東京ハードコアシーンの突然変異・moreru 夢咲みちる、厨二を極めた先で鳴らす美しき爆音のすべてを語る

moreru・夢咲みちる、ソロインタビュー

長渕剛を聴いて「俺も俺も!」とはなんないけど、森高千里を聴くと「俺も俺も!」って

moreru・夢咲みちる(撮影=加古伸弥)

――そういう気持ち悪さが曲になっていく。思考とは別に、メロディへの興味ってもともとありました?

みちる:歌謡曲、好きです。そもそも歌は大好きで。

――好きだった歌手は?

みちる:いっぱいいますよ。三上寛とか、あとは花の82年組、松田聖子とか。70年代後半から80年代真ん中までの歌謡曲も好きだし。大森靖子もめっちゃ好き。

――ああ、松田聖子と大森靖子が出てきたの、納得します。歌ってる時のみちるさん、乙女が出てますよね。

みちる:自分の心のなかの女の子、すごく大事にしてるから。だから大森靖子に共感したりする。「ああ、ほんっと気持ちわかるわ!」ってなる。

――彼女が〈絶対女の子がいいな〉(「絶対彼女」)って歌うの見て――。

みちる:「俺も俺も!」ってなる。長渕剛を聴いて「俺も俺も!」とはなんないけど、森高千里とかを聴くと「俺も俺も!」ってなっちゃう。

――マッチョイズム、男らしさがイヤなんでしょうか。

みちる:ある種のホモソーシャルな快楽、自分が格闘技もやってたし、本能的にそういう欲望がないとは言えないけど。基本的にそれは芸術とは関係がないから。でも、マッチョ系の思考の人は好きじゃない。そういう人が作る音楽とは違うものになってると思う。実際に気弱な奴らがやってるバンドだし。

――ハードコアシーンでのmoreruの新しさってそこだと思います。あとは「乙女座最終日」がすごく泣けるように、みちるさんのなかの乙女はめちゃくちゃロマンチストでもある。

みちる:もうアレっすよ、山とか川、星を見て泣けるタイプですよ。キラキラしたもの、むっちゃロマンチックだと思いますよ、わたしは。

――歌詞もそうです。ギョッとするような殺意に溢れたものが出てくるんだけど、それなのにロマンチックだと思えて。

みちる:うん。もう本当に「なんでお月さまに触れないの?」って歌ってるような感じですよ。

――(笑)〈死ね〉って歌いながらも、実は。

みちる:「お月様に触れない、じゃあ殺してやる!」みたいな。

――そういう言葉をガーッと書き殴ったあと、すっきりします?

みちる:しないっす。「あ、言っちゃった」「またやっちゃった」って思う。今はこれだけ書いたあとだから、ちょっと産後鬱みたいな。

――12曲も産んだから(笑)。でも、当たり障りのいい言葉は書きたくない?

みちる:書けないんです。自分にとってはこの歌詞も相当当たり障りないですよ。もっとヤバいことを言いたいって、常に思ってる。

人類は無理。無理なのに「無理じゃない!」とか言ってるから、嫌いです

moreru・夢咲みちる(撮影=加古伸弥)

――救済ではないって最初に言いましたけど、「絶滅によろしく」には〈吐き気がするほど輝いて/あなただけは!〉っていう強烈なメッセージがありますよね。

みちる:この「絶滅によろしく」は、人類という種から、次の何かしらの種に対するバトンパスみたいなイメージで作ったので。だから〈あなた〉っていうのは他者ではなくて、なんか次に出てくる種類。人間が終わったあとの。そこだけはどうか平和で、愚かな人間の世界とは違う、美しく素晴らしいものになりますように、って。それで出てきた言葉ですね。

――それも、ある意味でロマンチックな発想。変な質問ですけど、人間そのものが嫌いですか。

みちる:嫌いとか好きっていうより……人間は、無理なんじゃないかって。

――無理。どういう意味で?

みちる:人間の手によって理想的な世界を作ることは不可能。意識とか言語とかが備わってるせいで、無理でしょって思う。ギガンテウスオオツノジカってシカがいて、そのシカは角が大きければ大きいほど繁殖しやすいから、進化の過程で角をどんどんデカくしていくわけですよ。で、その角の重さが動けなくなって絶滅しちゃうんです。人類にとって言語とか意識って、そのシカの角の相当するものだという世界観で俺は生きてるから。だから人類は無理。無理なのに「無理じゃない!」とか言ってるから、嫌いです。

――だけど、moreruのライブってすごく綺麗で、お客さんたちも本気で対峙してる。今生きてるなっていう感じがして。

みちる:嬉しいです。

――これ、しょぼい言い方に変換すると「いい一日だった、明日も頑張ろう」ってことになるんですけど。褒め言葉になりますか?

みちる:うーん……自分のやりたいことは「明日も頑張ろう」とか「平日をやりすごすための土日ライブ」とは違っていて。もっと日常を侵食するような経験、平日を破壊するための土日であってほしいから。

――今後、人は爆発的に増えていくんじゃないですかね。巻き込まれるパワーが全然違うアルバムだし、もう何回でも聴ける。

みちる:あ、それはめっちゃ嬉しい。何回でも聴けるって、あんまりそういうアルバム作ったことないから。

――で、聴いてるところを家族に見られるとギョッとする(笑)。聴いてることがバレちゃいけない音楽というか。

みちる:あ、それは褒め言葉。あんまり共有するもんでもないと思うし。

――他者と安易に共有できない人たちが、もっともっと集まってくるのはウェルカムですか。

みちる:はい。もちろん。

――どんな光景が将来的には見たいんでしょうか。

みちる:武道館で、こう、ステージが迫り上がってきて……ボーン!みたいな特効の演出ってあるじゃないですか。あれで、地球が、終わる。

――ライブは始まらない!

みちる:始まらない。それってめっちゃロック。そういう光景が見たいです。

■リリース情報
4th ALBUM『ぼぼくくととききみみだだけけののせせかかいい』
発売中

配信URL:https://ultravybe.lnk.to/YYouMMe

■ツアー情報
『moreru presents「霊霊障障新新感感染染」』
10月31日(金)宮城・SENDAI BIRDLAND
出演者:moreru/braqkotone/童子 and the Exorcists

11月1日(土)青森・KEEP THE BEAT
出演者:moreru/Is Survived By/ATHLETIX

11月14日(金)神奈川・横浜B.B.STREET
出演者:moreru/ANALSKULLFUCK/House Of The Blood Choir/5000

11月22日(土)東京・WWW/WWWβ
出演者:Johnnascus/moreru/小腸分裂/ANALSKULLFUCK/KRUELTY/Super Structure/DC/NEGATIVE SUN vs Wolf Creek/VMO/CNG Squad/Slumza/042ghxst/YUNGSTAお仲間/SMAP/Taro Aiko(M.A.S.F)/拒絶666/Efeewma/Weed b2b NIKEGUCCI420/MayhemSquad/Kanon/DIV⭐︎/春麗/Rosa/Akane/豚化粧/谷利沙紀/コスプレシンガーホーリー/and more
※小腸分裂との共催企画「evilspa」として開催。

11月28日(金)愛知・HUCK FINN
出演者:moreru/Climb The Mind/天国注射

11月30日(日)京都・METRO
出演者:moreru/odd eyes/Kiima Kariis

12月1日(月)大阪・難波ベアーズ
出演者:moreru/KK manga/TIVE

12月5日(金)広島・ALMIGHTY
出演者:moreru/Sugar/おそロシア革命

12月6日(土)熊本・Django
出演者:moreru/safmusic/浅井杜人

12月7日(日)福岡・UTERO
出演者:moreru/HAERERE/herside/ROFLEN

12月25日(木)東京・clubasia
出演者:moreru(ワンマン)

moreru オフィシャルサイト:https://moreru.info/
X(旧Twitter):https://x.com/moreru__
Instagram:https://www.instagram.com/moreru_official/

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