NIGHT RANGER、約40年ぶりに日本武道館に帰還 圧倒的な“現役感”を見せつけたフェアウェルツアー

オジー・オズボーン追悼のサプライズ楽曲を披露
日本で久しぶりに披露された「Interstate Love Affair」にて『7 Wishes』ブロックは小休止し、以降は「Sing Me Away」や「Touch Of Madness」といったライブの定番曲が連発される。各曲ともキャッチーなメロディラインと覚えやすいフレーズということもあり、サビでは必ず大合唱が発生。この「バンドとオーディエンスが一緒にライブを作っていく」感じも、長きにわたり彼らのライブを見続けてきた筆者にとって当たり前のものとなっており、これも今日で見納めかと思うと少々感傷的になってしまう。
しかし、バンドはそんな我々の気持ちを見透かしてか、終始陽気な空気でライブを進行。フロントの3人は演奏中にもかかわらずジャレつく場面が多々あり、とてもこれが最後の日本公演だとは思えない。そんななか、「Rumours In The Air」冒頭ではブラッドやケリが、ギターのボリュームの強弱を用いた“バイオリン奏法”でピリッとした空気を作り上げたり、オジー・オズボーンの逝去に触れ会場全員で黙祷する場面も。ブラッドは1982年頃、一時的にオジーのバンドでギターを弾いていた経験を持つことは、ハードロックファンのあいだでは周知の事実だが、この日はそんなオジーへのトリビュートとして「Crazy Train」をプレゼント。1コーラス+ギターソロという変則的な形ながらも、このサプライズは喜ばずにはいられない。

また、「Night Ranger」中盤のリズムセッションパートでは、ケリー以外のメンバーがドラムスティックを手にケリーのドラムセットで演奏に加わるほか、スペシャルゲストとして和楽器バンドの黒流(和太鼓)が登場。電子和太鼓「TAIKO-1」を抱え、NIGHT RANGERとの和洋折衷セッションが繰り広げられた。これも約40年ぶりの武道館公演、そして最後の日本公演という特別な場のために用意されたサプライズのひとつなのだろう。
大ヒット曲「When You Close Your Eyes」で、ライブもいよいよ佳境へ。オーディエンスのシンガロングも一段と大きくなっていくなか、クライマックスに相応しい代表曲「Don't Tell Me You Love Me」が繰り出されると、会場の熱気は最高潮に到達する。ダイナミックなリズムに乗せてパワフルなボーカルと美しいハーモニーが響き渡り、ブラッド&ケリの華やかなギターソロが聴き手に高揚感を与えていく――これぞNIGHT RANGERの醍醐味といった要素が詰まったこの曲で、ライブ本編は派手なフィナーレを迎えた。

観客の盛大なクラップで再びステージに引き戻されたメンバーは、ジャックの「このまま一晩中ライブしていたいよ!」の言葉に続いて名バラード「Sister Christian」にてアンコールを開始。観客はスマートフォンのライトを点灯させ、楽曲の持つドラマチックさを向上させていく。エンディングではドラムセットから離れたケリーが、マイク片手に歌い上げてこの曲を見事に締め括った。
再びジャックが「これが日本で最後のライブ、最後の夜だ」と伝えると、客席からブーイングが鳴り響く。そんなオーディエンスの反応にニヤリとするジャックだが、「世界中どこに行ったって、日本は俺たちの心のなかにあるから」と感謝の気持ちを伝えて、ジャパンツアーのタイトルにも用いられた「Goodbye」を披露――これはさすがに感傷的にならざるを得ない。そんなこちら側の空気を読み取ってか、バンドが最後の1曲に選んだのは極上のロックチューン「(You Can Still) Rock In America」。最後とはいえ、やはり彼らには湿っぽい空気は似合わない。激しく豪快な演奏と盛大なシンガロングが武道館中に鳴り響き、約2時間半におよぶNIGHT RANGER最後の日本公演は幕を下ろした。

ライブが終わると同時に、会場にはKISS「Rock And Roll All Nite」が爆音で流れ始め、オーディエンスはライブ本編と同じようにシンガロングを開始。この様子にメンバーも興奮を隠せず、〈I wanna rock and roll all night and party every day〉のフレーズを体現するかのようにこの曲を歌ったり踊ったりと、ステージから去ることを最後まで惜しんでいるようだった。
公演中、ジャックはこの日が77回目の日本公演であることを告げたが、初来日の1983年からの42年で(途中、解散や活動休止期間もあったが)16回の来日と77回の日本公演は、海外のハードロックバンドとしてはかなり多い。特に、1990年代後半に再結成して以降は大きなヒットには恵まれなかったものの、ここ日本ではホールクラスでの公演も少なくなかった。そう考えると、NIGHT RANGERと日本の関係は「熱心なファンに支えられ続けた、相思相愛の42年」だったと言えのではないだろうか。最後にお互いの深い愛情を確認する場所が、約40年ぶりの武道館だったという点も含めて、我々日本のファンにとってはもちろん、きっとバンドにとっても忘れられないフェアウェルツアーになったはずだ。
<セットリスト>
01. This Boy Needs To Rock
02. Seven Wishes
03. Faces
04. Four In The Morning
05. Sentimental Street
06. Interstate Love Affair
07. Sing Me Away
08. Touch Of Madness
09. The Secret Of My Success
10. Rumours In The Air
11. Call My Name
12. Eddie's Comin' Out Tonight
13. Crazy Train [Ozzy Osbourne cover]
14. Night Ranger
15. High Enough [Damn Yankees cover]
16. Reason To Be
17. High Road
18. Can't Find Me A Thrill
19. When You Close Your Eyes
20. Don't Tell Me You Love Me
アンコール
21. Sister Christian
22. Goodbye
23. (You Can Still) Rock In America


























