東京ハードコアシーンの突然変異・moreru 夢咲みちる、厨二を極めた先で鳴らす美しき爆音のすべてを語る

moreru・夢咲みちる、ソロインタビュー

「どうせ死ぬ」っていうより、「どうせ生きる」みたいな感覚なのかな

――同世代だとDTMでボカロとかに行く人もいたはずで。

みちる:もちろんそういう選択肢もあるんですけど、僕は最初からバンドがあった。生身でそこに立ってて、そいつが何か言ってること自体がかっこいい。だから、ずっとバンドでやりたいと思う。

――そこからメンバーとはネットで出会っていく。最初から息は合いました?

みちる:いや、いまだに息は合ってない。そういうことがバンドのよさ、他者と関わるよさだから。奇跡的なバランスで何も一致してないですからね。自分と同じ奴ばっかり集めて、自分の指示通り、完全にコントロールできる状況だったら、結局自分以上のものにはならないつまらなさが発生していたはずなので。そういう意味では、6人が同じ方向を向いてないところがよかったのかな。

――全員が厨二病をこじらせて、世界の破滅を願っているわけではない?

みちる:そうです。だとしたら、危ないですよ。

――ふふふ。歌詞については何か言われたりします?

みちる:言われないです。曲だったら「あれに似てるね」とかは言われるけど、歌詞へのツッコミとか、そういうのは一回もないです。

moreru・夢咲みちる(撮影=加古伸弥)

――今回は「中卒無双」や「討死!」を筆頭に、ものすごくポップな曲が増えたじゃないですか。これは明らかに意識的ですよね。

みちる:うん。めっちゃロック、パンクロックみたいな作品を一回やってみたいなと思ってた。グラインドコア的な表現は前のアルバムの『山田花子』でやってるので、同じことは繰り返せないですよね。そういう意味でポップ――ポップって言い方が適切かどうかわからないけど――キャッチーなものが持つ暴力性というか。「討死!」ができた時は、自分でもビビりました。

――ギターロックみたいな曲ですよね。この曲に限らず、カオスだった空間にいきなりパッと青空が見えた、みたいな瞬間がいっぱいあります。

みちる:ああ、ジャケも白いしね。なんか、ひとつのことをガーッと極めると反転する、みたいなイメージです。

――ブラストビートを極めると、もうビートじゃなくてドローンになるとか。

みちる:そうそう、そういうことです。突き詰めていったらめっちゃシンプルになった。まあ、厨二病なので、iPhoneも当然ダークモードで、暗い設定にするじゃないですか。

――「するじゃないですか」と言われても(笑)。

みちる:歌詞書く時も、メモには黒い画面に白い文字を打ち込むわけですよ。白い紙に黒い文字を書くんじゃなくて。で、そういうことを続けていくとこの真っ白なジャケットになる。

――ああ、実はびっちり文字が書き込まれている。

みちる:そうです。だから、このジャケは白紙ってわけじゃなくて、めっちゃ書かれてるってことなんです。

――その果てに出てきたのが、たとえば〈ロックスター〉っていう言葉。人生は〈どこにもいけない〉と歌う人が、ロックスターにはなれる、って言っちゃうの、最高だなと。

みちる:なんかロックスターが言わなそうなことを言ってたらロックスターっぽいかな、って。ロックスターがなんでいいかって、人が言わないこと、やらないことをやってるからで。言葉の意味として、ロックスターがやりそうなことを真似してたら、それはもうロックスターじゃなくなるんですよ。人がやらないことをやるのがロックスター。だから、めっちゃ惨めな新しいロックスター像をわたしが引き受けますっていう。

moreru・夢咲みちる(撮影=加古伸弥)

――普通に聞きますけど、みちるさんの人生は惨めなんですか。

みちる:惨めでしょう、相当。まず派手なこととか一回もないし、いいこと何もないし、楽しくないし、うんざりしてて。しかも、いちばんタチ悪いのが、別にそれでもいいんじゃないかって思ってること。楽しく明るくとか、そういう未来に向かっていきたいとか思ってないので。今もバイトしてるし。あとYouTubeのショート動画2時間くらい観たりするし。全然ですよ。

――つまらない一般論ですけど、みんな「楽しく明るく生きようよ、そのほうがいいよ」って言うじゃないですか。

みちる:でも、デカい話になるけど、いつか死ぬわけで。楽しく明るく生きてたって、死ぬ。自分が子どもを作ったとてそれも死ぬし、子どもの子どもも全部死ぬ。地球だっていずれなくなるし、宇宙にも終焉があるわけで。それなのに今存在している謎とかを考えて、それを言葉にするほうが自分は楽しいです、って感じ。一般的な楽しさとは全然違った種類の快楽を信じてるから。

――それは快楽なんだ。

みちる:「どうせ死ぬ」っていうより、「どうせ生きる」みたいな感覚なのかな。産まれ落ちて自分が存在してること、この視界から自分の世界が広がってること、よく考えたらめっちゃ気味悪いし。そこに必然のようなものがないとけっこう気が済まなかったり。考えていくと、「許せない!」って思うんですね。意味を知らなきゃイヤだと思うし。だけど軽薄なスピリチュアルには乗れないし、陰謀論にも乗れない。だから、自分で考えるしかない。そこにしか興味がないってことかもしれない。

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