それぞれ3日間、計6回もファンの皆さんと会えたんですよ。たくさん交流できて、その度に元気をもらえています。

――また、3月には対バンライブ『フクフェス番外編~渋谷サーキットフェスへの道~第7回』に出演されました。STU48の1期生・福田朱里さんが主催しているライブイベントですね。

岡田:そうなんです。2年連続で出させてもらっているんですけど、歌でコラボできるのが嬉しいですね。STU48に在籍していたときの衣装を着ることも特別に許可をもらっているので、このフェスでしかできないことを楽しませてもらいました。呼んでもらえて感謝です!

――以前、STU48のライブ取材をした時にも思ったのですが、福田さんは相当切れ者ですよね。

岡田:ふくちゃん(福田)は、本当にすごいです! メンバーという枠から飛び出して、プロデューサーとしても活動しているので。もともとAKB48をはじめとするさまざまなアイドルが大好きだったので、素質は十分に備わっていたんでしょうね。なので私は、グループ在籍時にふくちゃんを副キャプテンに任命してみたんですけど、そこからぐんぐん手を広げていって今ではフェスまでやっているので。すっごく頼もしいです。

岡田奈々(撮影=加古伸弥)

――さらに、ソロになってはじめてとなるアジアツアーも行ないました。

岡田:横浜と上海の2カ所ではあったんですが、上海は5年ぶりで、ソロとしては初だったので言葉の壁を強く感じました。海外でのソロライブの感覚がまだ掴めていないので、不安と緊張でいっぱいの中で公演を終えたのを覚えています。

――また、5月には岡田さんの“相方”でもある村山彩希さんの卒業コンサートもありましたね。岡田さんのYouTubeには当日の楽屋での村山さんの様子が公開されていましたが、今改めて思うことは?

岡田:「お疲れさま」の一言ですね。よく頑張ったなぁ……って。ゆうちゃん(村山)は同い年で1期上の先輩なんですけど、私よりも遥かに芸能人生が長いんです。それでいて、こちらが心配になるくらいにいつも一生懸命自分の活動と向き合っていたので、卒コン当日は体調が心配だったんです。

――実際、当日の村山さんはいかがでしたか?

岡田:元気そうでした! 当日に向けてしっかり立て直していて、さすがでした。かっこいい先輩です。個人的には、スピーチでちゃんとしゃべれるのか心配していたんですけど、実際はしっかりしたもので。私が卒業してからの約2年のあいだに、私の知らないゆうちゃんが形成されていたんだなっていうのが寂しくもあり、嬉しくもあり……。ちょっと母親のような目で見てしまいましたね。

制作順に辿る、3rdアルバム『Unformel』

――充実した日々を送っていたようですが、その間にも今回のアルバムの制作は進めていたと。

岡田:はい。今年の1月には制作が始まっていました。

――前作『Contrust』リリースから、あまり日が空いていないじゃないですか。

岡田:そうなんですよ! それから、9カ月かけてようやく最近出来上がりました(笑)。

――前作、前々作ともに、制作順に楽曲のお話を聞いているのですが、今回最初に作った曲は何でしたか?

岡田:「ゼロセンチ」です。1stアルバム『Asymmetry』の時から候補に上がっていた楽曲なんですけど、『Asymmetry』のロックなテイストには合わないんじゃないかという話になって、当時は泣く泣く外してしまったんです。それを「2年越しに収録しよう!」ということで。

――今作も岡田さんが全曲作詞していますが、この曲の歌詞はどのように書いていきましたか?

岡田:ピュアなラブソングを書きたいと思って一旦書き上げていたんですけど、音楽ディレクターさんから「この曲の歌詞は、ウェディングをテーマに書き直したほうがいいかもしれない」という提案をいただいて、ウェディング要素を取り入れた歌詞に仕上げました。具体的に言うと、「晴れ女と雨男をただ登場させるだけじゃなく、最後は虹を作ってほしい」というオーダーでしたね。

――ディレクターさんのオーダーを受けて書き直すという作業は、これまでしていましたっけ?

岡田:していませんでした。今回から、ディレクターさんの推敲が始まったんですよ。私が書いたものを提出して、「こことここを直してください」とフィードバックをもらうというやり方を全曲にわたってやっています。

――あえて今作からこのやり方を?

岡田:いや、自然と始まりました。ディレクターさんは熱血な方なので、その熱量に押されてせっかくなら全曲見てもらおうと思って。

――レベルが上がった感じがしますね。

岡田:そうなんです! 私が書く歌詞は心理描写がほとんどだったんですけど、「今回からはもっと情景描写を増やしていこう」というアドバイスをいただいたので、そこを意識しながら書きました。

――「ゼロセンチ」も、雨が降っている情景が浮かぶ歌詞になっていますものね。梅雨の時期なのかな? と感じるくらい。

岡田:〈紫陽花〉というワードもいれたので、余計に梅雨っぽさがでていると思います。

――ジューンブライドを意識しているからですかね?

岡田:それもあるんですけど、私、雨が苦手で。雨のことをポジティブに捉えられるような曲を作りたくて書いたっていうのが、理由としては大きいですね。

岡田奈々(撮影=加古伸弥)

――では、その次に作ったのは?

岡田:「インコンプリート」です。梅雨の「ゼロセンチ」のあとは暑い夏になるので、夏応援ソングというテーマで書きました。2ndアルバム『Contrust』の時から書き始めていた曲で、最初は恋愛をテーマにしていたんですけど、この曲もディレクターさんから「せっかくなら、夏ソングにしよう」と提案していただき、今の形になっています。季節感のある曲が増えたほうが、岡田奈々の持ち曲の幅が広がるんじゃないかということで。

――夏ソングに書き直すにあたって、難しかったところはありますか?

岡田:最初は「甲子園のような10代の熱血夏ソングにしよう」という話だったんですけど、全然書けなくて……なんとか書いてみても、しっくりこなかったんですよ。学生の初恋といった恋愛要素を加えてみたりもしたんですけど、そうすると疾走感がでなくて「なんか違うな」となって、悩みましたね。今回のアルバムの中で、一番書き直した楽曲です。でも、最後の最後にちょっとネガティブを入れることで、岡田奈々が歌う楽曲として成立するという“答え”に気づいて。なんとか書き上げることができました。

――ネガティブというと、〈夢も希望も思い浮かばない〉から始まる一節が印象的です。だから不完全=インコンプリートなのですね。

岡田:そうです。10代って、大人になりきれていない不完全な存在だと思うんです。それを思ってなんとか書き上げた力作ですね。

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